性と王道と学園モノ。後宮小説
遥か昔。素乾国、時は槐暦━━。
ある女性の人生の一節を、歴史書『素乾書』など多数文献からの解説を交えながら小説として書き連ねた一作。
名を『銀河』という田舎暮らしの少女が、官女となるための女大学に後宮務めの何も知らず飛び込んだ。
破天荒な彼女は同室の女友達や、帝との房事を哲学として教える先生と奇妙な縁を築きながら、一風変わった『女大学』の学業に励んでいく…。
そんな彼女が選ばれたのは、まさかの正妃の座!?
様々な思惑に巻き込まれながら、その意味もわからず過ごす銀河は、やがて後宮官女たちを率いて国賊と戦うことに…
というファンタジーです。
歴史小説じゃないよ!騙されたな!
※ #センシティブ
♡後宮小説・書籍情報♡
筆:酒見賢一
(発行:1993年)
新潮文庫 本体550¥
1989年第一回ファンタジーノベル大賞受賞
心がほんの一瞬だけ、交わりました。
すべて、心の交わりに付随するものでした。
みんな!えっちは好きかーい!
\\\ イエーーーーイ!!! ///
夢旅チロルです。
というわけでえっちな小説だ。
しかも、そのエロスを極限まで洗練してえっちを織り込んだ、非常に丁寧な作りの歴史小説、いや、ファンタジー小説である。
この小説において、えっちなシーンを「えっち///」と感じるならば、それは修行が足りないか(?)業が深いかだ。
そもそも、「皇帝が大勢の妻を囲う場所、後宮」に入る宮女を教育するにおいて、話がえっちにならないわけがないのだ。本来なら恋愛などすっ飛ばして、皇帝の子をいち早く宿すのが後宮の宮女の役割なのである。皇帝をいかに気持ちよく接待し、気に入られ、子を宿して正妃に座するかが大切なので、えっちなのは当たり前なのだ。
(重篤なえっち連呼)
では大切なのは、それ以外の要素だろう。
前述の通り、ファンタジー大賞の受賞作品である。
そして、審査員数人が「なんだ、歴史小説じゃないか、これ」と騙されたのも、事実だ。
いかにも中国らしい国名や地名、人物名、漢文を古文っぽく訳した文章、数々の引用文献や歴史学者の名など、また歴史書を小説に書き直しているかのような語り口や時代背景解説も全てにおいて架空のもの。
架空世界をまことそれらしく書いて読者を引き込み信じ込ませるほど真に迫った物語、まさに“ファンタジー”。
『井上ひさし』氏曰く、
「シンデレラと三国志と
金瓶梅とラスト・エンペラー」
…………。ごめんお姉ちゃん浅学やわ!三国志とエンペラーはふいんきでわかるけど金瓶梅はわからへん!
このレビューの読者もだいたい同じ認識であることを祈る。(?)
1990年、『雲のように風のように』としてアニメ化されている。
あまりにもえっちすぎる///ところは全年齢向けとして改変されたが、作品の映像化は物語が名作である証明の到達点と言える。
このえっちにならざるを得ない後宮という世界観の中で、純粋無垢な銀河の存在は、物語を澄んだ形にする。性や後宮宮女という生臭い物を知らず、また、物語の、皇帝と銀河の師、『角先生』の教える『後宮哲学』なるものが、『性』を趣深い、獣欲とは違う高尚さで考えることを“させてくれる”。
みんな、えっちは好きだね?
左様である。
私もだ。
しかし、私が真に求めるのは、卑猥で艶めかしく生臭い性ではなく、学問としての性━━ 時代ごとの変化や、付随する文化や、対する哲学や意識、 そういう、真に澄みやかな、性への知的好奇心のはずである。
これがなかなか理解されないし、その点に到達できないし、見つからない。
本屋にあっても手に取れない。
むり。(´・ω・`)
私も角先生の授業受けたい。
とにかく、熱く説明しようとしても、説明が難しかろう学問。
それが、性だ。
━━そういう知的好奇心の原点のひとつとして、私の愛読書であるのが、『後宮小説』なのだ。
と、いう感じで、こたび私はこの作品の、あえてエロス、女大学の後宮哲学から、想うところを連ねていく。
♡還性小説
今の世、過度に性は疎まれている。
人間の三大欲求、食と睡眠は認められているのに…。いや違うわ、割と食は意見別れ続けてるし、睡眠も許されてない社会もあるわ。なぜじゃ。性に至っては言及を疎まれながら、快楽の方法として一番に消費され、本来の目的である子の親となる目的は果たされずにいる━━
ええい、そんな社会現象的話はいいんだ。
寝食を共にするとは、要するに食事と閨を共にする、つまり夫婦関係を示す言葉で━━ああ、違う、違う、そんな話をしたかったんじゃないに決まってる。
性の忌避と無理解。
私はいたずらに知識と猥雑な性欲だけついた大人になってしまったが、まだ探究する“性”を諦めていない。
男性のことを知らないのであれば、女体のことを知るしかあるまい。
…………知らないけど。
あー、もう。_(┐「ε:)_
この後宮小説の、女大学の師を正しくは、『瀬戸角人』と言う。
