多重人格は本当に存在します
多重人格障害、正式名称は解離性同一障害と言いますが、精神科医になるまではマンガの中の話しだけだと思っていました。
解離性同一性障害の実際
私がこれまでに実際に診たことのある解離性同一性障害の方々は、多重人格、それも6人も7人も自身の中に人格がいる方達ばかりでした。彼ら彼女らは、幼少期、青年期に繰り返し壮絶な虐待を受け1人では抱えきれなくなり、その度に他人格を形成してトラウマ(心的外傷)をそこに閉じ込めてやり過ごすのです。それぞれの人格に名前と性別、年齢がついているのですが、パターンとしては一見正常で他人と話しをする役割のANPとよばれる人格と、自傷行為など危険な行動をするEPと呼ばれる人格の2人はほぼ必ずいます。
外見に関しても、服装や化粧の特徴が人格によってガラッと変わり、診察に来るたびに驚かされます。中には幼児人格もいたりして、病院や家での様子は幼児そのもので、とても演技ではできないような振る舞いをしたりします。中にはEPが頻回に出現し危険行為を繰り返し、入院になる方もいます。
太字でも強調させていただきましたが、残念ながらこの疾患の理解はあまり進んでおらず、未だにネットで「多重人格」と検索するとセカンドワードに「本当にいるの」や「わざと」といったワードが並びます。重度のトラウマを抱えているという疾患の特性上、中々外にも出られず、もちろん他人との交流もできない方々ばかりなので、あまり目に触れられる機会がなく、未だに誤解されていることが多いのが現状です。
追伸
トラウマの治療でよく知られているものとして、EMDRという治療法があります。眼球運動を左右に繰り返して脳を活性化させ脳の奥に留まっているトラウマ記憶を呼び起こして消化するといった治療法です。ただしこれを多重人格障害、複雑性PTSの方に行うと非常に危険で(傷口をぐりぐりえぐるようなイメージでしょうか)一般的には行わないか、よほど熟練したセラピストでないと行いません。他にも解離性同一性障害の治療には自我状態療法という治療法があり、各部屋にいる各人格に集まってもらって話し合うといった面白い治療法もありますか、やはりかなり専門的な治療になるため、できるセラピストが限られます。