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ミュージカル「ブラッド・ブラザーズ」

「同じ日に生まれ、同じ日に死んだ双子」ーーミュージカル ブラッド・ブラザーズを見ました。

カッキーとウエンツのW主演として宣伝されてるけど、真の主役は堀内さん。カッキーとウエンツの歌をたくさん聞きたい!ってモチベーションで行くとちょっと物足りないかも。あと、ちょっと芝居ターンと歌ターンでちょっと分断されてる感じがして、ミュージカルというよりストプレ感高め。私はヒリヒリするミュージカルの中でもヒリヒリする芝居ターンが好きだったりするので、『途中で歌の挟まるストレートプレイ(ミュージカルではない)』という感覚で観てました。

堀内さんの歌声と表現力が素晴らしい。貧しくても明るく生きてきたけど、運命に翻弄されるお母さんを素晴らしく演じていました。間違いなく主演・堀内敬子です。何かの賞を授けたい。
伊礼さんの悪魔的な存在感と歌の力強さがすごい。違う歌詞を同じメロディで書くシーンに合わせて歌うの大変そう。舞台上でいろんな存在として立ち回るおもしろさもあったり。
カッキーとウエンツは歌は少ないけど、7歳時代の子供らしさとティーン時代の心情の表現が上手。表情とか手の動きとか。そしてそれぞれの年代や育った環境に応じた人物に育っていく説得力のあるお芝居でした。ズタボロになっていくカッキー大好物です。
木南ちゃんは歌はほぼないけど、悲劇的な運命を歩む双子と対照的な"普通の女の子"を自然に演じていて、だけどミッキーのヤク切れのシーンなんかはカッキーを食うぐらいに(アフトク談)強烈な感情表現をしていて引き込まれた。
壮麻さんはメインのミスター・ライオンズのカチッと感と冒頭の元旦那のクズっぷりが振り切れてて大好き。歌声もっと聞きたい。
一路さんと朝陽さんははじめまして。一路さんの上品なママとエディへの愛、運命に翻弄されおかしくなっていく静かな狂気、見応えがありました。
サミー兄ちゃんでかい!全力の悪ガキで、ガキ大将納得だった。最後の曲でミッキーの傍で歌う時の表情がとても好きでした。
そして、アンサンブルキャストの安心感。登場人物多かったなーと思うのに、カーテンコールで並ぶとキャストの少なさに驚く。見た目も年齢も違う数多の登場人物それぞれにちゃんとキャラクターがあるし、何よりコーラスの厚みがすごいです!

お話の内容は重く暗いテーマだけど、ジョンストン母ちゃんは基本的には明るい性格だし、子供時代は全力ではしゃぎ、ティーン時代は甘酸っぱく、見ている方の感情も揺れ動く舞台でした。ミュージカルとして歌もそれなりにあって、皆さんとっても上手でメロディが耳に残る。そしてなにより芝居の質が良い。所々ん?って思うようなところがあっても役者勢の実力で気にならなくさせるみたいなパワーがあった。

エディがミッキーを好きになる、ミッキーに憧れを抱くのは、血のつながりを考えたらなんとなく理解ができるんだけど、ミッキーのエディに対しての気持ちがどうにも見えにくいというか。ミッキーから能動的にエディを好きになってはいない気がした。自分のこと格好いいとかいろんなこと知ってるんだねとか、親友になってくれる?とか、エディから言ってもらったから好きになったみたいな。誕生日が同じだってわかったから? それこそ"血のつながり"なのかな? もう少し、幼い時期でミッキーがエディに対して憧れたり「あいつになりたい」って思ったりするような描写があってもよかったかなあ。
あと、リンダの存在は終盤割と大事になるんだけど、リンダがあまりに"普通の女の子"過ぎて、ミッキーやエディがどうして彼女を好きになったのか、ミッキーがどうしてあそこまで執着するのかわからなかった。幼馴染だからとか、思春期の長い時間を一緒に過ごしたから、という単純な理由以外に、リンダという女の子がこんな性質を持っていて、そこにミッキーとエディが惹かれていったんだよーっていう部分が一つ欲しいところ。


