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自分史 自業自得と時々外されちゃう梯子⑯

この記事は続編です。ここに至る経緯はこちら
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社会人時代編ダイジェスト(1700字)

・入社してからのギャップ
・裏切りと退社




きちんと然るべき機関で然るべき報いを受けたのでいうが、オービスを通過した時、法定速度を80kmもオーバーしていた。本当に、本当に人を巻き込まなくてよかった。この経験から今では危ない運転をしている車、特に商用車を見ると怒りよりも事故に遭わないでくれよ、と心配すると同時に追い込まれていた自分を重ねて見るようになった。顔を見ればだいたい分かってしまう。
社内で一人カラオケなのか、電話しているのかは分からないが、口が動いていればまだ大丈夫。真顔でしかも、負のオーラ(インチキ占い師みたいでチープな表現で使いたくないが)というか闇のオーラを纏っているのは本当に危険。僕には分かる。
オービスで取られた写真を見せてもらったが、僕は自分自身の表情を見て、正直「悍ましい」という感想を持った。真顔で無表情ではあるが、ぼーっとしてるようにはどう頑張っても見えない。僕自身、顔立ちは整っている方ではない自覚がある。しかし、今までしてきた変顔、ブサイク顔と比べても、ダントツで「酷い」表情をしていた。ぞっとした。背筋が凍った。という表現が正しいかもしれない。

しかし、恐ろしいことにオービスを光らてしまい、営業車の使用を禁止されてもなお、会社への忠誠心は変わらなかった。

僕は会社に戻り、すぐに会社のために何が出来るのかを考えた。しばらくは内勤になるだろう。他の営業マンが営業しやすい資料、ツールを作ろうと思い至った。生活はさらに過酷になったが、自分でも納得の資料、プレゼン内容が出来た。あとは先輩にも協力してもらい、ミーティングで時間を貰い、配布するだけ。
今まで営業活動に回していた分の時間を資料作成に充てたのだ。納得の出来である。結果、ミーティングではその資料は賞賛された。
「おう!この資料いいじゃねーか。他の支店にも回しておくけどいいよな?」支店長の反応に返したのは先輩だった。
「そのために作ったので、是非そうしてください。」
ミーティングの場で先輩は僕と目を合わせることはなかった。
ここで社内の風土を少し話しておくと、競争社会の縮図。弱肉強食。
5年目以上の先輩、係長、支店長などは、独立遊軍だ。知識も実力もある。しかし、それ以下は烏合の衆。寄り集まって社内で闘っていかなければ、食われる。しかし、そんな烏合の衆の中にも野心を抱く輩は多かった。その中での競争もある。
個人PCを社内に置いて帰るようなものなら、プライバシーは0だ。資料や情報は筒抜けとなる。足の引っ張り合いでは断じてない。純粋に高みを目指す者たちの戦いだ。それは分かっていた。聞くと独立遊軍クラスが若かったころから当たり前のように行われていた行為のようだ。しかし、一番親身に助言してくれていた先輩に裏切られるのは想像もしていなかった。

そこからは裏切った先輩から深夜2時から5時まで暴言、暴力を振るわれたり、実は同じように苦しみながら独立遊軍の地位を築いた優しい先輩に励まされたり、しながらも結局は出社するが怖くて会社の中に入れない状態になった。

僕は会社を辞めた。入社して1年4か月でのことである。
給料は高かったし、使う暇がなかったので貯金だけはある。しばらくはゆっくり過ごそう。そしてそれまでの反動で寝込むことが増えた。
無気力。
そんな中オービスを光らせた件で管轄の警察署へ向かうこととなった。オービスを光らせて、すぐに出頭するのではなく通知が来るのにだいぶラグがあるのだ。そこで、僕は悍ましいオーラを纏った自分自身の写真を見た。
なぜか分からないけれど初めて涙がこぼれた。

簡易裁判所で申し開きをさせてもらい、どのような環境に身を置いていたか、そして、今は会社を辞めたことを話した。それまで無事故無違反だったこともあって、恩赦を与えてもらったのだろう。幸いにも一発免許取り消しにはならなった。しかし、課されたペナルティは相当重かった。(あと罰金も)それでも、久しぶりに人の優しさに触れた気がした。

つづく

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自分史 自業自得と時々外されちゃう梯子

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