神林長平『戦闘妖精・雪風』シリーズ
去年、ブログに書いたもののコピペです。
神林長平『戦闘妖精・雪風<改>』早川書房、2013年(1984年『戦闘妖精・雪風』の改訂版)
神林長平『グッドラック 戦闘妖精・雪風』早川書房、2001年
神林長平『アンブロークン・アロー 戦闘妖精・雪風』早川書房、2011年
神林長平『アグレッサーズ 戦闘妖精・雪風』早川書房、2022年
『戦闘妖精・雪風』は、1970年代から雑誌に連載され、40年以上たった今でも書き継がれているSFの名作で、神林長平の代表シリーズ。ぜひ読んでほしいのであんまりネタばれはしたくないけど、実際のところ、内容を読んでも何のネタばれにもならないだろう。とにかく、内容の説明がすごく難しく、説明されても、たぶんよくわからないと思う。Wikipediaには最低限の説明しか書かれてないが、それでもここに転載するには長い。とにかく、30年前、異星体のジャムというのが地球に侵攻してきたという設定で、それに対抗しているうちに超空間通路の向こうに発見した惑星フェアリー星に、地球のフェアリイ空軍が基地を築き、延々と戦い続けている。主人公の日本人深井零はフェアリイ空軍の少尉。その愛機が表題の雪風で、高度な知性を備えた戦闘機。
というと、アクションものかと思われると思うが、まあ、そういう要素もあるけど、でもそうじゃない。そもそも、敵のジャムというのが一体何なのかまったくわからず、生物ではないらしいということぐらいしか明らかになっておらず、シリーズが進んでもどんどん謎は深まるばかり。主人公は元犯罪者で、他人の存在など完全に無視しているコミュニケーション不全の人物という設定だし。いやー、ほんと、説明大変。SFというジャンルから普通人が思い浮かべるもの(たとえば、スター・ウォーズとか?)と、魅力のポイントがかけ離れているので、読まないで想像するのは無理だろう。よく知られている作家で、似ているのはフィリップ・K・ディック。神林長平は日本のフィリップ・K・ディックと呼ばれているとかいう話もある。ちなみに、フィリップ・K・ディックは映画『ブレードランナー』の原作を書いた作家。P・K・ディックを読んだことがあれば話は早いけど、読んだことがないのなら、こんな感じ?「ある世界がある。でも、あるきっかけで、主人公(ひいては読者)はその世界の認識を完全に新たにする→その繰り返し。」ぜんぜんわからないですねー、これじゃ。えーと、映画『マトリックス』を見た人なら、アクション・シーンじゃないところに、世界観の塗り替えみたいな、「実はそういうことだったのか!?」の連続みたいな場面があったと思うのですが、そういう感じ。とにかく、哲学的な考察が延々と続く小説。いや、ほんと、説明難しい。というか、私の文章力のなさ。
あと、それに加えて、突如として感じられる強烈なリリシズム。登場人物たち(社会のはみ出し者が多い)がすごく魅力的。人と人との間の切ないほどの感情。ただし、それは男女間のものではなく、恋愛の外にあるものが多く、そもそも上司と部下だったり、人と猫型生物だったり、人と戦闘機の間のつながり、感情、信頼関係だったりするのだけれど、とにかく、もうほんとに美しかったり切なかったり、ああ、ここでもまた私の文章力の限界。
とにかく、私は、確か20年前くらいに、幻想文学の批評家として知られる石堂蘭さんがとにかく超強力に勧めているのを読んでこのシリーズの1冊目を読んでみた。だから、<改>ではなくて、もともとの『戦闘妖精・雪風』の方を読んだと思う。本当におもしろく、そのときから神林長平の数多くの本を読み漁ったが、いったんリセットしてしまい、本も全部処分してしまった。
ここからは本にはほとんど関係のない話。私は羽生結弦さんのファンなのだけれども、北京オリンピックでファンになった後の4月、新作が出るというので図書館で前の3冊を借りて順番にもう一度読み、その後最新刊『アグレッサーズ』が届き、読みかけた。そして、本のしおりとして羽生結弦展のブックマーカーを使ってますよーという写真を撮ってtwitterにあげようとして突如気づいたのだった。
「戦闘妖精」って羽生さんじゃん、て。
なにしろ、「戦闘」する「妖精」よ? 妖精のように舞う、超高度な知性を備えている戦闘機よ?
最後、突如、推し活に結びつけちゃってごめんなさ~い。