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1番目アタール、アタール・プリジオス

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自作の小説をまとめています。連載中です。 天才占星天文学者を名乗る不思議な『水晶玉』アタール・プリジオスとその弟子たちを巡る物語です。 月3〜4話くらいを目安に書いていきます。
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2024年8月の記事一覧

1番目アタール、アタール・プリジオス(22)雪の朝

1番目アタール、アタール・プリジオス(22)雪の朝

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一番星が光り始めた、夕闇の部屋で。

アリエルは、年老いた準司祭をロエーヌと同じように、見開いた目で見つめる。

「…エ、エクトラスって、言ったの?」

アリエルは数秒の沈黙の後、ようやく声を出した。

「そう、アペル家の方ともおっしゃっていた」

「…な、何か、話しを…したの?」

アリエルの声は、少しかすれていた。なぜか喉がからからに乾燥していて、舌の動きも滑らかではなかった。

「え

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1番目アタール、アタール・プリジオス(23)彼の命

1番目アタール、アタール・プリジオス(23)彼の命

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イオクの話は続いた。

赤ん坊をあやすエクトラスの手は、骸骨のように骨が浮き出て肉がなかった。
それでも、彼は息子だという赤ん坊を自分の“御守り”のように大事に扱う。これが無くなっては、自分自身が崩壊してしまうと思っているかのように。
赤ん坊は、彼の心の支えなのだと、イオクは思った。

「…御司祭、感謝する」

少し温めた山羊の乳を哺乳瓶に入れ、青年に差し出すと、彼は涙を浮かべて、イオクの

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1番目アタール、アタール・プリジオス(24)旭光の蒼星眼

1番目アタール、アタール・プリジオス(24)旭光の蒼星眼

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朝食の皿をアリエルに渡すために腰を上げたロエーヌは、立ち上がったまま、準司祭を見つめた。
彼女の『祝福の蒼』の瞳が、室内を照らし始めた月光に神秘に輝く。
その聖なる美しさに見惚れながら、イオクは唇を舐めて告げる。

「お子様の瞳のことです」

ロエーヌはちらりとアリエルに視線を投げる。
彼の側には、彼を挟むようにして、パルムと『幽体』のアタール・プリジオスが寄り添っていた。

「…承知しま

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