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世間知らずの転職活動・フリー編 その29

経費サブシステムの試験で止まり、一時はどうなるかと思われた結合試験。フタを開けてみればリーダーの凡ミスだったため、なんとか、初日に試験を終えることができた。さて、二日目。結合試験はうまく進むだろうか。

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周知からのスタート

2日目は1日目の経費サブシステムの試験結果のデータを元に、残りのサブシステムを実行する。昨日、最終的にデータの確認を田中さんと角川さんで行っているから、入力データとしては問題はないだろう。

しかし、昨日の失敗・・・実行環境の異なるJCLを選んでしまったミスが今日は起こらないように、朝一で田中さんから周知があった。

田中:「えー、昨日は一部の方にご迷惑をおかけしました。知らない方もいるかとは思いますが、経費サブシステムでJCLが止まってしまい・・・、あやうく試験がストップするところでした。」

赤井:「お、リーダー、なにかやったな?」

事情をよく知らない赤井さんが、ニヤニヤしながらリーダーに茶々を入れる。
うん、赤井さん、間違ってないところが怖い。

田中:「JCLの件ですが、回覧でも回っていたかと思いますが、今回の環境のJCLがありますので、取り違えないように、今日は再度確認した上で、各サブシステムは試験に入ってください。」

赤井:「ほら!やっぱりリーダー」

大川:「赤井さん、あんまり言いすぎるとリーダー拗ねちゃうから・・・」

小森:「拗ねないよ!」

全員:爆笑!!!

朝から、みんなリーダーに笑わせてもらって2日目の試験がスタートした。

まぁ、リーダーはバツが悪そうだったけど・・・仕方ない。

試験のスタート

まずは、課金サブシステム、赤井さんと大川さん、責任者はFシステムの服部さんのところからスタートだ。課金サブシステムの出力データを元に、請求、支払の各サブシステムが実行され、最終的に連携サブシステムが実行される。

今回は、プロジェクト内の試験ということで、連携先の会社との連携は行わず、出力されたデータの確認までであるが、ここまで無事実行できれば、予定通り今日で完了となる。

まずは、大川さんが昨日の経費サブシステムの出力データを入力として、課金サブシステムのJCLを実行し始めた。

私:『大丈夫?ライブラリあってる?』

大川:「大丈夫だよ(笑)リーダーとは違う。」

私:『うん。よかった(笑)』

課金サブシステムは、元から品質は良かったはずだから、今日は問題なく動くだろう。大川さんが動かしていれば、JCLも大きく間違えることもない。

ただ、こういうシステムの試験、うまく動いていないプログラムほど、何度も何度も繰り返し試験を行い、品質が良いと思っているプログラムは一回で試験をパスしてしまうだけに、後になってバグが見つかったりすることがある。

「まぁ、そんなことは滅多にないけど・・・」と、思いながら試験を見守ることにした。何かあったときに対処できるようにスタンばっていればいいだけだ。

水原さんを含め、我々JCLチームは、今日は出番はないだろう。

契約はどうする?

午前中いっぱいで課金サブシステムの処理は無事終了した。

大川:「ふぅ〜。とりあえず、実行は終わりました!服部さん、赤井さん、確認はお願いしますね。」

服部:「了解!すぐ確認するよ!」

ほぼ、予定通りに進んでいる。このままいけば、今日は順調に終わるかもしれない。みんなの実行状況を待つだけしかない状況だが、昨日と違って、今日はトラブルがないような気がしてくるから、不思議だ。

ブーン、ブーン

そんなタイミングで、ポケットの中の携帯が震えた。Z社の木本さんからだった。

木本:「佐藤さん、お疲れ様です。忙しいかな?」

私:『いえ、大丈夫ですよ』

木本:「来週、何曜日にしようか?契約の件の話」

私:『そうですね。今、試験の真っ最中なんですが、問題がなければ、月曜日でも、火曜日でもどちらでも大丈夫だと思います。』

木本:「そう。じゃぁ、早い方がいいから、月曜日にしようか?」

私:『わかりました。月曜日ですね。もし、試験の影響で、難しくなりそうでしたら、電話しますね。』

そう。Z社との契約の件で、木本さんと会う必要があるのだ。

あまり、気が乗らないが・・・、何もしないわけにもいかない。
来週、月曜日に会って、契約の件を何かしら話さないといけないだろう。

進む試験

部屋に戻ると、赤井さんの機嫌が良い。

赤井:「いやー、よかったよかった。うまくいったよ。」

私:『あ、データ問題なかったですか?』

赤井:「そう。データの確認終わったよ。あとは、請求と支払だな。連携までうまくいくといいけど」

赤井さんの顔には「自分のところが終わって、他のサブシステムのことなんてどうでもいい」としか書いていないが・・・。とりあえず、課金サブシステムが無事に終わってよかった。

