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【映画】Kuru otlar üstün(英: About Dry Grasses)を鑑賞する

先日、本当に久しぶりにトルコ映画を鑑賞した。正確にいうと、トルコ人俳優を起用し、トルコで撮影されたフランスと他国の合作の映画で、タイトルは「Kuru otlar üstün(英: About Dry Grasses)」と言い、197分もある長編映画だ。

ポスター: About Dry Grasses


英語のタイトルとイタリア語のそれとが全く異なるのだが(イタリア語は邦訳すると「2つの季節の物語」という)、雪深い山間部の村で、長い冬を終えると夏が来る、四季ではなく二季しかない場所での物語のため、個人的には、イタリア語のタイトルの方がしっくりくるかな、という印象を受けた。

さて、まずはあらすじから行こう。
先に断っておくと、Wikipediaに載っているあらすじに幾つかの誤情報が記載されている。そのため、今回は、Wikipediaとイタリアの映画情報サイトのあらすじを交えて、自分なりにまとめたものを作ってみた。

Sametはアナトリア東部の人里離れた村での赴任を終えようとしている中学校の美術教師だ。Istanbulへの移動を夢見て、4年間の教育サイクルを終える日を待ち望んでいる彼だったが、4年目に起きた全く予期せぬ出来事が彼の望みを打ち砕く。その出来事とは、彼と同僚兼同居人のKenanが、学校の女子生徒2人からハラスメントで訴えられるというものだ。
この告発が理解しがたく、殺伐とした田舎暮らしから抜け出す希望を失っていたSametだったが、他の村で教師をしている義足の若い女性Nurayに出会い、状況は変わっていく。

最も親しい同僚や友人が同じ人物に惹かれている場合、どのように関係を築けばいいか?トラウマを経験し、正直な答えが返ってくる直接的な質問をこれまで以上に必要としている彼女と、どのように関係を築けばいいのか?

英語版のTrailerを載せておこう。

197分の中で、雪が降っている&雪に覆われているシーンが恐らく170分近くはあり、Sametが赴任を終える頃、初めて緑の麦の穂が、そして灼熱のような大地のシーンが登場する。

凍てつくような冬のシーンの最初の1時間程度は、Sametが贔屓にし、こっそり都会の土産物や本を渡していた少女SevimとSametのやり取りが多く登場する。この少女がハラスメントで彼と同僚を訴える張本人なのだが、非常にませた、悪く言うと、チープなキャバクラのお姉さん的な雰囲気で男をそそのかす技を持っており、大の大人の男のSametがやられてしまっているのがよく分かる。

Sevim

その後、抜き打ちの持ち物検査があり、Sevimのノートに挟まっていたラブレターを女教師が見つける。それがSametの手に渡ったと知り、「返してよ」と攻め立て泣くSevim。だがSametは塩対応をして返さない。勿論、そのような対応が分かる年齢ではないSevimは、態度を変え、Sametと巻き添えになった同僚のKenanの身上が危うくなり、、、そうこうしているうちに、2人の中が一時こじれる原因となる義足の女教師Nurayが登場する。

Nuray

田舎生活からさっさとおさらばし、Istanbulへ行って輝かしい人生を歩もうと思っているSametは、当初、両親から早く結婚することを望まれているKenanに彼女を紹介する。しかしこの後、彼女のKenanに優位な態度があったり、それぞれの密会があったり、口論に近いようなかなり激しい会話があったり、彼女の絵画に惹かれるSametの眼差しがあったり、大人の駆け引きがあったりし、男同士の友情に一時亀裂が入る。

Samet(左)とKenan(右)

だがNurayが仲裁に入り、、、いよいよ夏の前触れ、学期終了を祝う行事があり、Sametは校内の自室で移動の準備をする。そこへSevimがやってき、彼女がかつてとった行動・態度について最後の別れとして質問をするSamet。そこでしらばっくれ続けるキャバ嬢(😅)Sevim。

シーンは夏へ。
Samet、Kenan、Nurayは丘陵を歩いている。途中、一人で丘のてっぺんを目指し、頂上から4年間の回想をするSamet。彼が欲しかったものは・・・。

左からSamet、Kenan、Nuray

ということで、完全なるネタバレは避けるが、30年以上生きている方なら、一度はSametかKenanのどちらかの状況に直面したことはあるのでは、と思う(勿論セクハラの件ではない)。
そしてその時、自分はどう感じ、どういう態度を取ったのだったかな、等と自身の過去と照らし合わせながら鑑賞したり、もし自分が、どうこうなっても構わないと思えるような男(あるいは女)と2人で、夜に静かな場所にいて、でも遊ばれるのは絶対嫌だという場合、どうするかな(したかな、もあるかもしれない…🤫)、と想像しながら見ると、まるで固く深く積もった雪がゆっくりととけて水になるまでの時間の澱ように、心の奥深くまでじっくりじんわり染み入ってくる映画だと思った。

冬と夏しかない、他の2つの季節はもはや存在しない土地で繰り広げられる人間模様。もし日本で放映される機会が今後あれば、是非ご覧いただければと思う。


【おまけ】
週末に外から帰宅するSametがBörekという食べ物をKenanの分も買ってくるシーンが2度ほどある。
Börekとは、Yufkaという薄い生地にチーズなどの好みの具材を詰め、オーブンで焼いた(揚げる場合もあるようだが、映画では焼きバージョンだった)トルコ発祥のパイに似た料理だが、それが本当に美味しそうに見えたので、3つほど、ネットから拝借した写真を載せておこうと思う。

2番目のものは、私が5年前の夏にスロベニアへ行った際に食べたもの(スロベニアでの名はBurek)と似ており、3番目のものは、友達の元彼女のブルガリア人の十八番としてご馳走になったものに似ている。
バルカン半島全域で食べられているようで、名前は若干違っても、味は似たり寄ったりだと思う。
もしバルカン半島へ行かれる予定のある方は、こちらも是非お試しを。

イメージ: Börek①
イメージ: Börek②
イメージ: Börek③

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シマ子
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