乳児を連れて放浪の旅~妊娠中・産後も通院を続けてほしい理由
こんにちは、精神科医のはぐりんです。精神科医のリアルな日常とホンネをお届けしています。
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産後数か月の、とあるお母さん。生後間もない乳児をつれて自宅を飛び出し、帰ってこないのを心配した家族が警察に捜索願を出しました。
自宅から数十キロ離れた遠方で車が発見され、乳児を抱え近くを歩いていたところを無事保護され、そのまま当院に連れてこられました。
ここ数日ほとんど眠っておらず、「幻聴や耳鳴りがきつかった。静かなところへ行きたかった」と述べ、車で高速道路を走らせ見知らぬ土地へ。一歩間違えれば母子ともに無事では済まなかったかもしれません。
この患者さん、以前から統合失調症を患っており、妊娠以前は通院も服薬もしていたのですが、妊娠をキッカケに通院を中断してしまっていたのです。
妊娠中にしても産後にしても、お薬がお腹の赤ちゃんや母乳に影響してしまうのではないか、そう考えて受診や服薬を中断してしまうのも頷けます。
たしかに精神科の薬の中には、妊娠中や授乳中に使えない薬がいくつかありますし、他の薬も必ずしも100%問題がないとは言い切れません。統合失調症の薬と妊娠糖尿病との関連性も実際に指摘されてもいます。
ただ今回のケースのように、服用しないことによる病状の悪化と、それに伴う言動によるリスク、の方が明らかに大きい場合も実際にはかなり多いのです。
妊娠中・授乳中であっても、そもそも症状的に薬を飲む必要がある状態なのか、飲む必要がある場合には胎児や乳児になるべく影響が出ないように、いつどういった薬を飲む必要があるのか、それらの相談も含めて受診を続けてほしいのです。
例えば、眠れなくなった時にだけ薬を飲むようにするとか、器官形成期といって妊娠4-18週の臓器などが作られる期間だけ薬を飲まないようにするとか、臨機応変に対応することもできます。患者さんと相談しながら治療方針を決めていく、いわゆるインフォームドコンセントです。
また最近ではほとんどの精神科の薬が奇形や母乳に影響しないのではないか、といったデータや論文もたくさん出てきています。
特に統合失調症や躁うつ病の方は薬をやめると病状が悪くなる方が多い印象です。産後うつも同様に注意が必要な病気で、特に過去にうつ病にかかったことがある方は事前に産科の先生に相談してほしいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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