70を過ぎた老師で、30の歳まであらゆる男女の契りを試し、最も良い男と女の交わり方を研究し、論文や書にまとめ上げるに至った。
その功を買われ、王宮に召し上げられた。後宮の女性、宮女たちに、男への良い交わり方を教えるためで(あけすけに言えば王がドスケベセックスがしたかったためで)ある。
今の時代の科学的見解から見れば否定され得る理論なども含まれている。
しかし根本的に、栄養を調えた食事、ストレッチや運動、男女互いの体の部位とその役割への知識など、現代で十分役立ち得る下積みを以て、王と宮女たちに快い性交の方法を指南しようとした……、
そも嘘松なんだけども。誠にもったいない。ああもったいない。
さて、召し上げられた角人、角先生だが、壁にぶつかった。如何に良い体を作り、互いに快くなれる技法を使っても、真なる性の交わりとは言えないのではないか。これを以て角先生は『哲学』、心での交わりの答えを求め始めたのである。
教わりたい(クソデカ感情)ところで作中では『角先生』という単語自体下ネタという設定が
至高の男性『皇帝』と、至高の宮女が心身共に交わった果てに、その哲学が証されるという。だから、『後宮哲学』なのである。
ここで恋愛価値観だとかではなく、感情はどこから来るか、男女の違いは何か、といったこれもまた基礎のような哲学思考から、性的心愛の結ばれるところへ話を持っていくのがまた、良い。
女大学で先生はそれを問いかけるのだが、私の答えは私の答えとして、生徒たちにはおのおのの答えがあるから考えてみなさいと言う。それがもうまたニクい。
さて、その中で銀河だけ“角先生の答え”を聞きに行く。それを読者として又聞きするに、答えはおおよそ女性の中にあると角先生は想っている。おのおのの中に答えが在るから、作中の角先生の出題だけでも並べておきたいが今は我慢する。
ただレビュー読者の方にも、既読者の方にも、考えてもらいたいなと思う。角先生だって性交を多く研究してきたから、哲学は女性に集約すると思ってしまうだけなのかもしれないのだ。
ところで、角先生に後宮“哲学”を直接教わりに行く人間はもう1人いる。
皇帝その人である。
女性への理解を深めようという志、まことにエモい。
♡救性小説
ヘミだ味噌だの言う気はないが、外野から、男と女を突き放してしまうのはまことにもったいないと思う。
主人公、銀河は、女大学の講義を受けたことで、己が女であること、相手が男であること、その体の機能と、心構えを理解することができた。
実技の授業(模倣(銀河は寝てたけど)も、相思相愛の男女が結論的に至るべきところを、前もって知ることができた、これもまた得た心構えのひとつと言えよう。
今こそ、心からの愛を以ての逢瀬は、“ファンタジー”になってしまっていないか。
これについて、角先生とその言葉の続きが、もう全部言ってしまっているので引用する。少しナンカ入っているけれども。段落の空白にて省略とする。
性に疎いカップルが、いざセックスに至って、生身の体がグロテスクに見え、性道具の扱いを間違え、無理な性交を行なって、互いに痛い思いをして以降、性交がトラウマになってしまったという話を聞いて、涙を拭うと共に少しの寒気がする。
最近話題の「子供時代に遠ざけられた物に大人になってから歪みました!」という話ではないが、
引用に倣うに生まれながら行なう呼吸、生きるに足る食事はまだしも、次を生むための性行為ばかり極端に軽んじられているのは不自然だと考える。
そら性行為は相手あってこそ、なのはそらそうよ、なのだけども、したって1人で、いや皆で1人で学べる範囲の正しいやり方を伝えていかねばなるまいと思うのは間違っているだろうか。
卑猥か?
低俗か?
先の時代、経験豊富な女性の方が敬意を払われ、好意を持たれていた、若い女子たちに手ほどきをしていた、……という話が猥褻なのか?
料理上手なオカンと生徒たち。と、その時代、何の違いがあるか? それに好ましい相手に食べさせたくて作る料理は、相手を想って味を調えるものだ。同じじゃないのか。処女信仰は西洋の物で皆処女を守っていたら人類絶滅じゃないですかァとよくある文言を置きつつ
私は性を学びたい。
学問としての性。時代ごとの変化や、付随する文化や、対する哲学や意識。そこにあった愛情や感情、気遣いを。
そしていつか、己の愛する人に、礼節を以て体を晒したいと想う。男の体に引くことなく、女の体を恥じることなく、そして心の中和を目指したい。
冒頭の言葉は、銀河が彼と証した後の言葉である。
その交わりが端に見て激しいものかどうかは書かれていないが、穏やかに幸せに終わったことは記されている。
私の、「後宮小説に関するつまらない話(後宮小説小説)」は、おおよそこの辺りで一区切りとする。
♡友と共に愛と共に♡
哲学の話終わりィ!! パンパン( 人)
いいか。
銀河はかわいくてやんちゃで、いいぞ!!
