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#282【劇評・賛】『毛虫のボロ』
今日もお読みくださってありがとうございます!
まだ年末に見たもろもろのレビューできてないけど、とりあえず新年一発目に見た作品のレビューします!
米津玄師さんも絶賛していた、ジブリの森のえいが『毛虫のボロ』です。
米津さんが語っていた朝日のシーンも見てきました。
タグ付けで、「ジブリ」を含むタグがありすぎてゲシュタルト崩壊しております。
閑話休題。
この映画は、だいぶ前から長編アニメーションの企画としてあって、鈴木敏夫プロデューサーが説得して『もののけ姫』にしたそうですね。
(『もののけ姫はこうしてうまれた』から)
1ミリに満たない毛虫の目線で見た世界
何もない世界にペキペキと入る一般の線。
毛虫のボロのたまごの殻が割れる瞬間を、内側から描くところから映画は始まります。
たまごの殻から顔を出してみると、ナウシカの腐海のような、巨大な植物が林立し、謎の魚がくうを泳ぐ世界が広がっています。
「生まれて初めて」の感慨
ボロは、空中をただよう透明なかたまりに惹かれて、匂いを嗅ぎます。
なんだかわからないけど、食う。
生き物にあらかじめプログラムされていること。
自分が何をしているのかわからなくてもできること。
生まれてはじめて、ものを食う感慨の表情。
絵柄は毛虫でも、表情が豊かに見える。
そこへ日の出がきます。
毛の一本一本が光にすける、反射する。
生まれて初めて、朝の陽光を見る衝撃。
液体のような、陽光の表現。
眩しい!と目を瞑るボロに、光と水とは同じなのかもしれない、なんて思ったりしました。
また、お尻から糸を出して、下へ降りてゆくシーン。
どうしてそんなことができるのか自分でもわからないけど、初めてやってみるし、実際やれる、みたいな感じがよく伝わってきて、すごい表現だと思いました。
食の本質はカオナシ
もりもりとした葉の厚み、食い違って貪り食うボロ。
だんだん勢いがついて「食うこと」にのっとられていくようすに迫力がある。
食うことに執着する六本の手が、貪るカオナシのように生々しい動き。
食の本質はカオナシであった。
排泄を、面白おかしく描かない
兄貴分毛虫たちが排泄するのを見て、ボロも初めて、自動的に、排泄する。
その、自分でもなんだかわかってないけど、ん?って思ってる間に、ぽこんと排泄物が出てくる感じが、新鮮でした。SPY×FAMILYクソ映画のうんこの神とは大違いだよ……←しつこい
でも、排泄シーンのうんこ!みたいな擬音(タモリ)はちょっと笑っちゃいました。
食う側から排泄する。
排泄と食べ物が同じ場にある。
それも、生きるということの本質なんだろうなぁと思わされます。
その他、この映画における排泄シーンについては、下記記事でも書きましたのでよかったら ↓
表情豊かな虫の世界
そこへ、ロボットのようなカリウドバチが襲来。
まるまると太った毛虫からねらわれていきます。
怯える毛虫の手が、組まれて拝んでる……
コミカルな表現。
ボロは小さすぎて目も向けられないことに、ちょっと安堵。
子どもに優しい。
逃げ惑う毛虫の群れは、ナウシカの王蟲やもののけ姫の猪神たちのようでした。
こういうの描くの、好きなんだろうな。
そのほか、ダンゴムシ、クマンバチ、カマキリなど、たくさんの虫が出てきます。
食べられないものもある
カリウドバチが毛虫を二匹連れ去って、多くの毛虫が退散したあと、ボロボロになったボロギクに残ったボロは、茎をかじり、おえっと吐き出します。
その茎は、アブラムシに中を食われて腐っていたのでした。
中から、ボロより小さなアブラムシがワラワラとわいてきます。
そのアブラムシたちが怒っているように見えるのも微笑ましい。
人間が出てくると安心
映画終盤、本当に脇役としてちょっとだけ人間が出てきます。
宮崎監督の妻さんは、「人間が出てきて安心した」と言ったそうです。
ちょっとわかる笑
タモリの声
本作は、効果音もセリフもなく、音楽は最後に少しあるだけで、あとはすべて、タモリの声で構成されています。
去年初めて見た時は違和感があったけど、パンフレットに宮崎監督が「タモリさんの芸が天才的で」みたいな話をしているのが載っていて、今回は楽しめました。
上に書いた、「うんこ!」みたいな擬音とか絶対わざとやってそう……笑
また、人間の女の子に、葉っぱの上に乗せられておっことされるボロが「はらほろひれ……」みたいに言うのも面白かった。
生まれたての毛虫なのにおっさんくさかったけど。
映画のラストは、咲いたばかりの若々しい生きているボロギクに、ボロがたどり着きます。タモリ「ヘッヘーイ」
絵柄も声も、ウェーイ!って感じがよく出ていてほっこりしたラストでした。
1月いっぱい三鷹の森ジブリ美術館で見られます。
また、時期はわかりませんがジブリパークでも上映してたと思います。
機会があれば、ぜひ!