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ウクライナ問題基本構図

〇「設問」とは「問題を作って出すこと」(広辞苑)。正しく設問すれば通常、正しい答えが得られるという。しかし、ウクライナ侵攻問題ではそうはいかない。設問はいろいろ考えられる。①なぜ(何の目的で)侵攻しているのか②その侵攻を日本として、どう受け止めるべきかー考え方として、また行動として(戦べきか否か)③戦争(「侵攻」と言っているが、ようするに「戦争」だ)はいつまで続くのか④ロシアは核兵器の使用をほのめかしている。本当に核戦争はあり得るのか?そして日本がそれにまきこまれることがあるのか?
 思わず?ばかリついて、紙面が汚くなるが、正直な気持なので、お許しいただきたい。
 
○最大の問題は、①のなぜこの戦争をしなくてはならないのか、ロシア以外の我々にはわからないことである。いや、ロシアを「ロシア国民」と考えるなら、ロシアにもわかっているのかどうか怪しい。2022年2月24日の「開戦」以来の新聞を繰ってみましたが、「解説」は様々あるものの、納得できる答に乏しい。
 
○2022年2月24日のウクライナ進攻のその日、ロシアのプーチン大統領は大企業幹部との会合で、「(戦争する以外の)ほかの選択肢はなかった」と述べ、ウクライナ侵攻を正当化しました。さらに、北大西洋条約機構(NATO)拡大などを念頭に、「将来の国の存続が不透明になるほどのリスクが生まれかねなかった」と述べました。
この言葉通り受け取ると、相手国が自国に脅威を与えているという理由で先制して仕掛ける戦争、 いわゆる「予防戦争」に踏み切った、と主張していることになります。しかし。、軍事的にはロシア程の大国が、比較すれば小国のウクライナに予防戦争を仕掛けるとは!
 
○たまたま読んでいた半藤一利さんの「昭和史残日録」によると、対米戦争に踏み切る際の首相経験者の8人が出席した重臣会議で、東條英機首相が「八紘一宇(世界は一つ、の意。戦争時、日本の海外進出を正当化するため使われた)」の理想を掲げて戦うと言うのに対し、若槻礼次郎元首相は、自存自衛のため戦うのならともかく、「理想のため国を滅ぼしてはならぬ」と開戦に反対しました。プーチン大統領の開戦理由は自存自衛風で、東條首相より説得力がありそうですが、現在の状況がウクライナ相手に自存自衛の戦争を全く必要としていないところが、立論の説得力に欠けるところです。
 
○つまり、開戦理由として、東條首相は、主観的に自存自衛を否定したのに対し、プーチン大統領は客観的に自存自衛を否定された、.と言えましょうか。
 
○プーチン大統領の言うことだけでは説得力がなく、なぜロシアが戦争を始めたのか、解説が必要になってくるわけです。戦争が始まった翌日の新聞から、記事は、「ロシアはなぜ戦争に踏み切ったのか」。「なぜ、ロシアは力ずくか」など「なぜ」のオンパレード。多すぎてとても紹介しきれません。そこで、私が読んだ中で、私が思いもつかなかった解説の論に絞って、紹介してみましょう。
 
○まず、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター長・岩下明裕教授にインタビュー(朝日新聞、2022年4月14日、一部要約)。
―ロシアはなぜ周辺国に力で踏み込むのか。
岩下教授「あの国にはミッション(使命)がある。自分たちは偉大である、偉大な民族である、責任があると。周りに対しても自分たちが導かなければけない、みたいな思い込みがある。帝政ロシア、共産党、ロシア連邦になってからも、基本は同じ」
 
○「ウクライナはNATOに入ろうなどと考えた。誤った西側の毒リンゴを食べたのだから解毒してやる、正しいスラブの仲間として抱擁したい、と言う気持ちでは」
―住宅や病院や学校を破壊していくのとは、全くつじつまが合いませんが。
 「解放するためには武力も辞さない」「ロシアの気分を代弁すれば、わが兄弟よ、なぜお前までが敵の陣営に入ろうとするのだ、ではないでしょうか。身内に背かれた憎しみを感じます」
 
○次は元東大副学長の、田中明彦政策研究大学院学長のインタビュー。世界はこのまま、冷戦に舞い戻るのか、聞いている(朝日新聞、2022年3月15日、一部要約)。
 田中学長「最近のプーチン氏の発言を見ていると、彼自身がロシアになってしまっている。これまでチェチェン、ジョージア、クリミアなどで軍を動かし、結果を出してきた。ここで一大決心をすれば今回もうまくいくと思ったんじゃないか。ギャンブルに勝ち続けてきた独裁者の最後の賭けですね」
「21世紀になっても一人の独裁者の暴走に多くの人が振り回されている」
―米国の衰退も影響か。
「衰退と言うより失敗ですね。イラク戦争とアフガニスタン戦争は失敗だった。米国内の経済格差も放置してきたために、世論が分断され、国力を十分発揮できない状態になっている」
 「バイデン氏の対ロ政策は『冷戦型』。『熱戦』にしてはいけない、という考え方が非常に強くあり、ロシアと米国、ロシアとNATOの直接対決を避けている。第3次世界大戦を回避するという意味があります。プーチン氏が自ら核兵器の存在を強調しているのは、米国の軍事介入を抑止するためです」
―冷戦に舞い戻る、と。
「30年以上前に戻ってしまったのかもしれません。ソ連版図を取り戻すことが大事だと考える独裁者に引きずり戻されてしまった」
 
「中庸時評」の字数を超えてしまったようです。この問題の続きは次号で##

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