”けれど私は、本当のところ信じていた。浩介と私が別れるはずがない、と。”
読了「一分間だけ」著 原田マハさん
編集者として仕事に没頭するアラサー独身女性がひょんなことから犬のリラを飼うことに。リラと出会ってから彼女の生活に起こる変化、知った景色。揺れる心情が季節ごとの情景とともに描かれる。
本の最後で、日本ラブストーリー大賞の広告を見るまで、これがラブストーリーだと意識しないで読めた。確かに言われればラブストーリーであった。
ただし落ち着いた大人の。クサいのが一人出てくるが。
さらにリラが登場するのでかなり読みやすいのではないかと思う。
原田マハさんの美しい文章。
自分とは全然違う状況なのだけど妙に重ねてしまって、泣けて仕方なかった。どれだけ愛しい日常を手に入れても、それが壊れるときはあっという間なんだ。
大好きな作家さんで、大好きな文章に触れることができ、よかった。
以下引用。知らない景色や心情のはずなのに、全部浮かぶ。共感できる。
”他の人に恋をしているのは、僕のほうだ。”
”七年ものあいだ、どうして自分が浩介と暮らし続けてきたのかわからなくなった。大した仕事をしているわけじゃない。取り立てて特徴的で魅力的な男でもない。しいて言えば、人畜無害なところが長所のような、なんの変哲もない男。”
”けれど私は、本当のところ信じていた。
浩介と私が別れるはずがない、と。”
”思いはいつまでも堂々巡りする。”