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公用文から見る「わかりやすい文書」とは #仕事での気づき

皆さんは「公用文」ってご存知ですか?

公用文とは、公務員が職務上作成する公的な文書のことで、目にしたことはほとんどなく、たとえ見たことがあっても印象としては何も残っていないという方が多いかと思います。
また、公用文のことをよく知らなくても、何となく馴染みの薄い、お役所が作るお堅いイメージの文書だと思うかもしれませんね。

私自身は学生を卒業した後に公的機関へ就職し、公用文の作成や管理に関わる職務に長年従事してきました。
数年前に退職し、現在はフリーランスとして活動していますが、当時の経験は今でも役に立っています。

今回は公用文の作成という仕事から得た気づきからの「わかりやすい文書」についてシェアさせていただこうと思い、投稿いたしました。
少しでも皆さんの参考になれば幸いです。




■公用文とは

公用文は主に公的機関である各省庁等から関係機関または関係者に宛てに発出される文書であるため、一般的に目にする機会なんてほとんどないと思います。

種類で言うと、例えば
・法律や規則に基づいて作られる告示、訓令、通達、通知、公告、公示
・議事録や会見録などの各種記録、統計資料や白書などの公開資料
・法令・政策等の解説や広報
などが挙げられます。

法律や規則に基づいて作られる文書は、行政手続きや公的機関の意識決定に基づく根拠となることから、法的な効力を有するものとなります。
そのため、正確性と信頼性が重要視されています。

また、公的機関という立場上、特定の立場や利害関係を示さない中立的な表現が求められますし、当然個人的な意見や感情的な表現は避け、客観的な事実に基づいた記述となるのも特徴です。

さらには、文書の目的や種類によって様々な内容の公用文が作成できるという汎用性があることや、ある程度のルール等を覚えれば誰でも作成可能な文書であるという再現性が高いことも挙げられます。


■公用文の役割

例えば、新しい法律や規則ができた場合、その法律や規則の内容に関わる実務を行なっている人たちにとって、その抽象的な内容だけでは不十分であり、理解しにくいことが多くあります。

その抽象的な内容を具体的にしたり、補うような形で作られるのが通達や通知、解説などの公用文となるわけです。

このような公用文としての性質上、不特定多数の人たちが目にする文書となることから、必然的に「誰にでもわかりやすい」内容が求められます。
そのためにも、内容を簡潔かつ明確に伝えることが重要であり、専門用語の使用は最小限に抑え、わかりやすい表現が必要となっています。


■公用文に求められているもの

公用文の作成にあたっては各省庁等で独自のルールを定めていますが、現在基本的な方針については文化庁の文化審議会によって出されている『「公用文作成の考え方」について(建議)』に基づいています。

▼「公用文作成の考え方」について(建議) 〜文化庁ホームページより〜
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/93651301_01.pdf 

今回の投稿にあたり、私自身も久しぶりに見返してみたのですが、漢字・カナや外来語の表記、符号の使い方、表現方法など細かく決められているんですよね。
これも公用文に求められている正確性の一つとも言えますが。

ただ、それ以上に大切なこととして、「公用文作成の在り方」「読み手に伝わる公用文作成の条件」の中で以下のとおり定めています。

・読み手とのコミュニケーションとして捉える
・文書の目的や種類に応じて考える
 (必要に応じて読み手に合わせた書き表し方を工夫する)
・正確に書く
・分かりやすく書く
・気持ちに配慮して書く

こうして見てみると、これらの点は公用文に限らず、作成するあらゆる文書に共通する大切なことなのではと改めて思います。


■公用文は民間でも通用するのか

公用文の作成に関わる仕事を始めた頃は、まずそのルール等を覚えるのがとにかく大変でした。
もちろん最初から作成に携わることなどなく、できあがってきた公用文の草稿(原案)をひたすらチェックするという日々が続きました。

けれど、そのチェックする過程を通じて様々な公用文に触れることで、自然と作成に関するルール等が身についたように思います。
実際、ある程度の経験を積んだ後、自分自身で文書の作成を行うようにもなりました。

退職後は公用文を作成する機会はなくなりましたが、フリーランスとしての活動の一環としてビジネス文書の作成を請け負っていました。
クライアント様から依頼された際は、公用文作成の考え方をベースにし、依頼内容に応じて当てはめていくことで比較的容易に作成することができています。

公用文それ自体は民間で通じるものではありませんが、その一方で公用文が「誰に対してもわかりやすい」文書であるという在り方であること、そして正確で伝わりやすい書き方で作られていることからすれば、その在り方や書き方自体は民間でも十分活かせる文章術の一つであると私は思っています。


■おわりに

現在は非常に多くの情報が出回っており、いわゆる文章術やライティングスキルなどに関する様々な情報も比較的容易に入手できるようになっていますよね。
私自身、このnoteを中心に皆さんからいろいろと学ばさせていただいており、とても参考になっています。

その一方で、私自身の中ではやはり過去に公用文の作成に関わってきた経験がとても大きく、「誰にでもわかりやすい」という在り方や、「正確で伝わりやすい」という書き方は今も大切にしています。

これからも研鑽を重ねながら、自分なりの「わかりやすい」表現を目指していこうと思います。


最後までご覧いただき、ありがとうございました。



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