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【#003 デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション ネタバレ感想】

【#003 デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション ネタバレ感想】

公開:前章:2024年3月22日
           後章:2024年5月24日
   全18話編集版:2024年5月
原作:浅野いにお
監督:黒川智之
脚本:吉田玲子
音楽:梅林太郎、yuma yamaguchi、犬養奏、清竹真奈美
主演:幾田りら、あの
制作:Production +h.

非常に面白いが、、、広げた大風呂敷を畳み切れずぶん投げた感は否めない問題作

前後編の劇場版ではなく配信18話の新編集版で観ました。
トータルでみれば非常に面白い作品でした。
突如、東京上空に現れた宇宙母艦。その下で平和ボケしながらも平凡な女子高生達の日常が描かれる。
一見、癖の強い女子高生達の日常物でありながら、その上空には明らかに異質な存在が常にあり、母艦を巡る各国の水面下での争いや、
政府に隠蔽される侵略者の存在。その政府に不信感を抱き、行動を起こす活動家やジャーナリストなど、本当に様々な人々の思惑が同時展開しつつ物語が進行していく。
ほんわか女子高生の日常物のそのすぐ脇には、奇怪で異質な存在とそれらを取り巻く不穏な陰謀が渦巻くといった感じでここ数年のアニメ(原作は2014年連載開始ですが)とは一味違った物語展開で非常に面白く、楽しく視聴しました。
ただそれだけに残念な部分もあり、思う所が多々あったので色々と書いていきたいと思います。

キャラの掛け合いの心地よさ愉快さ


単純に日常の描写が楽しく心地よく見れます。
個人的には好きな雰囲気の作品でした。
ボケたおす主人公の背後に不穏な陰謀や思惑が錯綜し、漠然とした絶望感や閉塞感がありながらも青春が過ぎていく雰囲気が心地よく観れました。
全体の雰囲気としてどことなく東のエデンに似た雰囲気がありました。
そして主演二人の演技には驚きました。
私自身、声優を全く重視しないので数話視聴してから気付きました。
無名の演技力の高い新人だと思っていたらまさかの本職ではない事にとても驚きました。
特に第6話の門出と凰蘭が脱線事故や要人殺傷の件で揉めるシーンです。
凰蘭の「お前、おかしいよ!」と声を荒げるシーンの演技が素晴らしかったです。

母艦爆発で壊滅する東京


第16話で母艦が爆発。東京を壊滅させますが、このシーンは凄すぎました。
この作品は登場人物がわりに多いのでその各キャラの日常描写をみせつつ、爆発に巻き込まれる瞬間までを描く絶望感は凄まじいものがありました。近年ではゴジラ-1.0で銀座をゴジラが熱戦で壊滅させるシーンがありましたが、正直それを超えています。
凄まじい絶望感とバックでかかるアイドルソング調の曲がより終末感を際立たせました。
エヴァ破のダミーシステムを彷彿とさせましたね。

広げた風呂敷を畳む事の難しさ

まずこの作品における母艦が現代社会の漠然とした絶望感や閉塞感、終末感のメタファーであるというのは前提としておきます。
私は原作漫画を読んでいませんが、おそらく連載開始当初の作者の中では母艦関連の事はあくまでメタファーとしての意味合いが強く、終盤の展開にどこまで絡ませるのか煮詰まらない状態で連載が走りだしていたのではと思います。
その為、作品を進めていく上で、大葉や小比類巻らのキャラが動き出した結果が終盤の展開に繋がっているのかと思います。
しかし、その上でも作品の風呂敷をああいった形で広げた以上は決着をつける上で描いて欲しかった点がいくつかありました。

まず、一つ目は東京で母艦の爆発が起こった後、門出と凰蘭たちはどうしたのか?です。
夏合宿に出ていた門出らは帰りのSAの駐車場で母艦の爆発を目の当たりにします。
作中ずっとやってきた世界の終りまでのカウントダウンがついにゼロになった瞬間です。
これまで門出のモノローグやOPの歌詞などからも「平和な頃の日常が懐かしく思う」的なセリフがちょくちょく挟まっていたので、
ああ、ついに門出達の終わった世界でのストーリーが始まるのだと、このシーンを観ながら思いました。しかしなんと、この並行世界での門出達の登場はこれで終了してしまいます。
これには正直、驚きました。そこからあまりに急展開なので一話飛ばしてみてしまったのかと思い、話数を確認した程です。
その後、おそらく門出なのではないか?という感じで政府のロボット兵器とType-Dと呼ばれる機体の戦闘描写が差し込まれますが、肝心の門出や凰蘭の描写はありませんでした。
やはり母艦のある世界の門出らに愛着がある観る側としてはあっけに取られると言いますか、バッサリ切られているので寂しい物はあります。

そのほかにも大葉はひたすら門出の父親らがタイムリープマシンの近くにくるまで潜伏していたのかとか。
SES社と政府は箱舟を作って最終的な目的はなんだったのかとか。
そもそもなぜ政府は東京都民を見捨てて箱舟で逃げ去ったのかとか。
(これに関しては母艦爆発を公表し、大規模に民間人の避難が発生する事で、秘密裏に進めていたこれらの兵器の存在が諸外国にばれるからとか色々と言い訳は出来るが、それにしても1400万人の都民を見捨てて逃げ出すのは不可解ではある。)

そして最期は門出の父親がタイムリープした事で、母艦の存在しない至極まともな世界に変化しているという所です。
これはかなり困惑というか、なぜ???という感想しかありませんでした。
ラストで門出達を別次元からみている門出らがいるあたり、もしかしたらあの世界も門出と凰蘭らが何度かのタイムリープを経た末にたどり着いた世界なのかもしれないという解釈もできますが、にしてもぶん投げていますね。
侵略者が実は元々地球にいた存在だったとか、凰蘭が本当は前の世界での事を覚えているのではないかとか、小比類巻らの目的は?とか(小比類巻はタイムリープする方法を探している様なセリフがあったあたり、彼女が死ぬ前に戻ろうとしている感じでしたね)
本当に様々な伏線や諸々をぶん投げて物語は終わってしまいました。
連載漫画の難しさでもある点なのかもしれません。昨今様々な連載漫画が一時は人気の絶頂を迎えながらも、途中の展開で読者の反感を買い、人気が低迷したまま、不可解な展開でその幕を閉じる作品も多いです。
その点でいけば、本作は面倒で大事な所や核心はそもそも描かない、という手法で切り抜けたと言えます。
この原作者の過去の作品をみても、描きたい物はそこではなく、母艦が浮かぶ東京という絶望的な状況でも紡がれる少女らの青春の一瞬を描きたいというのが本質な気がします。
ラスト付近は残念でしたが、トータルではとても面白い作品でした。久しぶりに楽しめる作品でした。

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