小島信夫『漱石を読む――日本文学の未来』(ぱらぱらと見ただけ)
小島信夫がシェイクスピアをどう考えていたか知りたくて、どうやらこの時期に何か書いているのではないかとあたりをつけて、この本を買ってみた。漱石と書いてあって、漱石の『明暗』についてとても詳しく論じて(それはもちろん小島信夫的な「論ずる」(とは小島信夫は言っていない)であって普通の「論ずる」ではないのだけれど)確かに、シェイクスピアについても書いてあった。でも、シェイクスピアだけじゃなくて、その他の英文学やロシアの文学についてもいろいろ書いてあった。ちゃんと読んでいなくて、ぱらぱら見ただけだが。1993年の出版で、私が大学でちゃんと本を読んでいた頃だから、ピーター・ブルックの『何もない空間』とか(当時とても面白く読んだ)、水村美苗の『続明暗』とか(こちらは読んでいない)、懐かしい名前が出てきた。副題に「日本文学の未来」とあるが、漱石以外の日本文学については、徳田秋聲についてたくさん書いてあるようだったけれど読んでいない。ほかの作家については目に入らなかった。なにしろぱらぱらとしか見ていないから。
小島信夫は、昔、保坂和志さんが紹介し出して往復書簡などをやっていた頃に、『寓話』とか『私の作家遍歴』とかをちゃんと読んで面白かったが、今日『漱石を読む』を読んだら、少し読むだけでも大変で、これはたぶん、小島信夫が変わったんじゃなくて、私の頭が衰えたんだろう、まあ仕事帰りで往復6時間の通勤の最後に見たからかもしれないが。だから、ぱらぱら、ということになってしまった。
この本は『小島信夫 批評集成8』と同じみたいだが、もとの版の方が安いので安い方を買った。たぶん漱石全集の装丁に似せて作った、素敵な装丁の本だ。
小島信夫がシェイクスピアについて書いているところはだいたい拾い読みできたと思う。たぶん、小島信夫がいいそうだなということの想定の範囲内だった。ロマンス劇が好きだということは私の作家遍歴にも書いてあったが、それがもう少し詳しく書いてあったのと、『ハムレット』のことをもうちょっと詳しく。あとは『何もない空間』と絡めて書いてあったことくらいだったと思う。
英文学は、オースティン、ブロンテ姉妹、ヘンリー・ジェイムズ『金の盃』、ローレンス・スターン『トリストラム・シャンディ』、ポー、O・ヘンリー、ベケット、ジョイスあたりの作品のほか、サー・トーマス・ブラウンという全然読んだことのない人も取り上げられていた。トルストイ、ドストエフスキー、フローベールなども。そのほかにも。要は、外国の小説の名作がたくさん、ということ。
だから、ぜんぜん表題と違う気もして、日本文学にさほど詳しくない私にとっては、思ったよりもだいぶ興味のわく本だった。まあ、『明暗』も好きと言うわけではないが、読んではいるから、何を言っているのか意味はわかる。『私の作家遍歴』の続きの本。また日を改めて読もう。最初から最後までしっかり読むことはできないかもしれないけど。