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来週の相場見通し(7/12~7/16)

 日本の若者が世界で大活躍している。ボクシングの井上尚弥チャンピオンの圧倒的な強さ、松山選手のマスターズ優勝、そしてメジャーリーガーの大谷選手の今期の大活躍・・・最近の日本の若者は本当に凄いとしか言いようがない。さて、ちょっとおふざけで、大谷選手のホームランと翌営業日の日経平均株価の相関を調べてみた。(俺は暇なのか・・・)

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 31号までを観察すると、上昇が11回、下落が20回と分が悪い。更に17号ホームラン以降は、全て翌営業日の日経平均株価は下落している。32号の翌営業日の日経も大幅下落となった。日経平均株価が上昇しないのは、大谷が活躍し過ぎているからかもしれない(冗談)

 さて、米国では適温的な経済指標が継続している。ISM製造業、ISM非製造業指数ともに前月から低下したものの、依然として高水準を維持している。ISM製造業で注目度の高い物価は、ついに92.1まで上昇したが、市場では大きな懸念要因とはなっていない。既に織り込み済みだからだ。

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ISM非製造業では、デリバリー、物価共に小幅下落しており、これも市場の安心材料となっている。

6月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が85万人と市場予想を上回る改善となる一方で、失業率は小幅に上昇し、平均賃金の前月からの伸びは鈍化して、賃金インフレの加速は確認されなかった。現在重要なのは、前年比の数字ではない。前年比はコロナの真っ只中との比較であり、あまり意味がない。前月比の動向が重要なのだ。こうした米国の「加速し過ぎていない経済回復」は、FRBによる金融正常化加速の思惑を後退させ、ダウは7/2に2カ月ぶりに最上最高値を更新した。(この日はS&P500、ナスダックと揃って史上最高値更新)米国債券も買い安心感が拡大し、株も債券も買われるゴルディロクス的な相場となった。尚、債券市場では米長期金利1.78%が今年のピークとなるとの見方も出始めている。市場とは、本当に勝手なものだと思う。つい数年前まで市場ではインフレ率が上昇しないことに悩んできた。日本がいい例だ。どんなに日銀が強烈な金融緩和政策を実施しても、2%のインフレ目標すら達成できないのだ。世界の先進国もほぼ同じ状況であり、中央銀行もインフレが上昇しない理由について合理的な説明ができず、その要因を「グローバリゼーション」、「社会のデジタル化」、「アマゾンエフェクト」、「社会構造の変化」など、様々な複合要因で説明してきた。それが、今年になると急に「インフレ懸念」、「スタグフレーション」のリスクが叫ばれ、市場は不安定に推移してきた。その中で米金利が年初の1%近辺から一時1.78%まで上昇したわけだが、その際にはマーケットでは今年中にも長期金利は2%を超えていくとの見通しが優勢だった。それが、足元で米金利が低下してくると、今度は年末までに1%まで低下するとの声が強まってくる。市場とはこんなものだ。私は、少なくとも当面は米金利は上昇しにくい展開が継続すると考えている。米金利が大きく上昇するリスクが低いのであれば、今の米国債は水準もスプレッドも投資として、魅力的だからだ。債券市場のプレイヤーは、今では金利が少しでも上昇してくれば、しっかりと買いたいと考えているだろう。しかし、金利が1%に向けて持続的に低下していくかについては、私としてはリスクシナリオと考えており、当面は1.2%~1.6%程度、もっと狭くは1.25%~1.45%程度で膠着すると考えている。そして、米金利が膠着することで、米国株は引き続き堅調になるのではないだろうか。米国経済は好調だ。米国の実情をよく示しているのは、今は米国求人数だと考える。この米国の求人数の強さは、もちろん特殊要因もあるのだが、根底は米国企業の業績がしっかりしているということだ。

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 期待インフレ率は、再び2.3%を割り込んで低下しているものの、期待インフレ率の低下以上に名目金利が下がっているため、実質金利は再びマイナス幅を拡大している。これは、株式市場には相当のサポート要因になるだろう。米中対立や地政学リスク、あるいはデルタ株等の新型コロナ再拡大で一時的に調整する局面があっても、米国株は引き続き最高値を更新していく展開を想定したい。一つ面白いのは、ドル円相場は米国の実質金利がマイナス幅を拡大している中でも、111円台から109円台半ばと僅かしかドル安円高となっていないことだ。日銀短観の21年下期の想定為替レートは105円54銭であり、この円安は日本企業の業績上振れ要因となるだろう。

