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#292【劇評・絶賛】『インサイドヘッド2』(2/3)

今日もお読みくださってありがとうございます!

な・な・なんと、このnote、総PVが10万を越えました……!!じーん……。
読んでくださるみなさまのおかげです!ありがとうございます!!


先を見越して今の感情を抑圧する

感情を抑圧するライリー

ライリーの旧来の感情、ヨロコビ、カナシミ、イカリ、ムカムカ、ビビリの5人は、シンパイによって閉じ込められたあと、「ライリーの秘密を保管する場所」に送致されてしまいます。

ビビリ「ぼくらは秘密じゃない!」
看守1「ヘッヘ、ほらきた、『ぼくらは秘密じゃない』大きな勘違いだ」
看守2「初めて聞いたな」
(看守ふたり、瓶詰の5人を閉じ込めて笑いながら立ち去っていく)
ビビリ「まさに ”抑圧された感情” だ!」

そうよなあ、自分の今の生の感情って、未来や社会を見越して隠す(=秘密)のが大人のふるまいとされているよな……。
それに対して、抑圧された感情たちはどうにかして自分たちの発露を見出そうと奮闘する。

……いやあ、エンタテイメント作品で人間の思春期の成長の説明するとかほんっとうにすごい。

ライリーの秘密が感情たちを救う

この状況を救ってくれるのが、個性豊かな「ライリーの秘密」たちです。

  • 「ブルーフィ」
    ライリーが昔好きだった、そして今も密かに好きである子ども向けアニメのキャラクター。四次元ポケットのような魔法道具を持つ2次元キャラ。

  • 「ランス・スラッシュブレード」
    今日のタイトル画像。ブルーフィと同じくライリーが今も密かに好きであるゲームキャラクター。FF7のクラウドみたいに大きな剣を背負った長髪の優男で、暗い過去に呪われているらしく、やたらに芝居がかった台詞を言いたがる。必殺技が劇的にしょぼい。

  • 「ライリーの暗い秘密」
    暗闇に身を隠し、身体が大きすぎて全貌が見えない。うなるだけでほとんど言葉は発さない。

「ライリーの暗い秘密」はとんでもない力を持ち、拳ひとつで瓶を破壊し感情5人を逃がします。けれど、逃がした後も自分は「まだそのときではない」と「ライリーの秘密を保管する場所」にとどまります。

この「秘密」たちが、ビジュアルもその動き方も、三者三様コミカルでおもしろい。
ライリーの人生的にはかなりシリアスな局面であるのに、笑えるパートとして作ってくれるのがホッとします。
ほんとすごいよね、ピクサー。

思春期あるある再放送地獄

一方司令部ではシンパイのコントロールのもと、あこがれの高校生たちのグループに入ることができたライリー。

でもこのシーン、多くの大人にとっては思春期あるある(しかも黒歴史)再放送地獄で、観ているのが結構辛かった。
ライムスター宇多丸さんもアトロクで言ってた気がする……。

緊張して歩くときの手の振り方もわからなくなり仕方なくポケットに手を突っ込んで歩いたり、好きな歌手を聞かれて答えたら「わたしも中学のときハマってた」と言われてパニックになったり。

それまで無関心だったダリィが急に「この時を待っていた」と猛然と進み出て、「だるそうに見せてかっこつけてはぐらかす」という思春期的な反応を繰り出します。
でもこのとき、本心では大好きなバンドを好きではないように語ったがために、ライリーの頭の中では「皮肉の裂け目」という崖が生まれます。この裂け目の向こう岸にいる人たちの声は、「皮肉」として届いてしまうという恐ろしい断崖です。(映画でのここの表現巧みなのでぜひ見てほしい)