以下、いつも通りネタバレ満載でピンポイントに感じたことをつらつら箇条書きで挙げていきます。

・冒頭、真っ暗な舞台にジョンストンさんが1人登場、アカペラで歌い出す。まずこの歌声の引き込み力がすごい。

・まだ独身時代のジョンストンさん、ダンスが好きな明るい女性。ダンスホールで口説いてきた男と妊娠を機に結婚したけど妊娠しっぱなし(25で7人出産!?)で旦那に捨てられたという歌詞があるんだけど、この、ジョンストンさんと子供たちを捨てた元旦那をミスター・ライオンズ役の壮麻さんが演じてるという、なんともエグい配役。違う人物を演じるとはいえ、同じ役者がこの作品の対比となる2人の母親の両方の旦那を演じてるってヤバいと思う(褒め言葉)。何か感じずにはいられない。

・赤ちゃんがいるのにミルクすら買えない貧しい暮らしなのに、来週の稼ぎでご馳走食べよう(ハムにジャムにスパム…)と語る、このお気楽思考が貧乏の原因の一つなんだなとすごい納得でした。後に出てくるカタログの話も、6ヶ月先だからってなんでも注文してしまう思慮の浅さ。貧乏な人はお金が入ると入っただけ使っちゃうんだよ…(自分自身への戒め)

・子供ができなくて…と吐露するライオンズ夫人に「私はできてできて困っちゃう!」とケラケラ笑いながら話すジョンストンさん、ライオンズ夫人のさっきの話聞いてた?? 理解できた? しかも「仕事はちゃんとできますよ」なんて見当違いの心配をしてるし。明るい肝っ玉母ちゃんでは済まされないヤベー発言だと思います。

・テーブルに靴の迷信。ライオンズ夫人は作中で何度も迷信や言い伝えを馬鹿にしたような見下したような発言をする(ブギーマン→おバカなお母さんたち、カササギ→ミッキーのくだらない迷信)のに、エドワードを自らの手元に繋ぎ止めるためにジョンストンさんの迷信深さを利用する。そして、結局、自分がでっちあげた言い伝えの通りにエディとミッキーは死んでしまって。冒頭で「母親の心は今ではすっかり石の様」とナレーターは言ったけど、この母親はジョンストンさんに限らないのでは。ジョンストンさんが真実を告げたから双子は死んでしまったのか、それともライオンズ夫人が言い伝えを口にしたときに呪いがかかってしまったのか。

・「わが子」の歌詞の中で、こんなお家で育ったら…おもちゃは独り占め→サミー兄ちゃんに銃を取られる、汚い言葉を使う必要もない→粗暴な言葉遣い、失業者の列につかずに済む→失業…と、エディは確かにそれらを回避して、ミッキーはその通りになってしまっているの辛い。

・ライオンズパパ子煩悩。すき。壮麻さんの子供になりたい。ただ「女性はみんな赤ちゃんを抱っこしたいもんだろ」って発言わたしには辛い。ここでライオンズ氏はリチャード、ライオンズ夫人はジェニファーと名前が出るのに、作中でジョンストンさんは誰かにファーストネームを呼ばれることはなく、ひたすら母として描かれているんだよね。だからこれは母の物語。

・ジョンストンさんを解雇するために、自分で稼いだわけではない、夫に「くださる?」と言えば簡単に貰える大金を手渡すライオンズ夫人。そしてこの母に育てられたエディは、将来失業したミッキーに、「お金なら少しあげるからさ」と親からもらった(であろう)お金を簡単に渡す。この親にしてこの子ありという感じ。

・7歳のミッキーとエディ。ミッキーはくるくる表情が変わって、「オレ騎兵隊~!」ってはしゃいでる笑顔とか母ちゃんに怒られて眉下げてるのとか拗ねた表情とかぜんぶ可愛くてニコニコしちゃう。ウエンツエディの7歳の頃の手の動きがとても、品よく育てられた子供って感じがして好き。上品で厳格な家庭で育ったけど、年相応に汚いことに興味があったり、乱暴なことをカッコいいと思ってしまったり、そういう嗜好に繋がる部分はやっぱりジョンストンさんの子だなーって思う。

・ナイフで手を切って義兄弟の契りをするなんとかミー。どっかで見た。去年の春に観た。契約に関しては去年の年末ぐらいに似たようなの観た。ホリフ○ロは契約がお好き。

・サミー兄ちゃんのお皿のくだりけっこう好き。ミートプレート?→兄ちゃんそんなに頭デカくねえ!→じゃあサイドプレート?→違ぇよサイドじゃねぇよてっぺんだよ!ってミッキーのツッコミが的確すぎて(笑)
そしてサミー兄ちゃんの頭の中を探すエディ可愛い。以外と物怖じしないタイプ。サミー兄ちゃんがウオオオオー!!って腕広げて回ってるの、エディは後に自宅で空気銃をもらったときに真似してやってるんだよね。

