"不便"によってコミュニケーションと助け合いが生まれる -五島列島リモートワーク実験3日目-
五島列島リモートワーク実験中は、参加者がいくつかのバンガローに分かれて滞在をしていた。
バンガローの目の前は海!
朝のお散歩も、仕事の休憩もふらっと海辺にいける。
そのかわり町からはすこし離れた場所で、外食するなら車で5分、自転車で10分くらいの町まで出かける必要がある。
我が家は子連れだったこともあり、食事は主にバンガローで自炊をすることにした。
初日、一緒にチェックインしたグループのメンバーと車で買い出し。お米や、おしょうゆ、塩、砂糖、油の調味料、サランラップなどを買い込んだ。
2日目の朝。バンガローの扉をコンコンと叩く音がする。
開けてみると「油としょうゆ分けてもらっていいですか?」と、部屋に備え付けの湯飲みをふたつ持った同じグループのメンバーの姿。どうぞどうぞとおすそ分け。
滞在期間中、調味料だけでなくそれぞれのおかずをシェアしながら一緒に朝食を食べたり、お昼に五島うどんゆでるから一緒に食べません?と誘われて仕事の合間に一緒にご飯を食べたり。毎日平日とは思えない不思議な感覚だった。
自分の変化に驚いたのは3日目。
せっかく家族で行くのだから息子にも島を楽しんでほしい。そう思ってに行く前、息子に島で何をしたい?そう聞いたら「花火と釣り!」と返事が帰ってきた。
しかし、1日目、2日目と近くのお店で花火を探してみるもまだ置いてないという答え。花火を楽しみにしていた息子はがっかりしていた。
そんなとき、車で30分くらいの場所にショッピングモールがあることが分かり花火を探しに行こうかと夫と相談していたら、プロジェクトの主な連絡手段だったslackでそのお店に行く人がいるようだ。
「もし花火があったら買ってきてくれませんか?」そう聞いてみたら、五島の市役所の方たちが即レスで「ここならあるかも!」「ここに売ってましたよ!」とお店の情報をくれる。
そしてちょうど近くにいるから買いに行きますよ!という人が現れて、あれよあれよという間に息子は無事に花火をゲットすることができた。ここまでの時間はたぶん15分くらい。
花火がほしいというのは、我が家のとてもプライベートな理由だった。
行こうと思えば、自分たちで探しにいき、購入することもできた。
だけど、東京にいるときには信じられないくらい気軽にヘルプを出すことができて、そこに気持ちよく応えてくれる人がいて、「ありがとう」と思いながら大人と子どもみんなで一緒に花火を楽しんだ。
東京に比べたら島は圧倒的に不便だ。
お店は夕方になったらしまってしまうし、大きなお店に行くには時間がかかる。車がなければ移動は難しい。
だからこそ、自分ひとりでなにかを完結することは難しい。
自然とシェアをし、声を掛け合い助け合い、お互いさまだからこそヘルプが出しやすくなっていった。
結果的に一緒に滞在していたメンバーとは、みんながほぼ初対面にも関わらず学生時代からの友人のような気安さやがうまれたのだ。
コミュニケーションはエネルギーも時間もかかる。
とくに子育てがはじまってからの東京での生活は、朝起きてから寝るまでほんとうにパツパツでギリギリで余裕がない。
いろんなことを省エネで時短ですむように生活をデザインしてなんとか生活が回っている。ほとんどのものはネットで注文してすぐに届くし、24時間やってるコンビニも近くにある。それはとても便利だ。
だけど島で不便だからこそコミュニケーションが増えたことを通して、通勤がなくなったすこしの時間の余裕や東京とはちがうスピード感の中でうまれるすこしの気持ちの余裕。
そういうものがあれば、手間や時間がかかるコミュニケーションも楽しめるのだなぁと感じた。