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【視聴記】バリバラ〜PTSDの「あふれ」


ご訪問ありがとうございます。

今回は先日Eテレで放送された、
バリバラという番組の視聴記です。

番組の内容が素晴らしく、PTSDの方のことをとてもよく表している内容でしたので、少しでも多くの方に伝わればと思いご紹介したいと思います。

バリバラとは

バリアフリーバラエティ、通称バリバラ、
心身に障がいを持つ当事者が出演する番組です。

番組自体に色々な意見があるようで、障がいを持つ方々が楽しそうに繰り広げる様子に違和感を感じる方もいるようですが、

障がい者の中には、やっとの思いでこうしてテレビに出られるようなった方も多いですし、

障がいを持つ当事者が生の声で情報を発信してくれる、自身の思いを話すことができる、

というのはとても貴重なことだと個人的には思います。

PTSDのご夫婦

先日放送されたバリバラ、

幼少期に心的外傷体験(PTSD、トラウマ)を負った方々が出演していました。

トラウマを持った方が、自分をいたわり大切にする表現の営み「あふれ」を紹介する内容でした。

PTSDの当事者から語られる言葉には、
当事者ではない私たちにとっても教訓や示唆に富む内容が多く、また当事者ならではの生々しい思いもあふれていました。

印象的だったのが、ゾンビメイクをしたご夫妻。

夫の大地さんは中学生の頃に母を自殺で亡くし、
妻の眼(まなこ)さんは性虐待の被害者です。

性被害にあっているときは何が起こっているのか分からなかったそう。人は本当の恐怖に直面した際、

抗わず「フリーズ」して動けなくなり、
危機が過ぎ去るのを待ちます(背筋が凍る、背側迷走神経反射)。

そうしてやり過ごした、眼さんは後々自分がどういう目に遭ったのか理解し、加害者を呪ったそう。

一方で自分が加害者を呪わなければ(我慢すれば)周囲に迷惑をかけることはない(うまく回る)、

それなのに周囲を呪ってしまう自分に対して、
「そう思っている自分が悪い」
「生まれてきたのが間違いだ」
と思うほどの罪悪感に襲われました。

自責感に苛まれた末、友人からかけられた言葉、「相手のことは許さなくていいけど、相手を呪っている自分は許してあげてね」

この言葉をキッカケに、眼さんはPTSD後の
「心のあふれ」を表現できるようになったのです。

呪いの人形に込められた「あふれ」

スタジオ出演していた眼さん、
一目ギョッとするゾンビメイクの出立ち。

ただそれ以上にインパクトがあったのが、
「連れてきた」という「呪いの人形」

実際に車に轢かれて亡くなってしまった猫ちゃんの死骸を、骨組みだけ残して女性の顔と長い髪を施し再生させた人形です。

ミワちゃんという名前も付いています。PTSDの方はこうした「イマジナリーフレンド」を持つことがあります。

不運にも亡くなってしまった猫たちを生まれ変わらせたい、そうすることで自分が生まれてきたことを許してもらえるような気持ちになる、と眼さんは仰います。

トラウマ体験とその後のフラッシュバックなどのPTSDに絶望し、必死に抗い、

何度も死のうと思った末に、自身の「心のあふれ」を死んだ猫を甦らせることで表現できるようになった眼さん。

性被害に遭うことは、心も身体も一度死んでしまう、心の殺人であると言えます。

まるで自分自身を猫になぞらえているかのような、一度死んでしまった心を甦らせても良いんだよ、

と自分自身に言い聞かせているかのような「呪いの人形」に思えました。

穴を埋めようとしない関係性

そんな眼さんの旦那さん。中学生の頃に母を自殺で亡くし、やはり心にポッカリ穴が空いた状態です。

眼さんご夫婦の関係性がまた印象的でした。
思い悩んだ末、心に空いた穴を、

「埋まらない穴なんだ」「埋めようとしなくていいんだ」と思い至り、夫婦お互いの穴を埋めようとしない関係性だと言います。

番組で実際に夫婦2人でいるところを見ていると、夫婦の間に微妙な距離感があって、その間には独特の空気感が流れているのを画面越しにも感じます。

それはまた、お互いに依存しないし干渉しない、
共依存とは真逆の関係性にも思えたのです。

自己表現/感情を表現することの大切さ

最後に、旦那さんの言葉を紹介したいと思います。

「自分を表現することを迷っている人に出会う。そうすると怒りだったり悲しみだったりの行き場がなくなり、心の中に溜まってしまう。

だから自分の「思い」の出し方を見つけられた人は幸福であると思う」

今回の記事は引用が多くなってしまいましたが、
心に傷を負った方への理解は未だに進んでおらず、

今回のバリバラでは当事者からのリアルなあふれを伺い知ることができる貴重な機会に思いました。

またPTSDの当事者ではない方にとっても、

迷う必要なく自分の感情を表現していい、お互いの穴を埋める必要のない共依存に陥らない関係性、

というのは、生きる上で一つヒントになるような気がします。

番組の終わりに眼さんが言った、
「なんかもうちょっと生きていてもいいかな」
という言葉が印象的でした。

最後までお読みいただきありがとうございました。

※今回ご紹介した「バリバラ」は、TVerにて9月5日まで無料配信中です。ぜひご覧ください。

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