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なぜ自分の手を汚すのか

あなたは悪の手下です。

悪の親分から正義の味方を拘束するように命令が下りました。

ここは出世のためにも実績を残したいところです。

お、ちょうど向こう正義から攻めてきたようですよ。

これは好都合ですね。
捕まえて親分にその首をもっていきましょう。

あ、親分からもうひとつ命令です。

生きて連れてくるようにとのことです。

これは難易度が上がりましたね。

では参りましょう。

正義の味方は3人。

どう拘束して親分の前に連れていくのかはお任せします。道具は何を使ってもOKです。
殺しさえしなければね。

さぁいきなさい。

この任務が効率よく処理できたなら次の幹部候補にあなたを推薦しておきましょう。

最後にもうひとつ。

悪の組織も不況のあおりをうけて人員不足なので あなたひとりでお願いします。では期待していますよ。


Mission START


さてさて あなたはどう拘束してターゲットを親分の前に連れていくだろうか。

想像してみよう。

生かしておかなくてはいけない。
生け捕りは殺生に比べて難しい。
相手が自分よりも強ければ尚更だ。

考えるべきは相手をどう行動不能にするかということ。

道具は何を使ってもいい。

でも自分で扱える道具なんてたかが知れている。

さぁ限られた能力と資源で3人もの強者をどう拘束する。


はい、考えてみたかな?


え?
悪の心がないからわからない?
またまたぁ。
いい子ちゃんぶるのはやめましょうよ。
悪の心は誰にでもあるもんだよ。

その悪の心を膨らませて考えてみよう。


さて悪の初心者であるあなたは どう3人を拘束しただろうか?

両手両足をロープで縛ったかな?

腕と胴体をまとめてぐるぐる巻きにしたかな?

椅子に座らせて椅子に縛り付けたかもしれないね。

でもそううまくはいかないよね。
相手も無抵抗というわけではないだろうし。
あばれる人間をロープで縛るのは難しい。


では悪の上級者である僕がどうすのかレクチャーしよう。

なーに簡単なことさ。

腰を狙う。


それだけ。

腕を拘束しても動ける。
足を拘束しても這って逃れる。

しかし 腰は痛めるとまったく動けない。

ぎっくり腰をイメージしてみるんだ。

あの情けないがどうすることもできない姿を。

腰は体の要と書く。
腰がないと人間は動けない。
だから腰を狙う。
これ以上 理にかなった方法はない。


ではどう腰を狙う?

正面からは攻めにくい。

相手も警戒いているだろう。

ここで「道具は何でも使ってもいい」という条件を思い出してほしい。

道具はなにも相手を傷付けるためだけに使うわけではない。

要は腰にダメージを与えればいいのだ。

相手の目的は親分の首。

ならば親分をエサにトラップをしかけるのだ。

道中にはギリギリ持てるぐらいの重量があり 両手で抱えないと持てない段ボールをバリケードをたくさん設置する。

ターゲットは否応なしにその段ボールをどけて進むしかない。

さらに道幅は狭くし、段ボールを遠くに運搬しないといけない状態にする。

そして扉は全部下から上へ開閉するモノにしておく。

屈んで持ち上げる動作が必要だ。

さぁこれで腰へのダメージが蓄積されてきているぞ。

あと一息だ。

ぎっくり腰というやつは何も重たいモノをもつとなるものとは限らない。

そこで今まで重たい段ボールを散々運ばせたところに不意に軽い段ボールを混ぜておく。

ギリギリ持てる重量を持ち上げようとしたら軽かったときの衝撃たるや筆舌に尽くしがたいものがあるだろう。


ほんとアレってびっくりするよね。
重いと思ってたら軽いんかい!って心の中でツッコむよね。


これで腰の疲労も重なりぎっくり腰になる可能性が高まる。

この工程をぎっくり腰になるまで繰り返す。

そしてぎっくり腰になったら僕は正面からゆっくりと近づきローブで縛るだけ。

簡単なお仕事だ。

これが一流の悪者である僕のやり方だ。

準備で全てが決まる。

自分の手を汚す必要はない。


あなたはどんな方法を思いついただろうか。

アキレス腱を切るとか物騒な想像をしたひとは映画の見すぎ。

実は自分は正義の味方のスパイで悪の親分を一緒に倒すと考えたひとはロマンチストすぎ。

正義を泳がせて親分を倒した隙をみて正義を倒し、悪の組織を乗っ取ると妄想したひとは怖すぎ。


まずは自分の手を汚さずに事を成すことを考えよう。


それが組織で長生きする秘訣だ。

それがどんな組織でもね。

フフフ。

では健闘を祈る。

ではまた。

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