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心のお父さん


今の会社に入社するずいぶん前からの
知り合いの業者さんがいる

年齢は父親くらいの可愛いおじさんで
私と同じバツイチの娘がいる

繁忙期はお互い忙しいし
私はお客さんの要望を叶えたいから
細かいことも伝える
私のほうが客なのに色々言われて
ムカついて無視したり笑
親子喧嘩の冷戦のようにもよくなった
強引なところもあるし
怒らすとめんどくさいけど
大きい声のおもしろい人
私とは親子のような関係でもあった


普段は気のいい人で
たまに胸に刺さることを
サラッと言ったりする

離婚した直後私が痩せてしまっていて
「食べたくないって
生きたくないってことだから
ダメだよ
ちゃんと食べなさい」
と言ってくれる

バレンタインになると高級チョコを
普段からの感謝の気持ちとして渡していた
義理とは思えない本気のチョコで
彼氏はいないのでそのおじさんだけのために
いつも人だかりのデパートに行って買った
娘さんが詳しいらしく
いつもいいものくれるなぁと喜んでくれた
お返しは奥さんが選んだであろう
立派なものをいつもくれた
今の時代だと面倒な習慣かもしれないけど
私は毎年楽しみにしていた

そういう小さいやり取りが何年も続いていて
すごく話すわけではないけど
心地よい距離感の関係だった

私が休職に入って
何の連絡もしなくなり
失礼なことになってたらやだな
と思っていたら
共通の知り合いの人から
心配してくれてると聞いた

電話した
「大丈夫?気になってたけどなかなか
電話できなくてごめんな」
たぶん気を使ってくれていたんだと思う

そして
「あの気の強いの にやられたんだろ!
あいつはいかん!ほんとに失礼なやつだ!」
と私は何も言ってないのに
自分の怒りとも合わせて怒っていた
笑ってしまった
特に私はそれには応えないけど
おじさんとあの人はお互いに
気が強いから合わないらしい
前は色々文句言わないでよと思ってた
でも最初から失礼な態度をとったのは
あの人だった
注文したものは入れてくれているのに
自分の無知で これじゃないと騒いでいた
ほぼ初対面だったし腹立つよね


私たちには業界のタブーがある
例の あの気の強いの はそれを犯していて
気にしない人もいないわけじゃないけど
印象はよくない
それもイヤだったなと思い返した

相手も人間だからいつか助けてくれなくなる
業者さんがいないと私たちの仕事はできない
全然成立しない
いつも無理をお願いしている
だからそれくらい大事に付き合わないと
いけない人たちだと思っている


おじさんの会社の事務員さんが辞めるらしく
働かないかと誘ってくれた
結果的にお断りしたけど
「体調のいい時だけ都合よく使えばいい
合わなかったら気にしないで辞めていい」
と言ってくれた

なんて優しいんだろう
私のことそんなふうに
思ってくれる人もいるんだ

うれしい

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