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世間知らずの転職活動・フリー編 その23

あり得ない金額での受注のことを聞き、混沌としたプロジェクトの理由がわかったような気がした。そして、プロジェクトの体制見直しとともに今までいた人と新しい人で人員も入れ替わりが激しくなっていくのだった。

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稼働が下がる?

新しい体制になって、いわゆる炎上プロジェクトから、少し忙しいプロジェクトになってきたように感じていた。とはいえ、納期が厳しいのは間違いなく、Fシステム社の社員たちは普通にホテルに詰めていたから、炎上していない、とは言いづらい部分もある。

ただ、少なくとも私や大川さんたち、外部のエンジニアは稼働が下がっていた。

我々、外部のエンジニアたちは1ヶ月あたり、140時間〜180時間でいくら?という単価で月ごとにもらえる金額が決まっている。そして稼働時間によって、例えば180時間を超えたら超過金額として追加、140時間を下回ったら減額されるのだ。

例として、あるエンジニアが月単価63万円で営業に出されていて、プロジェクトに参画したとしよう。このエンジニアが1ヶ月の稼働が140時間〜180時間で働いていれば、エンジニアの所属している会社は、上位の会社から63万円受け取り、売り上げとなる。

仮にこのエンジニアが190時間働いた場合は、190時間ー180時間で10時間超過、時給が63万÷180時間=3,500円となるので、超過10時間をかけて10時間×3,500円=35,000円、63万円+3.5万円=66万5千円がその月の売り上げとなるのだ。

逆に、130時間しか働かなかった場合、10時間マイナスなので、63万円を140時間で割り1時間あたり4,500円のマイナスとなり、10時間で45,000円、63万円から差し引いてその月は58万5千円となる。超過分より減額分の方が時給が高くなるのだ。

この例のエンジニアの場合、63万円がベース金額となる。
ベース金額は、その人のスキルや経験、プロジェクトの予算等で変わってくるので、SEのAさんは80万円、PGのBさんは55万と変わってくる。

また、同じSEのAさんでも、プロジェクトの予算や、商流の深さによって、Xプロジェクトでは100万円もらって、Yプロジェクトでは120万円もらえる、ということもあるので、より条件のいいプロジェクトに参画できるように考えている。

会社間での例としてあげたが、個人事業主の場合も、同じような計算で月額の単価が変わってくる。私の場合を考えると、例で出したベース金額の部分、63万円をを35万円に置き換えて考えてもらうといいと思う。

スキルのあるエンジニアで個人事業主をやっていれば、最低これくらい、という自分の単価を決めて提案ができるが、逆にスキルや経験が少ないと、足元を見られることも多いだろう。今回の私はまさにそのパターンと言えるだろう。

今で言うSES(システムエンジニアリングサービス)であるが、当時はそんな洒落た呼ばれ方もしてなかった(はず)。スキルシート上の言語や経験だけで中身も分からずマッチングだけするブローカー的な人が多かったし、このプロジェクトでもそうだった。

そのような状況なので、プロジェクトの体制立て直しとともに、我々、外部のエンジニアの稼働を、ベースの時間内に可能な限り抑える必要があったのだ。

とはいえ、納期近くになると、それも段々と崩れていくのだが。。。

偏りのイボ

小森:「あ、田中さん、どうしたんですか?それ?」

元JCLリーダーの小森さんの大きな声が部屋中に響き渡った。

田中:「いやー、朝起きて鏡見たらなんかできてて・・・」

小森:「すごい。それ、お釈迦様みたい。」

田中:「笑 ちょっと抜けて病院にいってくるよ。」

リーダーは相変わらず失礼な奴だ。

経費サブシステムの責任者の田中さん。もともと林田チームのサブマネージャーであるから、単にサブシステムのことだけをやっているわけではないと思うが、ここ数週間はホテル住まいだという。

その田中さんが今日、出社してきたら眉の間に大きなイボのようなものができていた。病院に行って、出来物自体は悪いものではないということだったが、過労によるストレスでできたんじゃないか・・・と言われたらしい。

やはり、Fシステムの社員への稼働の偏りがでてきているのは間違いなかった。とはいえ、仕様の部分をFシステムで抑えておかないと、結局、旧プロジェクトと同じことを繰り返すだけだから、もどかしい。

旧プロジェクトから携わっている、山崎さん、石山さんは、仕様が決まった経緯なども分かっているから、何か発生しても対応がしやすい。一方、林田チームとして後から参画したメンバーは、仕様が決まった経緯を全く知らない。

だから、ひとつひとつ、何か問題になったり、解決するためには、一度、立ち止まって、そうなっている経緯を確認しないと、決定が難しい場面が多いのだ。特に今回は8割型システムとしては完成していて、問題となっている部分を洗い出して解決する必要があるから、ほとんどがそのようなものであった。

結果、各サブシステムの責任者たちは、SE/PGメンバーと具体的な動作を確認しながら、山崎さん、石山さんに、仕様を確認し、そして決定するという二度手間なような対応をせざるを得なく、余計に時間がかかっていたのだ。

まぁ、経費サブシステムはリーダーが足をひっぱている感もなくはなかったが。。。

久しぶりの出社

そして、一方の人員管理プロジェクトは井川さんが1人で試験を進めていた。JCLは私も手伝ったが、規模がそれほど大きくないため、それほど手をとられることはなかった。

井川:「やっと、来たよ。この男は。」

町田:「いやー、わりぃね。体調が悪くてさ。」

町田さんが久しぶりに出社してきた。
ニカっと笑ったその口の中には、前歯があった。

町田:「うん。これね。歯医者で作ってもらったの。前歯。結構ね高かったんだよ。」

12月で人員管理プロジェクトが終わることを心配していた我々の心配をよそに、町田さんはいつものようにひょうひょうと話し始めた。

町田:「大川くん、あれでしょ。飯田専務。来週かな?会うのって。」

大川:「あ、そうです。場所は決まったらお伝えするので、お願いします。」

町田:「うんうん。」

町田さんはいつものように笑って答えた。

町田遊軍は解散し、プロジェクトも新しい体制になってからはTシステムも町田さんもプロジェクトの打ち合わせには参加していない。立花さんの姿も見ることが少なくなった。

町田さんは、相変わらずの様子で仕事をしているが、人員管理プロジェクトがリリースされた後、町田さんはどうなるんだろうか。お世話になっていたから自然と心配してしまう。

Tシステムの若手メンバーもほとんど目にすることがなくなった。その中で薩田さんだけは1人出社して、細々とした雑務をこなしていた。町田さんがいなくても、Fシステムの社員の方々のサポートをしっかりとこなしていたのだ。

「次の仕事どうしようかな?」とか言いながらもフットワーク軽く動いていた。特に仕事を探しているように見えない様子に、しっかりしているのか、どうなのか、少し不思議な感じもしたが、12月末のリリースに向けて、少しずつ稼働も上がっていくのであった。

つづく

※この物語は経験をベースにしたセミフィクションです。

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