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■受験うつの症状とは


今回は前回の続きです。前回は、受験うつとはどういう症状のことを言うのかをお伝えしてきました。今回はさらに掘り下げていきたいと思います。

受験うつの症状とは、ストレスがかかって、頑張ってもうまく成果が上がらないともなると、
「受験が近づいているのに、まったく勉強する気が起きない」
「問題集や塾の授業に集中できなくなった」
「あれほど繰り返し勉強したところなのに、思い出せない」
「寝たのに寝た気がしない」
「食事をしても砂の味しかしない」もしくは「食べ過ぎてしまう」

こんなときに比較的早期に受診していただければいいのですが、受験生だからという理由で先延ばしにし、受験うつを発症させてしまう人が多くいます。しかし、こうなってしまうともう勉強どころではありません。一度発症すると、病気以前の状態に戻るには何年もかかることがあります。

うつ病の転帰は小児においては抗うつ薬よりも「時間」が大事なことがわかっていますが、決められたマニュアルはなく、経過も様々です。とくに「受験うつ」は、周囲の理解が得られにくく、自分で自分を追い詰めてしまうため、自ら死を選んでしまう方もいます。周囲の人間を含めて、真剣に切り込めば快方に向かうかというと、そういうわけでもないので辛抱強く向き合うことが必要です。

私が経験したケースでも、子どもが何度も自傷行為や解離症状を示したことで、ようやく両親が現実に向き合うようになりました。症状改善までは、8年もかかっています。
うつ状態やうつ病の症状は、人によっても大きく変わります。青年期のうつ症状は、非定型な特徴を持っていることが多く、過眠や過食などが怠けているように周囲からは誤解されてしまいがちです。「甘え」と決めつけずに、自分の心身の状態としっかり向き合うことが大切だといえるでしょう。

■受験というものが子どもにとってどれほどのものなのか


受験は子どもにとって不安と緊張の塊です。そんな心が弱っている状態の子どもに、「そんなやり方じゃ落ちるんじゃない?」「スマホばっかりでそんなんだからダメなんだよ」「この間も模試の成績ひどかったね」というような冷たい言葉は、心と刺さります。
私も心が弱っているときに親や教師に言われた言葉は一生忘れません。ですが、言った本人は忘れていることがほとんどです。

ではどうすればいいのかというと、できたことを認めること、達成感を与えることが大事です。たとえテストで10点しかとれなくても、「難しい問題じゃないか。大変だよな」とか「前より解答欄埋めているじゃないか」とか、褒めどころを見つけてあげてください。
子どもが頑張っているのに、「模試の成績悪かったから志望校替えようか?」という言葉が、子どもの望んでいる言葉でなかった場合には心の傷となります。どんなことであっても、親が先回りして言ってしまうことはよくないのです。

■受験うつの解消法とは


ではどうすればいいのかというと、見守り話を聞くに限ります。これは言ってももいいだろうということだけを、心を込めた言い方で言うのです。

努力の過程を見る 例:「いつもがんばっているね」
過程を評価する 例:「ここまでコツコツやってきたもんね」
結果をほめる 例:「努力した結果がちゃんと出ているね」
結果に共感する 例:「うまくいって私もうれしいよ」
期待をこめる 例:「次のテストも頑張ろうね」

受験期には子どものことを考えて、支える。一緒に歩んでいくことが肝要です。お子さまの治療だけでなく、保護者への治療が必要な場合も、お子さまがうつ症状である場合、保護者自身がストレスや、心に問題を抱えていることも多いものです。例えば、社会的地位の高いご家庭で、名門大学にお子さまを入学させなければと保護者自身が周囲からプレッシャーを掛けられている場合、お子さまにそのストレスを背負わせてしまうことがあります。また、保護者同士がお子さまの学歴を競争し合い、お子さまが巻き込まれてストレスを感じるといったケースもあります。

このような場合は保護者への治療だけで、お子さまのうつ症状が軽減することもよくあります。保護者自身が受験によるストレスを抱えている場合も、ぜひ相談してきてほしいですね。

参考文献:


1.Nina R Joyce, Megan S Schuler, Scott E Hadland, Laura A Hatfield.Variation in the 12-Month Treatment Trajectories of Children and Adolescents After a Diagnosis of Depression:JAMA pediatrics. 2018 01 01;172(1);49-56. doi: 10.1001/jamapediatrics.2017.3808.

2.厚生労働省.平成26年度全国家庭児童調査:https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/2kekkagaiyou.pdf(2022.08.20取得)

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