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「認知症の薬」は飲む必要があるのか?

今回はフォロワーさまから頂いたリクエスト、
「認知症の薬」について書かせていただこうと思います。

認知症なのに「認知症の薬」は必要ない!?

昨今、「認知症」が原因で入院になる方が増えてきており、それにも伴い「認知症病棟」と呼ばれる、

認知症の患者さんに特化した病棟が、全国各地の病院で増えてきています。

私が勤めている病院にも「認知症病棟」があります。

さて、この認知症病棟に入院している患者さんのうち、「認知症の薬」を飲んでいる方の割合はどれくらいだと思いますか?

私個人も興味があり、今現在当院の認知症病棟に入院中の患者さんで、「認知症の薬」を飲んでいる方の人数を数えてみたのですが、

なんと41名中6名の方しか「認知症の薬」を飲んでいませんでした(はぐりんは認知症病棟の患者さんは担当していません)。

数える前からある程度少ないことは予想しておりましたが、予想以上に少ない数字に驚きました。

そもそも「認知症の薬」とは?

認知症病棟に入院しているにも関わらず「認知症の薬」を飲んでいない、これは一体どういうことなのでしょうか。

この現象を理解するためには、そもそも「認知症の薬」とはどういった薬なのかを知る必要があります。

「認知症の薬」はズバリ「認知機能の低下を遅らせる」効果があります(ドネペジル、ガランタミンなど)。

イメージとしては下図のようになります。進行を遅らせるだけで、認知症が治るわけではありません。

引用元 https://www.rakuwa.or.jp/otowareha/shinryoka/monowasure/

なぜ入院しているのか?

認知症病棟に入院している方たちは、なぜ入院しているのでしょうか。

それは、徘徊や暴言、物とられ妄想、物損や暴力などで手に負えない

あるいはその逆で、抑うつやアパシー(無気力・無関心)で食事をとらない、

いずれにしても自宅施設で手に負えなくなり、入院になった方たちです。

実は入院している方の多くが、物忘れそのものというよりも、こういった認知症の周辺症状(BPSD)と呼ばれる症状のために入院になっているのです。

認知症病棟で「認知症の薬」があまり使われない理由

周辺症状に対して、いわゆる物忘れや実行機能といった「認知機能」を認知症の中核症状と呼びます。

実は「認知症の薬」は、主にこの中核症状に対して服薬しています(認知機能低下を抑える)。

そして「認知症の薬」は、周辺症状(BPSD)に対しては効果がないどころか、むしろ服薬することで逆に暴力行為が激しくなってしまう方もいます。

周辺症状が問題で入院になっている認知症の方に、「認知症の薬」は必要性が低く、むしろ逆効果にもなり得るのです。

周辺症状に対して使われる薬

ただやはり、周辺症状(BPSD)を呈している方にも、それはそれで薬が必要な方が多いです。

クエチアピンやリスペリドンといった薬は、元々は統合失調症の薬で不穏興奮を鎮める効果で使われていましたが、

今では、うつ症状を改善したり、不眠食欲がわかないといった症状にまで効果があることが分かってきました。

つまり「認知症の薬」に代わり、BPSD全般にそういった薬が使われているのです。

おわりに

「認知症の薬」には、服用することで逆に怒りっぽくなってしまったり、あるいは吐気や不整脈といった副作用が出る方もいます。

一方でそういった心配がない方で、比較的認知症の初期段階の方には、長期的に見れば「認知症の薬」は認知機能の低下を遅らせる効果があると言えます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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