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【日本ドラマ】2024年春ドラマ、完走したのは?

『RoOT/ルート』

探偵バディもの。W主演の河合優実さん、坂東龍太さん、ともに好きだし、探偵ものも好きなので迷わず見ました。
探偵系でよくある1話完結ものではなく、ある事件を軸に全体を通して話が展開される。ただ事件を追うだけじゃなく、河合優実さん演じる調査員・玲奈の心に影を落としている過去も関連してきたりして、ストーリーが重層的になっていておもしろかった。重い部分もありつつ、坂東龍太さん演じる後輩調査員・佐藤のキャラクターが良い意味で軽さを添えていて良いバランスでした。

『季節のない街』

山本周五郎『季節のない街』が原作。同じ原作で黒澤明監督の映画『どですかでん』(1970)があります。
『どですかでん』は戦後と思しき時期のバラックの街が舞台で、カラー作品なのに、なぜか思い出すときには白黒になってしまう(私は)。記憶の中では暗いというかシリアスな作品です。身も蓋もない感じすらします。
翻って本作はどうかというと、企画・監督・脚本を宮藤官九郎さんが務めているだけに、極力ユーモラスでちょっとほろっとくるヒューマンドラマ、みたいな感じになっています。ドラマだから、なのか、クドカンさんだから、なのかはわかりませんが、説明し過ぎな部分もあったかなという印象でした。どうとでも取れる、視聴者が想像すべき部分まで提示されているところは、私は必要ないと思いましたが、それによってほろっとくるヒューマンドラマになっているのかもしれませんね。
原作は全部読んではいないのですが、『どですかでん』と本作の間にあるような気がします。そこはかとなくユーモアは漂うのだけれど、全体としてはやはりシリアスで、読者に考えさせる余白のある小説です。

『おいハンサム!!2』

たぶん、前作と同じような感じでおもしろいんだろうなと思ったので、特に見なくてもいい気がしていました。が、つい見ちゃったので流れで完走してしまった笑
本作でも、三姉妹それぞれが男性との関係や自分の在り方についてぶちぶちとひとりごちながら悩み、淡々と生きる母と時々いいこと言う父に甘えながら、なんとなく答えを見つけていく。悩みの発端が日常のちょっとした違和感だったりするのが良くできているなあと思う。
意外と姉妹ってあんまり相談しあったりしないんだな、というのも含め結構リアルな家族像なのかも。お前たちいつまでいるんだ、なんて言われながらも、いくつになっても安心していられる実家があるのは幸せなことだよなあ笑
今回、次女里香に絡んで登場する原さんの存在はおもしろかった。藤原竜也さんが(抑え気味に)演じたというのもまたなんとも。
長女の由香を演じている木南晴夏さんは『9ボーダー』でも三姉妹の長女を演じていますが(そちらは第1話しか見ていない)、同じクールでこういうことってあまりないんじゃないでしょうか。

『95(キュウゴー)』

1995年にはすでに“若者”ではなかったし、若者だったとしても本作で描かれる世界とは無縁だっただろうな… と思いつつ、でもなぜか懐かしい気持ちでこの『95(キュウゴー)』を見ました。
『IWGP』は2000年の池袋、その5年前の渋谷を舞台にしたのが本作で、確かにそういう流れがあったなあと。まだ暴走族なんかもいたけどかなり減ってきていて、アメリカの多分L.A.あたりのカルチャーであるカラーギャングを真似たチーマーなる若者集団が渋谷あたりに発生し、敵対するチーマー同士の抗争だとかおやじ狩りだとかで荒れていたのが95年あたりで、その後渋谷が“浄化”されていくにつれ、チーマーたちの舞台が池袋に移っていった、みたいな感じだったかなあ、と。
その後彼らはどうなっていったのだろう? あ、この彼らというのは当時のチーマーがその後どんな大人に、ということじゃなくて、いわゆる“グレた”若者たちは、暴走族→チーマーという風に所属集団を変えていったわけだけれど、それを最後にこういった集団は形成されなくなったのだろうか? という疑問。
ドラマと全然関係ない話になってしまった笑
髙橋海人さんは文句なくQ(広重秋久)という役柄にぴったりでした。ただなんとなく生きている高校生、だけど地下鉄サリン事件に衝撃を受け、今の自分の生き方に疑問を持つ。高橋さんはこういう、弱い部分を持ったままある種の覚悟みたいなものを見せる、というような役柄をリアルに演じられる俳優だと改めて思いました。他の俳優もみな高校生として違和感なかった。現在から回想しているという構成も悪くなかったと思います。
ごく稀に、その言い方は当時はなかったなというセリフまわしがありました。同じ言葉でもイントネーションが違ったりするんですよね。が、仕方ないかもしれません。30年ってそういう変化を生じさせるくらいの年月なんですね。

『くるり〜誰が私と恋をした?〜』

記憶喪失ものか… と思いつつも見はじめたら、つい最後まで見てしまった。
生見愛瑠さんが可愛くて、3人の男性から想いを寄せられる状況に説得力がありました。
記憶喪失もの、とはいえ、一味違いました。もちろん過去を思い出したくはあるけれど、過去を思い出せない状態の今の自分が感じるまま、考えるままに、今の自分を構築していく。そうしていくうちに、過去の自分自体が“本当の自分”ではなかったのではないか、ということに気づいていく。
記憶喪失をきっかけに、リブートして過去の自分を取り戻すのではなく、今の自分が納得のいく自分を作り直して幸せになる。幸せを感じるには自己一致が大事、という意外にも深いテーマを軽やかに扱ったドラマでした。