ぐうぜんこの「皮肉の裂け目」に居合わせたヨロコビたち。
ライリーの変化に戸惑い、怒り、焦り、落ち込みます。

ムカムカ「まるで知らない場所にいるみたいよ」

ヨロコビ「シンパイのいうとおり、ライリーにはわたしたちなんかよりシンパイたちのほうが必要。それって辛い。すごくつらい。」

カナシミとハズカシ、ふたたび

この局面を打開する糸口になるのはやはりカナシミとハズカシでした。
ヨロコビたちと別れ、なんとか司令部にひとりもぐりこんだカナシミ。マニュアルを読み漁っているところをハズカシに見つかってしまいます。

ハズカシは、このカナシミを見逃し、むしろシンパイたちに見つからないように隠してやります。

冒頭来ずっとこの二人の関係性は印象的に描かれてきましたが、ここが一番山場な気がする。
また、みんながみんな自分なりに、ライリーのために、状況をよりよくしたい、という点で一致していることが表現される場面だと思います。

わたしの脳みその中にも、わたしのために必死で頑張る感情たちがいるのかしら……そう思うだけで心強い気がします。

不安で眠れないライリーの頭の中

ヨロコビたちは、「イマジネーションランド」にたどり着きます。
ここはライリーが、想像力を使って楽しい想像をしてきた場所。
……のはずが、いまや、シンパイに使役された脳内スタッフたちが、「どれだけ最悪の事態を想像できるか」を競わされる場所になってしまっていました。

それがアニメーションスタジオのようになっているのがピクサーらしくておもしろい!

イカリ「シンパイがみんなを机につなぎとめて悪夢を描かせてる!」

アニメーターが書いた「悪い想像」をシンパイがジャッジし、合格したものはライリーに見せます。
シンパイの主観的合理性としては、「最悪の事態を想定して心の準備をしておくため」ひいてはライリーのためを思っての行動なのですが、ライリーは悪い想像で眠れない事態に。

ああああ、悪いことばっかり考えちゃうとき、ある!
不安で眠れないときの頭の中って、こうなってるのかあ。

わたしがハっとさせられたのはヨロコビの行動です。

ヨロコビ「こんなことさせておいたらダメ!何とかして止めないと」

ヨロコビたちは脳内スタッフにまぎれて「前向きないい想像」のアニメを描き、司令部のシンパイに提出していきます。
「前向きないい想像」に憤慨するシンパイ。

ここでもハズカシがけっこういい仕事をしていて、シンパイの目を盗んでは「前向きないい想像」をライリーに見せます。
安心して眠れそうな顔をするライリー。
結局、ヨロコビに共感したアニメーターたちは、絵を(想像を)描くのをやめてマクラ投げを始め、ライリーは眠りにつくのでした。

次に不安で眠れない日があったら、この光景を思い出したら、ちょっとはリラックスできるかも。

ライリー、コーチの部屋に忍び込む……?!

シンパイとイイナーに突き動かされたライリーは、自分への評価を知るためにコーチの部屋に忍び込み、コーチの閻魔帳(各選手について書かれた秘密のノート)を覗き見ようとします。

そうそう、ここではシンパイだけでなくイイナーも原動力になっているのが特徴的でした。ちなみにダリィはいつもどおり寝っ転がり、ハズカシは見ているだけです。

旧来の感情たちは戸惑います。

カナシミ「だめだよ、ライリー」
イカリ「ライリーはそんな子じゃない!」

ノートを手にとっては見たものの、開くことができず泣きだすライリー。
ダリィの持っていたスマホアプリをこっそり奪ったカナシミが、操作盤を使ってライリーを止めたのでした。
ここでは、ハズカシも、「見ずにすんで良かった」というような反応をしています。

結局、カナシミはシンパイに見つかって縛り上げられてしまいます。
(シンパイって結構暴力的でエキセントリック)。

カナシミ「こんなのライリーらしくない」
シンパイ「大事なのはこれまでのライリーらしさではなく、これからどんなライリーになるかなんだよ」

シンパイが暴走したライリーはノートを盗み見てしまうのか?!

次回に続きます!

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