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最高の乗り物

あなたにはスキな乗り物があるだろうか。



世の中は乗り物で溢れている。

ここでいう乗り物とは人を乗せて運ぶモノとしよう。


乗り物は不思議と人を魅了する。

モノやヒトを運ぶだけの道具のはずなのに。


クルマなんて数十万円〜数億円という値段の振れ幅に驚く。
用途は同じなのにね。


実際に乗ってスキになるモノや 乗れないけれど憧れるモノもあると思う。

僕も実際は乗れないけれどスペースシャトルなんかには是非とも乗ってみたいものだ。

それにただ乗るのがスキというのと 操縦するのがスキに別れる。

乗り物とは奥が深い。

馬に始まり今や宇宙に乗り出した。
人間の底しれぬ欲望を具現化したのが乗り物なのかもしれない。


さて我が家の次男は少し変わった乗り物が大好きだ。

いや次男に関わらず幼い子どもは皆スキなのかもしれない。

その乗り物に 乗ったことがない という人は100%いないと断言できる。

日本で生活していて乗らずに過ごすことなど不可能なのだ。

国土の狭い日本ではその乗り物が普及することは必然。

長さや速度には差はあれどそのデザインには大きな差はない。

どこに移住してもその乗り物には乗れる。

そんなありふれたその乗り物を次男は嬉々として乗りたおす。

ひとりでは危険なので僕も付き合うことになる。

僕はその乗り物をただの装着とでしか認識していなかったので そこそこ苦痛である。

「次で最後だよ」

というセリフは定型文と化し なんの効力も発揮しない。

ならば僕もスキになろう。

そう考えるのが大人として父親として好ましい態度だろう。


しかし、しかしだ。


その乗り物は実に単調でありデザインもどれも同じで用途も同じ。

その質実剛健なところをスキになればいいのだろうか。

それとも一生とも言える時間を淡々と動き続けるその逞しい勇姿をスキになればいいのだろうか。

数多ある乗り物の中でも魅力を探すのに苦労する。

機能性と安全性に能力を全振りしているので魅力を見出すのは困難なのだ。


せめてもっと凝ったデザインにしてくれ。

音楽が流れるとかイルミネーションが煌めくとかギミックも欲しい。

ちょっと工夫が足りないんじゃないだろうか。


僕のように半ば強制的にくり返し乗る利用者もいるのだ。

わがままなのは承知している。

でもその乗り物を回避して次男と行動することは不可能なのだ。


エスカレーター


それがその乗り物の名前。

次男の心を掌握したあの自動階段め。

登っては降りのぼってはおり。

終わることのないエンドレスエスカレーター。

僕の方向感覚を狂わせる。


ダメだ愚痴ばかりが溢れ出る。

少しはいいところにも触れておこう。

なんども同じところを行ったり来たりするのは僕らだけ。

まわりの人は常に入れ替わる。

いろんな人とすれ違う。

そう人間観察が捗るのだ。



すまん。


しょうもないウソをついた。

僕はなんにも観察せずに心で「あと何回乗るんだろう」と念仏のように考えているだけ。

次男が楽しそうなのがせめてもの救いか。

避けては通れぬこの無限自動階段を有意義に使う方法はないものか。

こんな問いはエスカレーターに乗りながら考えるに限る。

なにか妙案を思いついたらまた記事にしよう。

次男よ はやく飽きてくれ。

僕は怖い。
こんなに普及して市民権を得たエスカレーターだが、衣類などが巻き込まれたが最後 トラバサミのように離さない。

人畜無害のような顔をして虎視眈々と獲物を狙う狩人。

それがエスカレーターの本性だと僕は睨んでいる。

だから次男と一緒に乗る際は油断できない。
無性に疲れるのだ。

安心のエレベーターでいこうよ。

ではまた。




次回予告(ウソ)

「ぜんけい エスカレーターでギネス記録樹立」

の巻。

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