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編集後記(「1番近いイタリア」2025冬号)

※この記事は「1番近いイタリア」2025冬号からの抜粋です。

2024年、大晦日、ボローニャ。窓からはよく晴れた冬空が広がっている。年に一度、一番大きな行事のクリスマスが終わり、町は穏やかに年の暮れを待っていた。大通りに面したこの通りは、いつもなら騒がしい車のクラクションやバスのアナウンスも、今日ばかりは静まり返って、時折車が通る音だけがこだましていた。自身もまた然りで、賑やかな1年の暮れ、今はただ、静かに激動の一年の終わりを迎えようとしている。

先日、結婚式の10日後に式場に戻った。最後の精算をして、ワインを頂きながら、たわいもない話をする。フレスコ画と彫刻に囲まれた特別な空間。初めて訪れた時の高揚、会議に来るたびに感じた緊張、前日まで続いた荷物搬入、そして当日。目を閉じれば、1つ1つの場面、全員の顔が鮮やかに思い出され、幸せと、感謝と、寂しさと、涙が溢れて止まらなかった。こうして、人生の1ページが1つ、閉じられたのだった。金色に輝くページを心にしまって。そして今、力強く、新しいページを描く旅に出ようとしている。

先日、クリスマスイブのイブに、ジノリのお皿が割れた。その光景を目にした瞬間、それはもうショックというショックで、生きた心地がせず、言葉にもならず、ただ声の限り叫ぶしかなかった。このお皿は2021年、27歳のお誕生日に母からプレゼントされたもので、嬉しくて嬉しくて、あまりに大事すぎて、1週間に1度、オンライン料理教室の時にしか使わなかったくらい。イタリア留学が決まって、引っ越し荷物がいっぱいあるだろうに、このお皿をスーツケースに入れて、はるばるイタリアまで持ってきた。このお皿に自分が心を込めて作った料理が載る瞬間が、何よりも幸せな瞬間だった。それがほんの0.05秒の間に割れてしまった。1つの歴史に幕が降りた。私の元に来てくれて、料理に花を添えてくれて、楽しい食卓を作ってくれて、今まで本当にありがとう。涙を拭いて、悲しみを乗り越えて、これからもっと楽しい食卓を作れるように、一生懸命、強くなりたいと願いながら。2025年はどんな1年になるだろう。想像もできないけれど、きっと私らしい、私たちらしい輝きに満ちた1年になると信じて、筆を止める。

この「1番近いイタリア」もなんと20号!次号は5年目に突入。皆様の支えがあって、ここまで刊行を続けられました。これからも美味しさとドラマをお裾分けして、少しでも皆様の人生を豊かにできたらという思いで頑張ります。来号もお楽しみに!

※私が刊行する雑誌「1番近いイタリア」ご購読はこちらより。


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