・母ちゃんにエディを紹介するミッキー、得意げで可愛い。ここのジョンストンさんの表情がすごくいい。ライオンズ家を追い出されて、まさか出会えると思っていなかった我が子と会えた喜び。だけど、エディとミッキーが出会ってしまって、いつか真実を知ってしまうかもしれないという恐怖。「また会ってもわが子と呼んじゃいけない」という歌詞が辛い。帰んなって言われたエディが一回振り返るんだけど、あれ東京楽前に気づいたけど、もしかしてブギーマンの綴り聞こうとしてた? 振り返る前に口元が「ブギーマン…」って呟いてた気がする。

・ミッキーがライオンズ宅に登場。このシーンは毎回カッキーの遊びがあっておもしろい。東京終盤、コートハンガーが瀕死でした。「あなた、エディと同じ学校?」って聞いてるけど、ミッキーって学校行ってるのかな…?(階級制度に詳しくない)「同じ日に産まれたんだよ!」を聞き逃さなかったライオンズ夫人は、ミッキーを追い出す。ミッキーと遊びたい、ママなんて嫌い!と下品な言葉を使ったエディを思わず叩いてしまうシーンで客席から笑いが起きるのめっちゃ嫌だった。笑いどころじゃないと思うんだよな…。丁寧に上品に育てた子供が親に向かってあんなこと言ったらそりゃ嫌だよ…。

・一幕の見どころ、キッズゲーム。大人達が全力で子供を演じる。みんな違和感なく全力で"子供"として遊んでて、役者ってすげーなーって思った。戦争ごっこ(当時はありふれた遊びの一つだったんだろうな)をしてて、撃たれても「指先をクロスして10まで数えれば起き上がってもいい」という、ラストシーンへの壮大なフリ。けど初見じゃコレがそんなに大事な歌だなんて思わないよな。(あと初見じゃ歌詞が聞き取れない…)
ちょっと長いかなーって思うんだけど、カッキー、木南ちゃん、俵さん、やっきーさん、岡田さんもちょっと、ソロが聞ける。このときエディは部屋の窓からみんなが遊んでる姿を見てて、指先クロスのルールを知る。みんなを眺めてニコニコしながらクロスする練習しててかわいい。
悪ガキグループの中ではミッキーとリンダが一番年下なのかな。リンダはミッキーを庇ってるし、年頃の女の子っぽく同い年の男の子に対してちょっと大人っぽく振る舞ってる。木南ちゃんの7歳リンダ、とても7歳で可愛い。貧乳いじりはいらん。「おれ指クロスしてた」って泣くミッキー抱きしめたい。かわいい。

・公園で射的。ミッキーは当たらない。エディはそもそも銃の扱いが下手。リンダは百発百中。このフラグがラストで効いてくる。俵警官の登場セリフ「ちっちゃなネズミを…」ハチャメチャに声が良い。エディが2人の話を真に受けてドナルドダックの真似をしたり92番のバス待ってまーすって言ったときのミッキーとリンダの表情と反応がいい。「この子、知らない子」という、自分を守りたいが故の残酷な裏切り。子供時代、こういうことあるよねえ。ティーンになってからは上手く逃げるのに、7歳の頃は怖くなって泣き出しちゃうのもわかるかわる。
俵警官の連行シーン。ジョンストンさんもライオンズ氏も一言も言葉を発さない。首根っこ掴まれてちっちゃくなるミッキー、母ちゃんの足元に縋るミッキー、母ちゃんの顔を不安げに見上げるミッキー、ぜんぶ可愛い。けど母ちゃん、子供にFuxxポーズ教えるのはダメよ…。悪いことは悪いことと教えないと。ジョンストン家では強気で上からだった俵警官、ライオンズ家ではヘコヘコして下から下から。階級社会の嫌な部分が凝縮されている感じがしてとても嫌だった(褒め言葉)。

・ライオンズ家の引っ越しが決まり、エディは、二度と来るなと言われていたけど、別れを告げにジョンストン家を訪れる。ジョンストンさんは、ミッキーのことを覚えておいて欲しいと、エディにミッキーの写真が入ったロケットを渡す。エディはミッキーに自分の空気銃をあげる。ミッキーがエディを撃って、エディは倒れるけど指先をクロスしてるから生き返って、2人で笑い合い、そして、別れの時。無音でスローモーション。印象的。ラストに効く。

