#推薦図書 『島へ免許を取りに行く』
普段なかなか本を他人におすすめする機会がないが、ひじょうに心動かされる作品だったので「熱烈に」紹介したい(読み進めているうちに最後のページまでたどり着いてしまったくらいにはおすすめ)。
星野博美『島へ免許を取りに行く』(集英社文庫、2012年、http://www.shueisha-int.co.jp/archives/2395 )
これを読んだら、舞台となった「ごとう自動車学校」で免許が取りたくなった( https://www.ds-gotoo.com/ )(結局、普通免許は地元の自動車学校で取ることになってしまったのが悔やまれるのだが)。
当時40代であった、合宿仲間である若者や島の人々との出会いはもちろんのこと、島の歴史や島民の暮らしにも話題が及んでいる。離島への移住を考えている人にも、有意義な内容となっているのではないか。詳しい内容はぜひ手にとって確かめてほしい。
ほんの少しだけ、印象的だった部分を紹介する。合宿仲間の一人に「オギクボさん」(相模原出身荻窪在住)という人物が登場する。この人は、島への愛着が全く持てないのだった。世の中とは実に奇妙なもので、多様な価値観をもった人々が存在している。そういうものだ。「オギクボさん」は、エッセイの中の一登場人物にとどまらない。身近にいる「オギクボさん」に対して自分がどのように振る舞っているのかが問われているように思われる。この人はこの人なりの考えがあって島にやって来たのだから、わたしたちにそれを非難したり否定したりする権利はない。たとえどんなに価値観に共感できなかったとしても。
ただおもしろいだけではない。自分に置き換えて考えることのできる作品でもあると思われる。秋の夜長に、ぴったりの作品かもしれない。
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