【詩】わたしの小さな赤色の刺繍
家賃3円の微笑み
みんなに知られることはない
でもたしかに今ここにある
メシメシ言う床が
あの人と歩くアスファルトに似ている
飴玉の薄味の哀しみ
みんな知らなくて
もうすぐ無くなってしまう
包み紙をクシャッと丸め
空気を甘くする
靴ひもだけ売られている記憶
みんなに忘れられそうで
覚えておきたいの
使い所のわからない豹柄が
鎖骨に引っかかっているような
イヤホンの予備部品な体温
みんなは忘れていて
頭のいいやつがつけている
転がしてみて
あの人とわたしの目の動きを音で感じたい
窓の砂ぼこりと手鏡の色
みんな嫌っていたり見ないふりしたり
わたしのイヤなところ
涙に流れて雪に留まる
拭いてしまえばきっとうまくいくけど
あの人のイヤなところも一緒に
肥料にしたい
そうして梅の花を懐に咲かす