見出し画像

【日本ドラマ】『今ここにある危機とぼくの好感度について』

気になっていたのだけれど見逃していた本作が、NHKプラスで配信されていたので、見ることができました。

なぜ気になっていたかというと、映画の『新聞記者』(2019)を観ていたから。『新聞記者』は本作と大きなテーマが同じで、しかも同じような位置に立たされる役どころを松坂桃李さんが演じています。

共通する大きなテーマとは「権力側にとって不都合な事実の隠蔽」で、『新聞記者』では政治と報道の世界、本作では大学とその広報という異なる場を舞台としています。

シリアスな『新聞記者』と違って本作はコメディであり、結末もまた大きく違っています。前者は現状を、後者は希望を描いているということかもしれない。本作は、大学はやはり真実を追求する希望の場であってほしいという願いがこもった話になっているのだろうと思います。

社会に向かって不正を告発する人が、多くの場合女性であるのは、社会で男性が優遇されていることの裏返しでしょう。それは、男性が優遇されているから、女性が“嫉妬で”告発するということではない。男性はその優位性から降りることができずに口を閉じる、だから女性が言うしかないということ。告発しても碌な目に合わないことはわかっていても、しなければしないで結局碌な目に合いはしないから。

画像1

本作で事実と権力に挟まれる神崎真(松坂桃李)は、好感度だけを売りに世の中を渡ってきた。意識的にそうしてきた(それがわかる場面がある)、というところが重要で、だからこそ終盤にそれを翻す行動に出ることができる。これが「そもそもそういう男」であったら、長いものに巻かれまくって終わってしまうので、この設定は重要だと思う。

「松坂桃李はポンコツ役が似合う」ということが、最近の出演作からよく言われていますが、確かに、本作でもとてもいい味を出しています。コミカルな中に時折見せるシリアスな顔がすごく映えるのは、彼はどちらの領域においても、求められているものを読み取り、それを表現できる力があるからでしょう。

画像2

不正の事実を公表し真摯に対応する過程で死人が出たりしないような社会を目指すには、不正を公表する勇気を持つだけでなく、公表した者に不必要な矢を放ったりせず、間違いをおかした者が自らの間違いを認めて正すことを見守る寛容さが必要です。世の中で日々起こっていることをみると(それに、自分自身を顧みると)、そんな社会を実現することはまるで不可能なようにも思えますが、でも諦めたら終わりですよね。

そんなことを考えても考えなくても、楽しめる作品だと思います。
大学の理事会のメンツがすごい。笑


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集