これから精神科の受診を考えている方へ
ご訪問ありがとうございます。
今回は、これから精神科の受診を考えている、迷っている方へお伝えしたいこと、を書いていきたいと思います。
些細なことで受診してもいい
精神科を受診されるキッカケは、人それぞれ様々です。元気がでない、眠れない、発達障害ではないか、認知症ではないか‥etc
中には、恋人に振られて苦しいから、という理由で来院される方もいます。
失恋って精神病なの?と思われるかもしれませんが、日常生活を送れないほどの悲嘆に暮れている方の場合は十分に治療的介入が必要な状態と言えます。
何が言いたいのかというと、「こんなことで受診してもいいのかな?」と思うようなことでも受診してもOK!ということです。
ほとんどの人が一生のうちで精神的な不調を経験する、とも言われていますが、そのうち精神科を受診する方は未だに少ないです。風邪をこじらせた際には多くの方がかかりつけ医を受診するにもかかわらず、。
ここで、ある興味深い研究結果をご紹介したいと思います。児童思春期のうつ病に対して、薬物療法、心理療法の治療の有効性をみたメタ解析を行った報告があります。
それによると、フルオキセチンという抗うつ薬の有効性が示されただけでなく、ある副次的な結果がでたのです。
それは、うつ症状を悪化させる要因として、待機リスト群が見出された点です。つまり、精神科を受診せずに自宅で過ごしていると、うつ症状が悪化するというものでした。
これは、たとえ薬を飲まないにしても、精神科を受診して話を聞いてもらう、本人を取り巻く状況であったり家族関係であったりを話してもらいこちらが何らかの介入をする、それだけで十分に治療的に意味がある関わりが出来ていることを示しています。
些細なことでもいいから精神科を受診してもいいという事、そのことで心が軽くなるという事(少なくとも何もせず自宅にいるよりは)、これらがまずお伝えしたいことでした。
自分自身のことを知るということ
もう1点、初めて精神科を受診される方にお伝えしたいことがあります。
それは、受診した際に、性格、発達、知能面でなんらかの診断がつく場合があるという事です。
例えば、休職・不登校を繰り返していて元気がでない、そういう方の背景に実は発達障害の問題が潜んでいたり、
交際相手とうまくいかずにリストカットを繰り返している→境界性パーソナリティ障害、
日常生活でできないことが多い、なぜが人より仕事が遅い→境界知能、軽度知的障害、
といった具合です(あくまで一例です。リストカット=境界性~とは限りません)。
なぜ初めて受診される方にそのことを知っておいてもらいたいのかというと、元々は今ある症状の改善だけを望んで来られた方が、背景にこういった問題があると知らされた際に、「こっちはそこまで聞いてないよ」と納得されず、中には憤慨される方もおられます。
もちろんこちらの伝え方もあるのかもしれませんし、患者さんにとって知らされない権利もあるでしょう。そういった診断を下す前には心理検査を行う必要があり、その際には性格や発達関連の検査を受けたいかどうか、同意を取得してから行うようにはしています。
ただやはりそれでも、繰り返す不調・うまくいかない原因が自身の性格や特性にある、ということが受け入れられない方も少なくありません。
自身の性格、発達特性、知能指数を知ることになる、というのは怖いことであるのも頷けます。
ただ発達や知能に関しては、(心理検査や診察では)ある特定の側面でしか見ていないとも言えますし(それが全てではない)、
自身のそういった部分をしっかりと把握した上で今後の生活に生かしていく、ということの方が遥かに重要なことと言えます。
先ほどのメタ解析の結果と同様で、自身のことを知ろうとせず立ち止まっているだけでは、事態は変わりません。
おわりに
今回はこれから精神科の受診を考えている方に、
気軽に受診してほしいということ、自分自身のことを知ることになるということ、そのことを怖がらないでほしいということ、をお伝えしたいと思い書かせていただきました。
最後までお読みいただきありがとうございました。