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 日本ではワクチンの1日当たり接種回数が6月後半に110万回を超えたが、既に80万回まで減少している。東京オリンピックというリスクイベントを前に、ワクチンの供給不足も指摘されている。菅総理は、東京都に対する4度目の緊急事態宣言を決定した。ワクチン普及とコロナ抑制で支持率回復を目論んだ菅政権には厳しい状況だ。
 東京都議会選挙では、事前の下馬評では、都民ファーストは10議席等まで議席を減らし、自民党は50議席超を獲得すると目されていたが、結果は自民党は33議席、都民ファーストも31議席と拮抗した。東京都議会選挙は、衆院選挙の前哨戦と位置付けられており、自民党にとっては厳しい結果となった。それでは、今回の都議会選挙のポイントを総括したい。

都議会選挙の勝者は、「小池百合子」と「公明党」

今回の都議選の勝者は「小池都知事」だ。小池氏は都民ファーストが大敗する状況を想定していたことだろう。ゆえに、体調を崩される前から、都議選で一度も都民ファースト支持を打ち出してこなかった。1月の千代田区選挙までは、都民ファースト候補を応援し、自民党候補を打ち破り当選させている。それが都議選では沈黙を守った。その間に、何度も二階自民党幹事長との会合を持っている。都民ファーストを全面支持して、都民ファーストが惨敗すれば、小池都知事はレームダックの都知事になってしまうほか、小池氏の「選挙に強いブランドイメージ」も損なわれる。そして都議選の公示日直前から、体調不良で「お隠れ」になった。しかし、東京新聞の世論調査で、都民の7割が小池都政を支持しているという「驚きの結果」が6月末に出てきた。東京都民は、何故か小池都政を評価しているのだ。そして、その結果を確認したかどうかは不明だが、選挙戦の最終日に小池都知事は動いた。透明の街宣車に、酸素ボンベを持ったまま、突如として16もの選挙区に登場し、18人の都民ファースト候補者の応援に駆け付けたのである。この小池氏の体を張った応援がどれだけ効果を出したかは分からないが、結果としては都民ファーストは31議席も取得したのである。この一連の動きで、永田町では「小池憎し」と共に、「政治的なセンスは抜群」との評価を改めてしたことだろう。結局は、小池氏は全ての話題をさらっていったのだ。なんと昨日は、自民党の中谷元防衛大臣から、選挙後に自民党は小池新党と連携を検討すべきなどと驚くような発言が出るようになっている。それだけ小池氏のブランド力が増しているのである。

もう一人の勝者は公明党である。選挙前までは、今回の選挙では公明党は過去7回実現してきた「候補者全員当選」を果たせず、現行の23議席から数議席を失うのでは?との予想がされてきた。しかし、終わってみれば、公明党は全員当選を果たした。選挙後の山口代表の鼻息は荒い。東京オリンピックの無観客開催を改めて主張し、これは実現しそうだ。更には「解散総選挙は遅いほうが望ましい」などと発言している。その公明党が23議席を取れた要因に、ここでも小池氏が関与している。すなわち、小池氏が最終日まで都民ファースト支持を示さなかったおかげで、公明党支持者は都民ファースト候補者に勝てたのである。

こうした小池劇場とは対照的に、菅総理の選挙の弱さが目立っている。 菅総理は、1月の宮古島市長選、北九州市議選での自民党6名の落選、3月の千葉県知事選、4月の国政三選挙での全敗、6月の静岡県知事選とあらゆる選挙に負けている。安倍前総理が色々批判されながらも長期政権を形成したのは、選挙に強かったからだ。政治家にとって、選挙に弱いは致命的である。そうした中、8月には横浜市長選がある。横浜市長選挙は、菅総理が横浜の地盤であること、現職の国家公安員長で菅内閣の一角である小此木氏が、衆議院議員を辞職し、市長選挙に立候補したことから、この選挙でも負けるようだと、菅総理の退陣の思惑は高まる可能性がある。この横浜市長選は、「人生最後の仕事として絶対にカジノ誘致を潰す」と意気込む「横浜のドン」と呼ばれる藤木幸夫氏の存在、そしてカジノ誘致賛成に転向した林市長の4選への挑戦、猫カフェの藤村晃子さんに加え、何やら田中康夫氏も立候補と見所満載だ。田中康夫氏は「なんとなくクリスタル」の作家であり、元長野県知事だ。特に長野県知事時代は支持率が9割を超えるなど、「時の人」のような活躍ぶりだった。しかし、ここ最近は冴えない。2012年は衆院選で落選、2016年は参院選に出馬したが落選している。最も注目されている大物の小此木氏はカジノ賛成から反対に態度を変えている。選挙の争点は「カジノ」となるだろう。しかし、コロナのこの真っ只中で、争点がコロナと対極にあるカジノ誘致問題のシングルイシューというのは、何とも違和感が強い。

それにしても、菅政権は政権末期の匂いが漂っている。秋の衆院選挙は、本来は政権交代なんて起こりようがない。自民党と公明党の合計で306議席も保有しているのである。最大野党の立憲民主党の政党支持率は10%にも満たない。それでも、最近の政権のムードは、起こり得ない政権交代さえ起こっても不思議ではないという政権末期感を漂わせている。