・長い長い日曜日。突然の柿澤勇人の本領発揮。歌が上手え~~~声が良い~~~。親友が引っ越して寂しい7歳の空虚感が舞台全体を支配していて、本当にこの人は上手い。「おれもなりたいな、あいつに」の部分は、この2人が生き別れの双子だって知ってて聞くと本当にグッと来る。ライオンズ夫人が持ってった方が反対だったら、この歌も反対になってたんだ。俺もなりたいな、僕もなりたいって歌うけど、なれるかもしれなかったのに。

・母ちゃんがOh Bright New Day歌って踊ってるとき、なになに?ってずっと母ちゃんの側をウロチョロしてるのかわいい。部屋から丸めた絨毯を伊礼牛乳屋と二人で運び出すときの遊びが回によって違う。しかしこの曲、一番歌詞が聞き取れない。私はキッズゲームより聞き取れない。他の劇場だともう少しストレスなく聞けるのかなー。聞き取れないところも多々あるけど、「出直して勝ち組になる」がどうしてもまず「転落して勝ち組になる」に聞こえて、頭ん中で一回ちがうちがうって修正しなきゃなんないんだよね。
あと、引っ越しが決まってご近所や警官たちが喜ぶのしんどい。この一家はこの地域では歓迎されてない存在なんだって思い知らされる。母ちゃんたちも喜んでてwin-winだからまだいいけどさあ。
ダンスはほとんどカッキーしか見てない。キッレキレの7歳児サイコー。最後の最後の決めポーズで母ちゃんの肩に手を置いてニコッ!ってするの最高にかわいいんで各地公演見る人は注目してみてほしい。

〈休憩〉

・時は過ぎ、ジョンストン家は引っ越しでそれなりに穏やかに賑やかに暮らしている。子供たちは巣立ったり結婚したり。ドナマリーも双子産んでないか? サミーが学校を少し燃やしちゃったけど判事のおかげで謹慎で済んだってとこ、ここで謹慎より重い罰を受けていたらこの先の不幸は起きなかったかもしれない…。ヨボヨボ判事のやっきーさんはゆるキャラみたいで可愛いけど、判事オイコラって気持ちだった。
14歳の制服ミッキーがこの作品の中のビジュアルで一番好き。髪型も制服も。若く見えるよねえ(33歳)。クシになりたい。ティーンのヤンチャっぽさ、異性への興味、甘酸っぱい感情、すごくいい。

・メガネ伊礼&お仕置き発言はターゲット誰なん?

・不良だけど自分で机運んでくるのかわいいね。なんとかミーでも暗転でそっと自分で机片付けるいい子だったもんね!
で、結局ボラ族って何を食べるんですか? 岡田さん「ハイ先生!」東京千秋楽で報われてよかったね。けどオッサンいじりはいらんかな。高校生役が言うのは年頃の悪口として見られるけど、先生役が言うのは冷める。で、ここでちょっとだけ「そんなんだったら就職できないぞ」とミッキーの未来(失業して仕事が見つからない)を暗喩してるんだけど、サラッと流れすぎてあんまり印象に残らん。あの授業でミッキーが仕事見つからなかったときに「もっとしっかり勉強していれば…」とは思わんやろ。

・エディが謹慎になった理由のロケットの中身をライオンズ夫人が見てしまうシーン、ちゃんと良好に親子関係が築けている感じが見えるから、余計に「ママにはないの? 秘密」って言葉がキツい。正にその秘密であるエディに正面から言われたライオンズ夫人の衝撃凄まじいだろうな。ところで幼いミッキーと母ちゃんのツーショ見せてほしい。絶対可愛いじゃん。

・再びエディに会えたときのジョンストンさんの表情がとても慈悲深くて素敵。なんの映画? のシーンはちょっと長いしダレて嫌だったな。日替わりは全然いいんだけど、その場でのアドリブはリスク高いわ。そのあとリンダ達に襲いかかるシーンももうちょっと短くていいわ。年頃の性への興味の描写が不要とは思わないけど、しつこいというか、クドいというか。もうちょっと、なんか、違う表現があったんじゃないかな。

・ジョンストンさんの前に現れたライオンズ夫人、ヤバさが振り切れてる。伊礼悪魔が乗り移りましたか!?っててぐらいの不穏さ。目の光が完全に消えてる。ラビットホールでも思ったけど、役者ってのは目の光を出したり消したりできるんですね、すごい。すっごくジョンストンさんを追い詰めるけど、こんな状況になってしまったのは、ライオンズ夫人の「ひとりちょうだい」がきっかけなんだよね。そしてその後引っ越したりせずジョンストンさんと良好な関係を築いていたらこんな風にはならなかったかもしれないのに。キチガイ女と言われるようになってからはほとんど物語に干渉してこないけど、その後エディがミッキー&リンダと会ってた頃や、エディが議員になったあたりではどんな風に暮らしていたんだろう、と思った。

