足三里の取穴・作用と刺鍼テクニック
横浜にて鍼灸院を開業しております太田といいます。
専門学校で講師もしております。よろしくお願いいたします(^-^)
足三里について書いていきます。まずは取穴から確認していきましょう。
〇足三里の取穴
教科書では「下腿前面、犢鼻と解渓を結ぶ線上、犢鼻の下3寸」とあります。
私は犢鼻からは取りません。示指の第一関節(DIP)を脛骨の最も高いところに当て、下から擦り上がっていき、止まる場所(脛骨粗面)を足三里の高さとします。
その指が止まった場所の指先を足三里としています。(DIPから指先を脛骨から足三里までの距離とする)
犢鼻からの同身寸法ではズレてしまいますが、これなら個体差に対応できます。
また、足三里の高さを確認する上では、陽陵泉と陰陵泉の場所を把握することも重要です。
陽陵泉は足三里よりも少し高い場所に取穴します。
陰陵泉は足三里とほぼ同じ高さになります。
この辺りの経穴との位置関係を把握しておくと、取穴部位が大きくズレることはないでしょう。
しっかりと前脛骨筋を把握し、筋中に鍼を入れていきます。学生を見ていると、脛骨から離れすぎてしまう(胆経の方へズレてしまう)人が多いように感じます。
〇足三里の作用
足三里の作用(効能・穴性)は、補中益気・和胃・消食導滞などと言われます。
これは説明不要ですが、脾胃の治療をする上で非常に重要なツボになります。
特に胃の下合穴、土経の土穴というその特性から、脾胃を補う作用に優れると言われます。
また、足三里には健脚の作用もあると言われています。
三里に灸を据えることで、丈夫な足を保つといわれます。
痿証(肢体の筋肉が弛緩・弱化して萎縮してしまう状態)でも重要穴として位置づけられています。
〇足三里の経穴反応
足三里に限らず、虚証の反応は、発汗・弛緩・陥凹として現れやすいです。実証の反応は緊張・硬結・圧痛を目安にします。
脾胃が虚弱な場合には足三里の弛緩や陥凹が現れます。胃の位置からすると、やはり左側の方がより顕著な反応が現れやすいと感じます。
逆に食滞などで脾胃に負担がかかっている場合には、緊張が出ていることも珍しくありません。
自分の診立てと経穴反応が一致していることが重要です。
例えば、脾気虚だ!と思って足三里を触ったら、緊張している。。。となった時にどう考えるか。
脾気虚じゃない⁉と考えるのは早計です。でも、足三里の反応は嘘ではありません。問診では嘘はつけますが、カラダの反応は嘘をつくことができません。
脾気虚を治療したいのであれば、他の虚証の反応が出ているツボを探してください。
それは陰陵泉かもしれませんし、太白かもしれませんし、中脘かもしれません。
なかなか難しいと思いますが、個人的にはより反応が出ている経穴に刺激を入れた方が良く効くんだろうなと考えています。
〇足三里の刺鍼テクニック
某有名な鍼灸師が「足三里の補法は難しい」と仰っていましたが、本当にその通りだと思います。
誰もが経験があると思います。
足三里に刺鍼して前脛骨筋が単収縮してしまうことを。あれは瀉法だと思ってください。
もちろん、緊張の反応が出ている方が単収縮が起こりやすくなります。
瀉法で使いたければ、あえて筋肉をピクっとさせてください。
その場合は比較的浅刺で、固い場所で上手く雀啄をすることで誘発できます。
過去には足三里に刺鍼して「内臓がもっていかれる」と表現された方がいます。明らかに瀉法に傾いた刺激だ経ったのだと思います(笑)
逆に補法の場合は弛緩している部位にスーッと抵抗なく入れていきます。
深さは5分~1寸程度。
あまり抵抗の無い場所で補法の手技をして気を集めましょう。
しっかりと虚している場所に鍼が届いていれば、置鍼しているだけでも気が集まってくれるでしょう。
そんな補瀉を使い分ける自信がない!!という人はお灸をしましょう。
刺鍼が下手な人が足三里に鍼をすると、瀉法になる可能性が高いです。
そんな場合はお灸しちゃってください。
脾気虚など胃腸が弱っている場合は、温めて間違いありません。
足三里を温めることで温補脾胃の効果が期待できるでしょう。
また別の有名な先生は、「足三里は瀉法で使うべきでない」と仰っていましたが、私はそうは思いません。
確かに脾気虚の方に足三里の瀉法をするのは、リスクはあると思います。
何も考えずに中国鍼で強い刺激を加えれば、瀉法になる可能性が高いので、更にリスクは高まるでしょう。
しかし上記の通り、実の経穴反応が出ていれば全く問題ないと考えます。
特に一過性の食滞の場合に、実の反応が出ていれば使う時だと思います。虚を助長すると思えば、他の虚の反応が出ているツボでカバーすれば良いと思います。
※足三里の取穴・刺鍼は膝枕を入れた方が良いです。
〇まとめ
足三里は臨床上非常に良く用いる経穴です。
胃腸が弱い人が多いとされる日本では最も使われる経穴といっても過言ではないでしょう。
学生時代も最も練習をする経穴ですが、意外と取穴部位がズレやすいツボです。
他のツボとの位置関係をしっかりと把握し、正確な取穴を心掛けましょう。
刺鍼においては、雑に刺すと瀉法になりがちです。
胃腸を強めようと思って、逆に弱めてしまうことにもなりかねません。
丁寧な刺鍼とお灸でしっかりと補瀉を使い分けましょう。
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