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Tambourin タンブラン
オペラ・バレエ『優雅なインドの国々(Les Indes galantes)』 ラモー(1735)作曲
ジャン=フィリップ・ラモー(1683-1764)
このフランスの音楽家は、ルイ15世の宮廷でオルガニスト、教授、作曲家として活躍しました。オペラ『優雅なインドの国々(Les Indes galantes)』は、音楽、歌、そして舞踏を融合させた作品です。
《インド》=《ヨーロッパ以外の異国の民の総称》とされています。ヨーロッパ人の将校と世界中の現地(先住民)の女性との恋愛を中心に、エキゾチックな雰囲気とスペクタクル的な娯楽性に満ちた舞台です。
構成
序曲・プロローグ
《青春の神ヨベ》がヨーロッパの若者たちを集め、愛を交わす喜びを賛美していると、突然《戦いの神ベローヌ》が乗り込んできて、若者たちを戦士として連れ去ってしまう。《ヨベ》は《愛の神アムール》に訴え、ヨーロッパ以外の遠国で、新たな愛を生み出すように頼む。
第1幕 寛大なトルコ人
恋人ヴァレルとの婚礼中、異国にさらわれたエミリは、太守オスマンの求愛をかたくなに拒む。そこへ、太守の奴隷となっていたヴァレルが現れる。
第2幕 ペルーのインカ人
インカ王族の血をひくファニは、征服者のスペイン士官カルロスと愛し合っていた。だが横恋慕する祭司ユアスカルが、神の名を借りて彼女に結婚を迫る。
第3幕 花々
ペルシャ王子タクマスは、愛人ファティムに飽き、腹心の深化であるアリの女奴隷ザイールに恋する。タクマスは女装してザイールの本心を探るが、男装したファティムもまたアリの館を訪れる。
第4幕 未開人たち
アメリカ先住民の戦士を率いるアダリオは、将来を誓っていた族長の娘ジマが、征服者のスペイン人士官アルヴァールとフランス士官ダモンに口説かれ動揺する。
Tambourin(タンブラン)
Act I: Tambourin I - Tambourin II
※「Tambourin」は第1幕の最後に演奏されます。
様々な音楽シーンで使用されるおなじみの楽器「タンバリン」は世界最古の打楽器といわれているフレームドラムの一種になります。
枠の各所にジングル(小さなシンバル)がついており、手のひらや指、拳で叩く以外にも、楽器自体を振ったり指先でこすったりすることで音を鳴らします。
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アラブやトルコで演奏されるタンバリン《レク》
第1幕:トルコが舞台ということが、タンバリンで表現されます。
フランス語で「タンブール(tambour)」は、一般的に「ドラム」を指します。これは、打楽器の一種で、片面または両面に皮を張った円筒形の楽器です。タンブールは、スティックや手で叩いて音を出します。フランスでは、《プロヴァンス太鼓》もタンブランといいます。
第4幕は、北米が舞台。太鼓が未開人たちを音で表現しています。
第4幕『未開人たち Les sauvages』
ジャン・フィリップ・ラモーの『Les Indes Galantes』は、オペラ・バレエの最も完成された例の一つです。このオペラ・バレエは、1735年8月28日にルイ・フュゼリエの台本に基づいて作曲され、プロローグと4つの「entrées」(幕)から成ります。オペラ・バレエは、フランス宮廷で人気のあった宮廷バレエから派生したジャンルです。
これは、序曲、プロローグ、そして「entrées」と呼ばれる幕で構成される、悲劇的なリリックオペラに似た構造を持つリリック作品です。各「entrées」は作品全体とは独立したテーマを持ち、登場人物や筋書きが変わります。オペラ・バレエは純粋な娯楽のためのもので、時には牧歌的または異国情緒あふれる色彩を持つこともあります。ラモーの『Les Indes Galantes』がその例です。
このフランスのジャンルは、ラモーとリュリの影響で17世紀に生まれ、歌よりもダンスと器楽を重視します。4つまたは5つの独立した幕(entrées)で構成され、共通のテーマで結ばれています。『Les Indes Galantes』では、各幕が異なるインド(地域)に設定されています。
18世紀には、東洋と西洋の2種類のインドがあると考えられていました。ラモーのバレエは、寛大なトルコ人、西洋のインカ、東洋のペルシャ人、そして北アメリカの先住民と共に、奇妙な旅へと私たちを誘います。
フランス・バロックの巨匠ラモーの功績
1683年 誕生(J.S.バッハ、ヘンデルらバロックの巨匠と同世代)
1702年(19歳)教会オルガニストを務める
☆クラウザン曲集も多数出版☆
1715-22年(32-39歳)「自然原理に還元された和声論」を著し出版
☆近代和声理論の確立☆
1731年(48歳)音楽愛好家の私設楽団音楽監督に就任
1733年(50歳)オペラ「イポリトとアリシー」
1735年(52歳)オペラ・バレー「優雅なインドの国々」…
☆オペラ作曲家としての地位を確立☆
1745年(62歳)ルイ15世宮廷作曲家
1752年(69歳)ブフォン戦争(フランスVSイタリアのオペラ論争)
1764年(81歳)貴族となる、死去
ラモー&ヒップホップ
2019年9月パリ国立オペラ公演
284年前も(1735年上演)衝撃的かつ刺激的な舞台であったことでしょう。