『アンメット ある脳外科医の日記』

本作も記憶喪失だし、しかも病院ものか… とあまり気が進まなかったけれど、若葉竜也さんが出演するということで見はじめたところ、すっかり引き込まれました。回を重ねるごとにどんどん良くなり、第9話は特にすごかった。
事故以来、過去2年間の記憶を失って、しかも新しく記憶できないという記憶障害。毎日日記を書いては読み返し、前日までの復習をする… そんなことをずっと続けられるのか(毎日復習する量が増えていくのに)、手術をすれば失われた記憶(記憶できなかった部分も含めて)がいきなり戻るのか、などなど、医学的なことはわからないので、そういった点に関しては大きな疑問を持ってしまうけれど、それはまあ置いておいて、と思わせるほど、ドラマの作り方がよかった。最後の手術シーンは、手元などはまったく映っていないにも関わらず、プロフェッショナル感と緊迫感がすごくて、医療関係者の方々がどう思うかはわからないけれど、私には本当の手術のように感じるほどでした。
通常の連続ドラマではあまりないくらい顔のアップを多用したり、被写界深度を浅くしたり、大抵のドラマでは寄って撮りそうなところを引いて撮っていたり、結構な長回しをしたり、無音をうまく使ったりしていて、それらが皆効果的だったし、並みの作品にはしないというような気概を感じました。
若葉さんはもちろん期待通りだったし、主演の杉咲花さんをはじめキャストも皆よかった。事故のきっかけや、それにまつわるミステリーも、その引っ張り具合も良く(あれ?でも怪しい会長の話は結局どうなって、どこへ行っちゃったんだっけ?思い出せない…)最後まで興味深いドラマでした。
余談ですが、怪しい会長のシーンの中国趣味な意匠や下品な食べ方(酒匂芳さんの演技、いやらしさ全開ですごかったです)は、同じく今期のドラマ『Re:リベンジ-欲望の果てに-』の天童会長と通じるところがあって、大病院の会長ってみんなあんな感じなのかと勘違いしそうです笑

『滅相も無い』

加藤拓也さん監督・脚本の完全オリジナルSF群像劇。巨大な穴が現れ、そこに入ろうとする8人の男女が集う。穴に入る前に自らの人生を語るために(そうしなければならない設定だから)。
8人の会合シーンはロケーション撮影、それぞれの人生はスタジオセットで語られる。そこでの場面転換などは演劇的手法によっていて、登場人物は6人の俳優が約150役を演じ分けたとのこと。
私は演劇も好きなので、このスタイルがおもしろいと思いました。自分語りには飛躍もあるし、あくまでも主観だから、スタジオの最低限のセットで演じられるシーンが返ってリアルに迫ってくるというか、この部分を再現VTR的に映像で作るよりは格段にいい。
穴がなんであるかとか、穴に入ったらどうなるかとかは、実はどうでも良くて、結局おもしろいのは人間の人生で、だから穴はひとりひとりに人生を語らせる状況を作るための装置なのでしょう。これまでの人生とか、現在直面している現実を捨てて、今ここでない何処かへ行きたい人たちが、最後に語りたい何かを語る。そういう特殊な状況を作れるのが映画やドラマや演劇で、だから私は映画やドラマや演劇が好きなのだと改めて思います。
8人が語るどの話もおもしろかったし、演者も皆よかった。
演劇見たくなりました。

『燕は戻ってこない』

女子の貧困問題と代理母の問題に切り込んだ、桐野夏生さん原作『燕は戻ってこない』のドラマ化。原作は読んでいません。
いろんな意味でおもしろかった。
子どもとは一体誰に属するものなのか。親とはなんなのか。
ドラマの序盤では一番まともな人物に見えた、内田有紀さん演じる草桶悠子が、状況の変化に伴い、真顔でおかしなことを言える人物になっていく。子どもをめぐる問題はそれほどに心を大きく揺さぶるものなのでしょう。
石橋静河さん演じる理紀は、そもそもはお金目当てと、現実への失望(あるいは裕福な人たちへの意趣返しのような気持ちもあったかもしれない)で代理母の“ビジネス”を請け負った。でも彼女もまた、妊娠出産を経て、心に大きな変化が起きて、最後には、おそらくは困難の多い道を選ぶ。
軽い考えでイージーに行動する草桶基は、最初から最後まで一貫しておかしいとも言えるけれど、妊娠・出産に対する世の中のほとんどの男性の本質的なところを体現している気がします(いやいや、俺は違うよ、と思う方もいらっしゃるかも知れませんけれども)。そんな草桶を稲垣吾郎さんがものすごく自然に演じられています。
本作の結末を見て、感情を抜きにした妊娠(妊娠してから産むまでの期間としての“妊娠”)、出産というのはやはり相当に難しいことなんじゃないだろうか、と思う。しかし現実世界には、産んだ子どもをゴミ箱に捨てたりする人もいる… 。うーん。
子どもと親という関係性に、ある一つの決まった真実などないのではないだろうか、と思う。いずれにせよ、翻弄されるのは子ども。本作の子ども達はその後どうなっていくのでしょうか。

* * *

2024年春ドラマは、以上の8作品を完走しました。
タイプの違うよい作品に巡り会えたクールでした。制作に関わった方々に感謝です。

このほかチラ見、流し見をしていた作品も多々あります… 基本なにかを流しているのです笑
もしかして書いていなかったかも知れないですが『虎に翼』も見ていて、現在も継続中、『光る君へ』も継続しています。

最近、目が疲れて辛いのですが、ドラマ鑑賞はやめられない…
映画、ドラマ、演劇を観る専用の身体が一つ欲しい笑

もう夏ドラマも続々と始まる時期になりました。
ドラマ鑑賞生活は続く…

みなさまもよいご鑑賞を。

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