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ご参考までに、参院選の状況も示しておこう。参院選こそ、野党が勝利する可能性は十分ある。来年の夏の参院選は、かなり注目となることは間違いない。

 

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さて、こうした日本固有のリスクは、日本株の上値を重くしている。しかしながら、追い詰められた菅政権が、秋の臨時国会で大規模な補正予算を実施する可能性があり、市場の焦点が補正予算に移行すれば、株式市場にとってはプラス要因となる。巷では20兆円とか30兆円の補正予算との声が聞かれ始めている。日本は現状では、先進国でも最も財政支出をしやすい国である。自民党と公明党で盤石の体制を敷いている今なら、どれだけ大きい財政支出も可能なのだ。東京オリンピックが閉幕するあたりから、補正予算議論が盛り上がると思われる。但し、日経平均株価の足元の弱さの一因は、「値がさ株」の低調にある。日経平均株価の今年の最高値は2/16の30,467円で、7/8には28,118円へと▲2,350円下落した。下の表では、日経平均換算で足を引っ張っている企業とそのインパクトを示している。▲2,350円の下落の内、ファーストリテイリングだけで▲813円を占めている。ファストリ、ソフトバンク、エムスリーで▲1,600円弱の下落である。こうした値がさ株が底入れしないと、日経平均株価が本格的な上昇に向かうのは難しいとも思える。そして厄介なのは、こうした不調銘柄は、ファストリはウイグル綿問題、ソフトバンクは中国の規制強化によるピジョンファンドの投資企業への懸念など、かなり特殊な要因の影響を受けていることだ。

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 新型コロナウイルスについては、ワクチン接種の進んでいる国においても、再拡大している。顕著な例は英国で、1日当たりの新規感染者は一時大きく減少したが、足元では3万人を超えてきた。フィンランド等でも「ユーロ2020」のサッカーの祭典により、また感染が急拡大している。このデルタ株の蔓延が嫌気され、世界的に株価が動揺している。しかし、私はこの株価の下落は大して懸念していない。下の表はリスクオフ時の典型的な市場の動きである。これと比較すると、まだまだ本格的なリスクオフとは言い難い。特にVIX指数がまだ20を割れていることは、株式市場にパニックは全く発生していないと考えていいだろう。足元で発生している株価の下落は、「リスクオンの中の調整」であり、「リスクオフ」ではないと考える。

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但し、新興国の動向は今後は、やはり注意していく必要があるだろう。新興国スプレッドの水準は長期的に見れば、依然として安定している。

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しかし、短期的なチャートで見ると、足元で急角度で上昇している。今後の動向には注意したい。

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 さて、先週末の海外株式市場は非常に強かった。前日の急落を全て取り戻し、ダウ、S&P500、ナスダックともに史上最高値を揃って更新である。しかも、この日はバイデン大統領が産業への規制を強めるための大統領令に署名すると演説をした。ユーザーデータの使用に対する監督を強化したり、プラットフォーマーなどの寡占ビジネスにもっと踏み込む内容である。こうしたマーケットにおいては逆風を受けながらも、大幅高となったことは、相当に米国株の地合いは強固であるということだ。この中で「ネットの中立性」ということが、今後のキーワードになりそうだが、これはまた別途解説したい。来週はパウエル議長が半期に一度の議会証言を行う。14日に下院、15日に上院へ登場し、コロナから回復途上にある米国経済を強力に支援する旨の報告を行う。米国の上院は7/12まで休会、その後8/9から9/10まで夏休みとなる。インフラ投資案、債務上限問題など議会が議論すべき案件は山積みだ。決算では13日のゴールドマンサックス、JPモルガンをスタートして、14日にバンクオブアメリカ、CITI、ウエールズファーゴなど金融機関の決算が続々と出てくる。いよいよ決算発表シーズンスタートである。米国株は史上最高値を更新する展開が継続しそうだ。

日本株については、先週末の引け後に安川電機が通期見通しを28%も引き上げ、更に増配するという良好な決算を打ち出した。前回の安川電機の決算は、「安川ショック」と言われたが、今回は株式市場のサポート要因となりそうだ。先週の日経平均株価は国内の政治やコロナ問題に加えて、ETFの分配金の換金売りなどの厳しい週となり、大きく下落した。しかし、200日移動平均線でサポートされ、週末の日経平均先物は28,500円台まで急反発している。日本株の反発の持続性はまだ分からないが、とりあえず週明けのスタートしては、最高の状態で始まるだろう。日本でも来週は240社程度の企業が決算を出してくる。市場の関心が東京オリンピックのネガティブな面から、ポジティブな点へ、そして企業の業績の強さ、補正予算でのサポートに移行していけば日経平均はじりじり切り上がるだろう。来週は、まだそのための助走段階だろうか。レンジとしては、28,100円から29,100円を想定している。

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