童女(わらわめ)だ!ロリだ!物語で最年少だ!なのに宮女務めしに行く、というかそのための学校に行く理由が「わーい三食出る!」だからな!
何 も わ か っ て な い!!!
銀河ちゃんのはっちゃけっぷりは、『銀正妃』に据えられてからも変わらない。
ただ、その時点でもまだ性のお通じが来てなくて。来てから、「『えっ、来たってことは、“やる”ってこと?』先生、どうしよう、困ります!乙女心的な意味で!」って迷まよする姿も、かわいい!
ってしながら、城が攻め込まれた時に後宮で軍隊作るぞー!っておしとやかさとかなく、鉄砲バンバン打っちゃって、他の宮女もノッちゃってキャッキャッて応戦している。行動力がかわいい。
学園モノと言えばルームメイトだよね。これが濃いのよ。しかも何だかんだでみんな銀河ちゃんのこと好きだし。仲良いし。1人異次元の格の女性が混じってるけど。
セシャーミンちゃんは貴族産まれの高飛車ツンお嬢様。最初は田舎生まれの女とか穢れの塊か霧のようなものだわぁオホホって言ってたんだけど学校の都合上ね、
色々あって同室として言葉を交わさざるを得ないという関係になるけど。
お嬢様ムーヴは変わらずかましつつ、意地っ張りで強気で、すぐ文句言って、時には歳下で田舎もんの銀河と正面からキャーワー言い合ったりするのね。
映像化頼んま!
してたわ!
みんな脳内に好きな姿のセシャーミンを描こう!
江葉ちゃんもいいぞ。
いわゆる無表情クーデレ。小柄。女っけ無し。ちょっと西洋の血混じりの出身で、都とは異文化の持ち主。
いつもダボダボのパジャマと部屋着の間みたいなのを着ていて、よくタバコを吸っていて、口数が少なくて、というか簡潔すぎるきらいがあって、頭が良くて知恵が回って、でも感情に疎くて、みたいなー!
実は経験豊富で、でも色気に惑わされるタイプじゃなくて、面倒見が良いというか、面倒臭いから最大効率を狙うタイプの、真面目。理論武装(褒め言葉)
クーデレチャンカワイイネェ…タバコ吸う?()
で、さっきから皇帝王様って言ってるけど
その人こそが、双槐樹 コリューン
じゅうはっさい!! 銀河の旦那です!! しかも、後宮に入る時、初めて顔合わせる人!!
女性的な美しさも併せ持っててそれで後宮を隠れ蓑にしてるの、この若さで暗殺を狙われてるから、銀河も男とはわからなくて、でもとにかく綺麗な人だなぁって思う
王族として傲慢さはなく悠々とした余裕の持ち主。頭脳明晰でその若さできちんと臣下らに的確な指示を出せる良き王。後宮にも先生に直接教えを乞う思いやりのある人。でも筆者から「苦労人」って言われちゃう 時代に巻き込まれてしまった…
最初は、角先生との相談で政争に関わりそうもない銀河を正妃に据えたんだけど…巻き込まれかけて
「初めてお前様を愛おしいと想った。お前はわしが必ず守る」
運命的な出会い、明かされた秘密、地位を超えた告白
たぎる (迫真)
ちゃんと銀河と契るよ…結ばれます…
で、この歴史物語(?)の敵軍ながら、敵味方をかき回す坊主おじさん 渾沌
上で房事について話してる人ね
とにかく自由人で博奕打ちの変わり者、勘と思いつきと行き当たりばったりとフィーリングでなぜか全てうまくいった人だし、たぶん最後まで悪くいってない。通称『渾兄貴』
筆者曰く『舞台活劇で1人だけ台本を持たずに好き勝手に歩き回る人』
素乾国が滅びるきっかけを作ったとはいえ(玉座狙いはやめようと大将には言った)、最終的には銀河たちの逢瀬の機会を作り、後宮の宮女たちを全員逃がす手伝いの案を出して協力してくれたり、
渾兄貴マジ混沌…………です。言葉にするのは難しいけど独自の哲学を持っ…持…持ってるのか?渾沌だからね。わからないね。
えっちなこと難しく考えることなくそういう要素は中学生並にキャッキャッて女の仲を楽しめばいいと思います。
あと銀河かわいいね。そもそも皇帝ハーレムシステムの後宮って現実的には恋愛と性交の順番が逆だし、ともすれば恋愛なんてない物だったのかもしれないんですよ。なので双槐樹×銀河は非常にてえてえです。
後宮ファンタジーの元祖とかとも言われてるみたいですね。
後は酒見さんが巧妙に審査員を騙した舞台設定、そもそも物語の語り方じたいとある歴史書を小説化したという体の“小説という舞台”も楽しんでほしいです。勝手に偉人やら研究者やら編纂者やら作ってくる。民明書房かな?
そんな酒見賢一さんも、2023年に没されたそうで…
本当に後宮小説のファンとして、頭を下げます。この見事な作品を読ませていただき、誠にありがとうございました!
他の後宮ジャンルの小説読んだことないです。
夢旅チロルでした!
また御縁あればよろしくお願いします!