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Auschwitzでの償い的な出来事と映画「One Life」鑑賞

先日、公開されたばかりのアンソニー・ホプキンズ主演の映画「One Life」を観た。監督のことはよく知らないが、Trailerを見た瞬間、「これだ、見なきゃ」と思い、1か月以上公開を待ち望んでいた作品だ。


映画「One Life」について

内容は、イギリスの銀行員かつ人道主義者ニコラス・ウィントンが、第二次世界大戦開戦直前の1938年から39年にかけて、ドイツ占領下のチェコスロバキアでユダヤ人の子どもたちが身を隠し、逃亡するのを助けた過去を振り返る実話(本の題名「If It’s Not Impossible…: The Life of Sir Nicholas Winton」)に基づいており、年明け早々観るには重いといえば重い内容かもしれない。

実際、涙なしには、というシーンもあるが、決して撃った殺したというような残虐なシーンはないので、血が飛び散るタイプや虐待映像が苦手な方にも観ていただけるヒューマン系の素晴らしい作品だと思う。
またNicholas Winton氏は、故エリザベス女王からも、669人のユダヤの子供たちを救ったという功績に対して2003年にナイトの称号を授与され、2014年にはチェコ共和国最高の栄誉である白獅子勲章をミロシュ・ゼマン大統領から授与されている偉大な人物である。

日本での公開はまだのようだが、確実に公開されるに違いない作品なので、私がここで感想を述べるよりも、是非劇場でご覧いただければと思う。

ポスター: One Life


Nicholas Wintonの娘Barbaraの著書。Amazonで購入可


さて、この映画を観て、2021年の8月に訪れたポーランドでのある出来事を思い出した。
2021年と言えばまだコロナの真っただ中で、帰国するには2週間程度の隔離期間があったと記憶している。逆算すると、私が日本で自由に外出できるのは3、4日・・・「割に合わない」という気持ちと、イタリアのコロナは酷かったため、「そんな恐ろしい国からわざわざ帰国するなんて」という周囲の反応を想像し(実際、私もダブルマスクで外出しており、友達等から「息できるの?」と言われていた)、自粛した私が夏季休暇に向かった先はポーランドだった。北のGdanskから南下し、途中3都市を経由してKrakówに4泊し、街中の全てのシナゴーグとAuschwitz等を訪れた。
その旅を機に、「シナゴーグ荒らしの女」になったわけだが(決して荒らしているわけではなく、各国のシナゴーグを見て回るようになり、一時期はミラノのシナゴーグのイベントにも通っていた。ただ、イスラエルで戦争が起きてから、身の危険を感じて現在は封印している)、それくらい、ポーランドもユダヤもシナゴーグも私には未知で、新鮮で、興味深く、未訪問の都市にもいつか訪れたいと思っている。

Auschwitzでのエピソード

ヒトラー、Auschwitzと言えば誰もが知っているが、実際にAuschwitzを訪れた日本人はそう多くはないのではと思う。現に「えっ、Auschwitz?ドイツのどこ?」と尋ねられたこともあるくらいだが、所在地はOświęcim(オシフィエンチム)というKrakówから南西およそ60kmにある都市だ。そして正式名称をAuschwitz-Birkenauという(収容所が2か所に分かれている)。行き方は各種あるので、興味のある方はご自身で確認していただきたいのと、日本語のガイドは別途予約が必要なようなので、英語がダメという方は日本からツアーで行かれる方がよいかもしれない。

https://www.auschwitz.org/en/

私はクレジットカードのトラブルがあり、事前予約ができず、朝一に行き、予約が埋まっていない回に便乗する作戦を取った。開館の40分ほど前に着いたが、既に40~50人は並んでおり、回を選ぶ余地がないのでは、と心配だったが、幸い英語の回は豊富、また「1人」という単独行動が功を奏し、朝の2回目の3時間コースのチケットが取れることになった(当時は、3時間と6時間コースがあり、6時間コースはオンライン予約しかできなかったはず)。

ただ、問題が一つあった。皆紙幣で払うものだから、お釣りがないのだ。

今でこそ、ポーランドも他のEU諸国同様に値上がりしているだろうが、当時は、夕食をレストランで食べるにも、フルコース・お酒なし(私はお酒がほぼ飲めない)で25ユーロ程度で豪遊できる国だった(通貨はズロチでユーロではない)。25ユーロと言ったら、ミラノでは昼でもセコンド(肉か魚)とワインで終わるような額である。それで、20ユーロ相当のズロチ紙幣を出すと、服屋でも困った顔をされたことが何度もあったが、Auschwitzでも同様だったわけだ。そしてそういう時に限って小銭がないのだ。
チケット売り場の男性は私に2ユーロ程度の釣りを渡さねばならず、それがないからチケットは売れないと頑張る。
正直、ここまではるばるやってきたのに、そして今回の旅のメインなのに、2ユーロのお釣りなんかいらないからチケットを売ってくれ、とこっちも粘ったが、男性は会計が合わなくなるから、と「No」の一点張りで、カード払いやお釣りのない人にチケットを売ろう、と私を後回しにしようとした。

その時だった!!!

