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Gianluigi Colinの「Post Scriptum」を鑑賞する
ある日の会社帰り、高級ブティックが立ち並ぶ一角(東京で言う銀座の並木通り的な場所)にひっそりと佇むギャラリーを訪れた。目的は始まったばかりの
Gianluigi Colinの「Post Scriptum」の鑑賞だ。
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彼は今回、色彩的な沈降、繰り返される縞模様、空間に拡張された背景でいっぱいの抽象作品の新しいシリーズを発表した。
これらの作品のユニークさは、その技法そのものにある。実際彼は、新聞社やタイポグラフィアートの印刷所で輪転機を清掃する際に使用される大型のテキスタイルを流用している。具体的には、インキから印刷機を洗浄する作業で使用された残布を回収し、選択し、選別することで、現代にその絶壁のような無常と劇的な解体の驚くべきアイコンを届けてくれる。
(中略)
象徴的な「言葉のボロ布」:
どのようなかたちであれ、書く度合いをゼロにすること。現代の時代精神を象徴的に解釈する絵画は、言葉やイメージを記憶するよりも、むしろ取り除くことに傾倒している。
(中略)
※画家のコメント
「この展覧会のために意図的に選ばれた、強烈な赤、黒の濃淡、白や青の背景に黒の縞模様など、ドラマチックな色調の作品群は、迫り来る不穏で脅威的な忘却の象徴として提示されている。絶え間ない無関心と忘却の感覚は、残念ながら私たちが生きている歴史的瞬間に属している。私の作品は、内的な空間を扱っているが、集団的な次元について語っている」
展示作品よりもまず気になったのが、なぜ「印刷所で輪転印刷機を清掃する際に使用する生地を使う」という発想が生まれたか、ということだ。つまり、日常生活で私たちが輪転印刷機など見る機会はまずないので、その清掃用具がどのようなものか、など考えも及ばない。そのため、まずは彼のプロフィールを見てみることにした。
Gianluigi Colin(1956年-)
ミラノに住み働いている。。。云々。。。
彼は何年にもわたり、"Corriere della Sera"のアートディレクターを務め、現在は"La Lettura"と、Madridの"la Lectura"、"El Mundo"のカバーエディターをしている。また、大学でのセミナーや講義も行っており、写真についての数多くのエッセーや記事も書いている。現在は"Corriere della Sera"の文化ページのアートの記事を執筆している。
読んで深く納得し、うんうんとうなずいてしまった。新聞社で長年アートディレクターをしていたなら、印刷機も日々見るだろう、と。
ちなみに"Corriere della Sera"は、ミラノの伝統ある新聞社である。また彼がカバーエディターをしているという"La Lettura"もこの新聞社の刊行物だ。Corriere della Seraは、日本でいうところの、北海道新聞(道産子ゆえ、常に道新をひいき目に見ている…笑)や東京新聞のような立ち位置、と考えていただければよいと思う。その見学の模様を以前Noteに載せたので、下にリンクを貼っておこう。宜しければ併せて読んでいただきたいと思う。
私は仕事の一環で、様々な種類の生地、柄を目にするので、表向きには柄・色の見地からこの展示に興味を抱いたのだが、内容を知ると、その背景にあるものの方がもっとずっと興味深いことがわかった。
それではその白熱した気分で、作品の大部分を紹介しよう。
まずは地上階から。
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次に、個人的に一番なじみ深い2階へ移ろう。
そして、タイトルもまた時々くすっと笑えるので(Colin氏が校了に間に合うか間に合わないかの殺気立っていた様子を思い出し、シュールなタイトルを付けたのでは、と想像する)作品と見比べていただければと思う。
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/Marco Vematti 244,4(個人名かと。きっと、この人と諍いがあったに違いない…)
/Tricromia Sul Giallo(黄ベースのトリクローム) 全て2023年
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/Geografie Affettive e Carnali(感情と肉欲の地理学) 2023
/Gemelli Ecumenici(双子のエキュメニカル) 2023
/Donne(女たち) 2022
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穏やかな感情の中に肉欲が渦巻いて、それが抑えきれなくなり、特に下の方からはみ出しかけている、ということでしょうかね?
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エキュメニズムまたはエキュメニカル運動
→分裂したキリスト教の諸教派を一致させようとする運動を指す語である。 また、キリスト教相互のみならず、より幅広くキリスト教を含む諸宗教間の対話と協力を目指す運動のことを指すこともある。
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最後に1階へ移ろう。
個人的には、モダンな浴衣や羽織の柄にもよさそうな気がする。
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海に落ちる夕陽もしくは朝焼けというイメージがしますが、皆さんはいかがですか?
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個人的にこの色合いが、錆から出てきた色っぽくて好き。
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個人的にはなかなか興味深い作品たちだったと思う。
ここのギャラリーは割と展示の回転頻度が高いので、次の展示も楽しみにしよう。
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