今日が寒い理由【詩】

昨日も今日も寒くて
明日もきっと寒い
なぜなら心が寒いから

硬い窓を開け放って
冷たい部屋の濁った空気を回して
日替わり弁当で気分を和ませる
ノートパソコンの熱はカイロ代わり

友だちになった君は次の恋を探している
新しいセーターがよく似合ってるよ

「別に嫌いになったわけじゃない」
ときどき人ごみから君の声が聞こえてくる気がして
急に足を止めるから人とぶつかってしまう

自分が悪くもないことで謝るようになってないか
そんな自分が嫌いで「整形」を検索する

でもどうしたって思い出す
君が教えてくれた僕の背中の傷のこと
君がくれた壊れかけの折り畳み傘
君が泣いた映画のワンシーン

書き溜めた日記と写真のデータ丸ごと
落ち葉と一緒に燃やしていいですか
未来の自分はなんて言ってますか
少しくらいは笑っていますか

スリープしたパソコンの画面に
自分じゃない誰かが映っている

本音を話せる相手に飢えたまま
世界の砂塵をまともに喰らって
大人の恐怖に怯えながらも
懸命に生きてきたじゃないか

涙はきっと草木のえさになる
ため息はきっと誰かの背中を押す

罪になるかどうかを考えなくていい
脳を撫でて筆を走らせよう
墨が足りなくなるまで記憶を掘りかえそう
肌色の冬がやってくる日を願って



友だちになった君が駅に向かって歩いている
転職活動はうまくいったかい？
スーツ姿は僕の方が似合ってるでしょ
また目が合っても声はかけないさ

昨日も今日も寒いし
明日もきっと寒い
なぜなら明後日があったかいから