【小説】 魂の殺人⑩
去年の今頃、私はいったいどこにいたのかさえ
はっきりとはわからない日。
確か、行くところはなくてジョコの家にいた気がする、、、。
けど、まったく記憶がない。
街はブラックフライデーだった。
去年はブラックフライデーなんて
そんなこと気づかずに毎日、毎日
生きていくことで必死だった
最後に祐輔に会った
2023年3月
祐輔からは何故か赤ちゃんの匂いがした
保育園でバイトしている時
乳児クラスだったから
よく赤ちゃんのあの甘い柔らかい匂いを
覚えていた
2年前のブラックフライデーでは
確か父と母と買い物をしていた
母も元気だったのだけれど
ネコのお葬式の時
母は杖と佳世子の手を握って
必死に歩いていた
実家には帰りたいけど
昔には戻れない
佳世子が変わってしまったのか、、、。
気づいてしまったのか。
犬のハナには会いたいけど
足が遠のいていた
簡単に元には戻れないし
気づいてしまったから、戻れない
いいなぁ。祐輔は
もう覚えていないんだろうな、、、。
生きるということがどれだけ
難しいことかわかったあの日
佳世子なりに頑張ってきた
冬がやっとやってきた。
今年もイルミネーションはきれいなんだろうな
無理に変えなくてもいい。
そう、思ってきている今日この頃
知ってしまった
広い広い世界に
まだやり遂げていない
たくさんの世界を私は見たい
そう、おもった
でも、心の糧にして生きてきた
あの優しい大学時代の思い出も
何故か消えてきていた
佳世子は実は二股したことはなかった
好きな人ができたら
きちんと好きな人がいます!
と、言ってお別れしていた
大学時代。
結婚して18年目で
二股を通り越して
不倫をする女になっていたから
周りがそう思うならいいと
なげやりになっていた
自分を雑に扱われたから
雑に扱っているのかな?
なんて考えながら
少し落ち込んでる自分がいた
周りに迷惑をかける事だけはしないように
そう、思っていたのに
そう生きてきたのに、、ね。