・3人が再び出会ってから関係を深めていく時の流れの速さがすごく残酷に感じる。10代のこの時期って確かにあっという間だよね。ミッキーに対するリンダの視線。そしてリンダに対するエディの視線。楽しいように見えて、絡み合う複雑な恋心。18歳になるころミッキーはもう働き始めてて、エディは大学へ進んで、少しずつ階級の差が顕著になっていく。「僕はミッキーじゃない…」という言葉と、最後のミッキーの「俺がなれたんだ、こいつに」が対になってる。お互いが、お互いになれたかもしれない、あいつが手に入れられて自分が手に入れられなかったものが、自分があいつだったら手に入っていたかもしれない。
残業がんばるから、クリスマスは俺の奢りなっていう気持ちは本当だったのに。ここまでは、少なくともミッキーはエディのことはまだ大事な親友だった。

・突然の壮麻さんソング。キャッチーなメロディだけど歌詞が苦しい。若者もベテランも、ご時世だから仕方ないね!で片付けられクビになってしまう時代。
3ヶ月ぶりに会って、エディはあんな感じで別れた割にはなんのわだかまりもなくミッキーに再会できててちょっとすごいなって思った。
仕事クビになって、生きていく金を稼ぐために必死で仕事探しても全然見つからなくて悲観に暮れてるときに、親の金で大学に行って新しい友達を作って毎日パーティ!女の子!って言ってる同い年に「仕事の何がそんなに大事なの?」なんて言われたら私もキレてしまうかもしれん。でもエディももちろんミッキーも悪くなくて、全ては階級制度がもたらした不幸。
このときミッキーは自分は全てを失ってエディは全てを持ってると思ってるけど、ミッキーにはリンダがいて、エディはリンダを手に入れられなくて自分がミッキーだったらいいのにって思ってる。お互いが「あいつなら…」と思ってしまっている。
ミッキーはもしかしてクリスマスにエディと会ってあんな風に吐き捨てて別れたりしていなければ、サミーの誘いにも簡単に乗らなかったかもしれない。エディと話して格差を強く実感して、金がない負い目に押し潰されそうになってしまったんではないかな。女房連れてどこ行けるよ、は兄ちゃんずるいよ。ってかあの後サミーも当然捕まったんだよなあ!?

・一瞬で心が壊れてしまうミッキー。そりゃ人が撃たれるのを目の前で見てしまったらね…。カッキーの芝居の真骨頂はこういうところよな…。刑は7年。イギリスの迷信について調べてたら、鏡が割れる(これは歌詞の中に出てくる)と7年不幸に見舞われるってのがあったんだけど、何かの暗示なのかな。それともアレか、ミッキー&エディの初登場が7歳だから、ミッキーの子供が7歳になったぐらいに出所なのかな。
ミッキーは子供(サラ)が産まれる瞬間も、名付けのときも、産まれてしゃべって立って歩いて…って成長していく過程も近くで見れなかったんだよね…。
医者が下した診断は正当だったかわからないし、うつ病の薬だってどんな効果なものか。気休め程度のものだったのかもしれない。当時のうつ病に対する周囲の見方もわからないのでこの辺はコメントしづらいな。
マッチ棒に宝石箱に薬の瓶に、芝居でいろんなものシャカシャカするねカッキー。

・新しい家でのミッキーとリンダのやりとりは、公演を重ねる毎に緊張感が増していって、心臓がギューっとなった。お互いがお互いの芝居を受け取って重ねていってどんどんリアルになっていってた。手に出したときに地面にこぼれてしまった一粒を這いつくばって拾うミッキーの姿は壮絶。

・リンダはどんな気持ちでエディに会ってたのかな。少なくともエディの気持ちは知っていたわけで、なんとなくエディの気持ちを利用して自分の寂しさを埋めようとしていた感じがしてならない。この辺は、わたしのような人間にはわからない感覚だな。あと、2人を指差してミッキーに見せたライオンズ夫人は急に何!?となった。大人になってからミッキーとライオンズ夫人接点なかったよね??
「ミッキーが銃を持ってどこかに行った」と聞いてリンダが叫ぶ名前は「エディ・ライオンズ!!」なのかあ…となった。そりゃ、現状命の危険があるのはエディの方だもんな、と思うんだけど、そこは愛した旦那を引き止める方向に向かわないの?とは思った。

