うわきのアナグラム ー タイトルが絶妙の『うきわー友達以上、不倫未満ー』
現在第5話まで放映済みのドラマ、『うきわー友達以上、不倫未満ー』、不倫ものは無条件で見ることにしていますが、これは義務でなく見続けています。漫画原作ということですが原作は読んでいません。
あらすじ等は公式サイトでどうぞ。
まずタイトルがいいですよね。このタイトルで、原作者が不倫という現象のどの側面を描こうとしているのかがわかります。「うきわ」は「浮気」のアナグラムでもあって、なおかつ主人公・中山麻衣子(門脇麦)の心理的現状を表すシンボルにもなっています。センスいいなあと思いました。
つい先頃まで放送していた『サレタガワのブルー』も漫画原作で不倫された側について描いた作品でしたが、本作とはまるでテイストが違っていました。
『サレタガワのブルー』も、不倫された側の二人が知り合うという点においては本作と同様の状況ですが、全8回ということもあってか登場人物の心の内に深く踏み込むことなく、不倫という現象についてもただ起きたこととして描かれていて、“した側”=ただの自分勝手な悪いヤツ、というシンプルな解釈をベースとしています。立ち位置としては勧善懲悪的ですね。(原作は読んでいないので、あくまでドラマの印象ですが)見ていても“した側”の二人に対して腹が立ってくるような話でした。
本作は、不倫“した側”/“された側”というような単純な図式で不倫を語るのではなく、不倫が起こるときに人の心の中で何が起こっているのか、というようなことを描こうとしている気がします。“された側”の人に重きをおきながら、“した側”の人についてもステレオタイプな扱いをせず、人間というものを描こうとしていることがうかがえます。
門脇麦さんていいですよねえ。全く演技に見えない。そのままスッとそこにいる感じで。同じく“された側”の二葉一を演じる森山直太朗さんも、“普通っぽさの存在感”みたいなのがあって、いい。対する“した側”の夫・中山拓也を演じる大東駿介さんも、“普通だけどいかにもしれっと浮気しそうな感じの人”にぴったりはまっています。
不倫ドラマってテンション高くなりがちですが、異色の低温ドラマになっています。好きだなあ、この感じ。その低温を作り出すのに、キャスティングがかなり貢献しているのは間違いないでしょう。
“した側”の不倫相手も含めた、登場人物それぞれの心理に寄り添う分、ストーリーはゆっくりと静かに進みます。第5話での展開から、これから先、もしかしたら修羅場があるのかもしません。その時は少し温度が上がるかもしれませんね。いずれにせよ、雑な描き方はされないだろうと思います。
誰でもうきわが必要な時があります。そのこと自体に良し悪しはありません。本作は多分そのことを描いた作品です。