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終わる日まで寄り添うように、君を覚えていたい。
昨日の夜、母の叔父が亡くなったと連絡が来た。
母は少し目に涙を浮かべて
「病院に行った方がいいのかな」
「喪服入るかな?」
と言ってきた。
少し家の中の空気が重くなりかけていたので、父も「喪服ワンサイズ大きいの買わないと〜」と、わざと冗談を言い、明るく努めようとした。
そのおかげで母も一緒に笑い、なんとかいつもの雰囲気戻ることができた。
が、やっぱりショックは大きかったらしく、結局夜の3時まで寝れなかったと嘆いていた。
私もギリギリまでスマホを見ていたため、寝つきが悪かった。
そんな眠気が全く襲ってこない夜、私はある同級生の事を思い出した。
名前はH君。
中学校が同じで、確か一度も同じクラスになったことはないはず。
いや、小学校も同じだったか?
それくらいの記憶しかない関係性だった。
高校で別れ、相手は大学生、私はフリーターになった18歳の夏。
同じバイト先で再会した。
死ぬほど気まずかった。
全く知らない人より、ちょっと知り合いの方が一番きまずい。
しかもそんなに話したことないし、距離感がつかめない。
この先やっていけるだろうかと先が思いやられていたのを覚えている。
だがH君はキッチン、私はホールだったので、意外と話さず過ごすことができていた。
向こうは何回か話しかけてきたが。
そうして、冬のころだったか。
突然H君がバイトに来なくなった。
無断欠勤らしい。
最初は全く気にも留めていなかった。
どうせ大学生だからサボりだろうと思っていた。
が、次第に店長が「心配だな」とつぶやくようになり、
次第に事態が悪化していることに気づき始めた。
そうしてある日、同じホールの夜勤さんにこう言われた。
「H君、自殺したって」
その言葉を聞いた瞬間、
肩に鉛のような重いものがずしんと乗った気がした。
今まで、同級生が自殺するなんて経験をしたことがないから、
めちゃくちゃ衝撃的だったのを今でも覚えている。
彼は大学で、なにやら問題を抱えていたらしい。
いつの日か泣きながら出勤したときもあったそうだ。
警察に行方不明届をだすくらいの騒ぎだった。
連絡をとっても家族でさえとらなかったらしい。
そしてある田舎の廃アパートに彼の車を見つけ、
その一室で首を切るか吊るかして亡くなっていたのだ。
彼には妹がいたが、その妹がインスタグラムのストーリーズで
「兄が死にました」という承認欲求満載の投稿をしていたみたいで、
「さすがにバカだろ」とSNSに浸かった人間の知能の低さに嘆いた。
私が好きな米津玄師の曲に「カムパネルラ」という曲がある。
みなさんご存じ「銀河鉄道の夜」をなぞって作られた曲だ。
その曲の歌詞に
「終わる日まで寄り添うように 君を覚えていたい」
という言葉がある。
カムパネルラの死を、ずっと忘れることはないと思い続けるジョバンニやザネリのように、亡くなった人を大切に思う気持ちをぎゅっと凝縮した優しい言葉だと思う。
私もこの言葉の通り、H君のことを覚えていたいなと思う。
別に仲が良かったわけじゃない。
なんなら気まずすぎて少し避けてたぐらいだ。
けれど、苦しい思いをしてきて、誰にも救いを求めることができず、ひとりですべてを背負って選んだ先が死なのだと思うと、幾分か責任を感じ、悲しい気持ちになってしまう。
死を選ぶなんて、相当悩んで悩んで抱え込んでいたとしても、決断を下すには勇気がいる。
しかし、彼はそれをやってのけてしまった。
もう全てに絶望してしまったのか、この世に救いはないと感じたのかはわからない。でも、ひとりの若者にそう思わせてしまったこの社会はなんなんだろうと考えざるを得ない。
彼に一度だけ名前を呼ばれたことがある。
その時はめちゃくちゃびっくりした。
でも、名前を読んでもらってうれしかった。
だけどもう、名前を呼んだり呼ばれたりするごく普通のことは二度とできない。せめてもう一回くらい名前を呼んでもよかったんじゃないかと少し後悔している。
まあ、ここまでつらつら書いてきたが、
ふと我にかえり「彼の死をブログのネタにし、自分に酔いしれたように文章を書く私って…」と少し悲しいようなむなしいような、絶望するような気持になった。
私は、H君のように自分を追い詰めて死を選んでしまう人を減らしたいと考えている。
どうするのかはまだ決めていないし、わからない。
自分の感情や悩みでまだ精いっぱいなところもある。
でも、せっかく生きているのだから、人生を謳歌し、しっかり使い切らないともったいないのでは?と思う。
私は、悩みやストレスと上手に生き、人生を楽しめる人を増やしたい。
まずは、自分の悩みやストレスを対処し、ブログで書いていきたいなと思う。いろんな本もいっぱい読む。その知識を誰かに伝えていくところからはじめようと思う。
そして、H君のことを私の命が尽きるまで寄り添うように覚えていよう。
それが今の私にできる最大限のことだと思うから。