・血管浮きまくり顔真っ赤で顔中から全ての水分吹き出して慟哭する柿澤勇人、大好物です。銃を持って客席を見渡す目は本当に怖い。セリフこそないけど、ここの客降り演出はいいなと思った。狂った男が街をうろついている、私たちは住人で、狂った男に怯えている。

・ミッキーとエディが対峙するシーン。エディに銃を向け気持ちを投げつけたかと思いきや、警察の呼びかけに動揺した様子を見せたり、感情剥き出しのミッキーと、ただミッキーを静かに見つめるエディ。あのエディ、厳しい表情を崩さなくて何を考えてるかわからなくて、どんな感情で見てたらいいかわからん。二人とも子供のころはあんなにニコニコ笑い合っていたのに…。
舞台下に警官が出てくるんだけど、ジョンストンさんが登場したときの岡田さん警官とやっきーさん警官の芝居がとてもいいです。最悪の事態になってしまって、救えなかった…とでも言うように顔を伏せるやっきーさん警官。たとえそれが、単に舞台上の役者の邪魔をしないための行為だったとしても、私はあの人物のそういう感情から起こした行動だと思った。
そしてジョンストンさんの告白。あれだけ迷信深くて、テーブルの上に新しい靴は絶対乗せちゃダメだって言ってたような人が、どうしてあんなタイミングで真実を告げてしまったのか。迷信なんかより二人の血の繋がりの強さを信じたのか、信じたかったのか。
真実を告げられた時の双子の反応はそれぞれだし、回によっても違う。それまで頑なにミッキーから視線を外さなかったエディがジョンストンさんを振り返り、再びミッキーを見つめたとき表情を崩し始める。ミッキーは呆然とした表情でエディを見つめ、顔を歪めてあの言葉。
「俺がなれたんだ、こいつに」という言葉、この瞬間、ミッキーもエディも思っただろうね。エディは両親の顔を思い浮かべただろう。リンダのことも。ミッキーだって、エディが見てきた世界を想像しただろうし、自分の過去を振り返って、違う環境だったら起きなかった事態がたくさんあっただろう。でも二人とも決して不幸だったわけではなく、それぞれの家庭で温かく育てられたわけで…。
発砲してしまった瞬間、ミッキーは「え?」と言うんだよね。すぐに彼自身も撃たれてしまうから、ほんの一瞬なんだけど。だってミッキーは射的が下手だったんだもん。どうして当たってしまうの…。
エディは撃たれてから息絶えるまで、そしてミッキーはエディを撃ってしまってから、それぞれあの一瞬でどれだけのことが脳裏を過ったんだろう。全てはもう、死んでしまった2人の心の中にしかない。
東京楽で気づいてしまったんだけど、ミッキーが倒れる場所が、リンダとの結婚式で紙吹雪を撒いてもらった場所だった…。

・本当のラストシーン(?)ちょっと拍手で消えちゃうからもったいないなって思う。特に東京楽なんかは拍手長かったから。あれキッズゲームかけるタイミングってガチガチに決まってるのかしら。
「指先をクロスして10まで数えりゃ、起き上がってもいいから、大丈夫ゲームなんだし」子供のころ、ミッキーに空気銃で撃たれても、指先をクロスしていたエディは生き返ったけど、これは空気銃じゃないし、遊びじゃないし、ゲームじゃない。

・カーテンコールでサミー兄ちゃんが銃を拾ってミッキーを起こしてくれて本当にありがとう…。
堀内さんの番で拍手が一際大きくなったのが答えだよなあ。再演やるなら主演はジョンストンさん役の人ににしてほしいけど、まあ興行的に難しいんだろうけど。



相変わらずめーっちゃくちゃ長くなってしまって、各都市公演の前にはアップしたいと思ってたわけなんですが、ギリギリ書き終えたというか無理矢理書き終わらせたというか。自分の記憶の記録なので、できるだけ覚えてることを書きたいな〜と思ったら長くなってしまうのだよね。
実は2022年ミュージカル初めの作品でした。今年もたくさん観ます。そのスタートに素敵な作品に出会えて良かったです。

なっがいのにここまで読んでくださった方がもしいらっしゃったら、ありがとうございました。(そしてお疲れ様でした)

ではまた〜。

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