2、3組後にいた50手前くらいのドイツ人男性がさっと私の横に歩み寄り、「これを使ってくれ」と私が出した2枚の紙幣のうち1枚を下げ、足りない分の小銭を出してくれたのだ。
私が本当にいいのか、という顔をすると、「いいからいいから。わざわざ日本からきたのに貴重な機会を逃すなんてありえない」というのだ。そして私が「ありがとう、本当にありがとう、あとでお金をくずしてお返しします」というと、「いいから、気にするんじゃない」というのだ。

そしてめでたく、私は朝から2番目の英語の3時間コースに参加することができた。このドイツ人と同じグループになるかと思ったが、彼とその妻はドイツ語のコースを選んだために一緒にはならず、収容所内で何度か近くを通ったが、始終笑顔で目礼しただけだった。

その時私は思った。
きっと彼はこれで、直接ではないかもしれないが、国民として考える先祖の悪事を少しでも償ったと思えるのだろう、と、だから私は、彼に小銭を払ってもらい、負の世界遺産を見学できたことで、かえってよいことをしたのだ、と。
本当なら借りたものはすぐに返したい性分だが、そう思うことで自分を納得させた。

見学は非常に有意義で、ポーランド人のガイドの女性の英語も非常に聞き取りやすく(私は英語があまり得意ではなく、イギリス英語はわからないので、少し心配だったのだ)、次回は6時間のコースも試したい、という気分になった。
同じグループには、まるで耳なし芳一を思わせる、耳と目玉以外全身にタトゥーの入ったデンマーク人男性とバービーのような彼女、似たようなムキムキタトゥーのカップル等、普通のカップルも含めて若者が多く、シリアスな現場にもかかわらず、暗い気持ちにならずに参加することができたのも幸いだった。

帰国して秋に友達にそのドイツ人のことを話すと、薄笑いを浮かべていたが、どうやら私の意見にまんざらでもないようだった。
その友達はかつて冬に訪れたそうだが、冬は本当に暗い気分になるからやめた方がいい、と言っていた。その際彼女は旦那と一緒に行ったが、旦那は「怖い」と言って街中で一人買い物をし、Auschwitzにはこなかったそうだ。
そういう、本当に、何かを深く重く考えさせられる場所だからこそ、春や夏の晴天の日に行くのが良いと思う。

Auschwitzの写真

折角なので少し写真を載せておこう。
(※女性の髪の毛を集めた部屋や毒ガス室の内部の写真等は、"体感するものではあるけれども、写真を撮るべきではない"という意識が働き、一切撮らなかったので、安心してご覧ください)

収容所に入る前の敷地。ここはまだ少し平和な感じがしますよね?
映画でよく出てくるおなじみの「Arbeit macht frei(働けば自由になる)」
第一収容所①
第一収容所②
ここからドイツ兵が監視していた
各所に説明がある
ある部屋に展示されていた写真
現代にも通用する言葉。プーチンにこれを10000回くらい読んでほしい
第二収容所(Birkenau)。第一収容所から移動用のバスが出ている
近景
ここで夏も冬も人々は寝起きしていた。1段に3人だか4人押し詰められて。
そして服も、あの囚人服1枚しか与えられなかったので、冬は洗っても乾かず、濡れたまま着て、零下の夜に凍死したりしていたそうです。
食事内容とか、トイレのこと(1日に2回しかトイレを使えず、耐えきれずに外で漏らすと鞭でたたかれた)をきき、一番良い仕事がトイレ掃除だったことを知りました。

プラハのシナゴーグの写真

気分が暗くなってきたのでこの辺にして、2022年の12月にプラハを訪れた際のシナゴーグの写真を少し紹介して終わりにしたいと思う。

Jubilee Synagogue
一番豪華なSpanish Synagogue
Pinkas Synagogue
男性はKippaという帽子を13歳(成人)から聖所でも外でも被らないといけないそうです


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