私:『大川さん、お疲れ様。無事終わってよかった。』

大川:「あ、ありがとう。とりあえず、終わったけど。連携まで見ないと安心できないなぁ。」

本当にそうである。後続の請求サブシステムの帳票出力、支払サブシステムのデータ登録、データ連携先での処理、が、それぞれうまくいって、初めて課金サブシステムの処理結果の妥当性が確認できる。

赤井さんは、もう終わった気でいたけど、さすが大川さん。まだまだ気は抜けないことを分かっている。

大川:「まぁ、待つしかないね。今日も。昨日と違って、データの中身だから終わりまで待って、最後の出力結果を確認しないと安心できないな。」

一緒に帰ろうよ?

課金サブシステムの処理が終わり、請求サブシステムの処理がスタートしていた。香川さんがFシステムの川島さんのもと、JCLを実行していた。処理自体は問題なく進んでいるようだった。

いくつかデータのパターンがあるから、夕方まで処理はかかるだろう。文字ズレも、香川さんが修正しているはずだから、問題なく帳票も出力できるだろう。

小森:「ねぇねぇ。今日は僕は定時で帰るよ。」

緊張感漂う結合試験の中、緊張感のない声でリーダーがやってきた。

大川:「あ、リーダー。帰って大丈夫っすよ。他の人は試験だから、1人でだけど。」

小森:「え!?昨日、2人で飲みに行ったのに。今日は一緒に行ってくれないの?いじわるだな。」

リーダー・・・、昨日その2人で飲んでるのを呼び戻されたのはあなたのせいなのに・・・。

赤井:「あ、小森さん、僕はもう終わりだから一緒に行く?」

小森:「いや、大丈夫です!」

相変わらず、緊張感も台無しの2人のやりとりだ。

私:『いや、赤井さんは最後までいてくださいよ。』

と、不満げな顔の赤井さんを引き止めることで精一杯だった。

印刷ができない?

夕方になり、請求サブシステム、支払サブシステムも処理の終盤を迎えていた。予定より、少し遅れている。この後、出力されたデータを連携サブシステムの処理が待っている。

大川:「佐藤さん、なんか、あれ。」

私:『ん?』

大川さんに促された方をみると、川島さんと香川さんで何やら話し込んでいる。

大川:「なんだろうね?雰囲気が・・・。あまりよくないかも?」

たしかに、川島さんの顔が曇っている。
香川さんの席に様子を聞きに行った。

私:『香川さん、どうですか?状況は。」

香川:「あ、いや・・・印刷がね・・・。」

歯切れ悪く香川さんは、曇った顔の川島さんの方を見た。

川島:「いや・・・、林田さんから、帳票は本番と同じ用紙を使うようにと言われていたんだけど・・・。香川さんに言うのを忘れていて・・・。困ったな。」

私:『あ、それって・・・』

香川:「そう・・・。JCLの修正が必要なんだよね。出来るかなぁ?」

私:『用紙自体はあるんでしたっけ?あれば、修正は1時間もあれば・・・』

川島:「あ、用紙はあるよ!できる?よかった。」

私:『じゃぁ、JCL修正しますので、その間に他の用紙に出力して、内容だけ確認しておいていただけますか?実行は二度手間ですが時間がもったいないので、本番用紙に合うかどうかだけ、修正後に確認しましょう。』

JCLの修正なら大したことない、きっと1時間もあれば終わる。

ただ、出力された内容がおかしければもう一回やり直しになる。本番の用紙への出力がズレても、それは請求サブシステムだけの話だから、今日の試験は先に進めても問題なろうと思い、川島さん、香川さんに処理を進めることをお願いした。

今日中に試験が終わるか?と不安の中、少しハッタリをかまして1時間で終わると言ってしまったことを少し後悔しつつ、JCLの修正に取り掛かった。

つづく

※この物語は経験をベースにしたセミフィクションです。

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