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世間知らずの転職活動・フリー編 その28

試験の初日、入力サブシステムの検証が終わり、早めの帰宅途中に飲んでいたところに突然の電話。経費サブシステムがうまく進んでいないということで、大川さんと二人呼び戻されたのであった。

前回はこちら・・・

ABEND

小森リーダーから、経費サブシステムのJCLを見せてもらい、確認することにした。

私:『リーダー、とりあえず1回実行して、どこで止まるかエラーコード見たいんだけど。』

小森:「実行ね。動かないから。ほら。」

確かに実行するとすぐ止まる。
なぜか、ABEND。
しかし、リーダー・・・、動かないことを自慢してどうする。

私:『たしかに、動かないね。リーダーこれまで何調べた?』

小森:「ABENDだから、レコードサイズやブロックサイズを見たけど、間違ってないんだよな。一通りのJCLを見たけど、間違ってない。」

私:『いや、最初でこけてるから、一通りみても・・・』

最初に動かすJCLがコケている。後続は今見てもあまり意味はないが、最初のJCLを見ても分からなければ仕方ないか・・・。

私:『大川さん。経費サブシステムの試験環境のJCLを、開発環境に移して、本番用のJCLとCOMPAREとろうよ。』

大川:「そうだね。ちょっとやってみる。」

試験環境で実行しているJCLに間違いがないか確認をしたかったのだ。本番用に作った正のJCLと比較して差異の確認をすることで間違いを探す。

比較の行方

JCLを比較するために、試験環境にある経費サブシステムのJCLを開発環境にコピーし、開発環境にある本番用のJCLと比較するため、比較用のJCL(COMPARE)を実行した。

私:『最初のひとつだけでいいからね。』

大川:「わかってるよ(笑)」

大川さんが手際良く、JCLを実行した。

大川:「あ!?」

私:『え?分かった?』

大川:「いや、分かったけど。いや、これはないな。」

私:『なに?なに?』

大川:「まただよ。前と一緒。」

私:『まさか』

大川:「ライブラリが本番と一緒」

私:「・・・」

繰り返される間違い

JCLに記述されるライブラリは実行環境ごとで用意される。

それぞれの環境でアクセスできるディスクやデータベース、モジュール類の設置場所が異なるからだ。

本番環境は本番環境用、結合試験環境は結合試験用、開発環境は開発環境用とそれぞれに用意されてるから、異なる環境用のライブラリが記述されていると実行してもうまく動かなない。目的のリソースが見つからないからABENDしてしまう。

今回、結合試験前のプロジェクト内試験だったため、もちろんそれ用に用意してあったのだが・・・。

私:『リーダー!JCLって、どこから持ってきた?』

小森:「ん?開発環境のJCL置き場のところ。」

私:『それのどこ?』

小森:「本番環境から」

私:『ライブラリは?』

小森:「あ・・・」

大川:「あ って・・・(笑)回覧されてたじゃん。試験用のJCLあるって。」

小森:「・・・」

私:『ま、いいや。とりあえず試験用のJCLに変えて実行しようよ。』

実行の行方

前回、山崎PMの元、お客様向けの結合試験の際に、経費サブシステムのJCLが動かなかった。そのときもJCLのライブラリが違ったのだ。

まぁ、私もJCLを見た瞬間に気づけよ、という話でもあるのだが、まずは原因が明らかになったのは良かった。しかも、置き換えれば動くはずである。

私:『大川さん、開発環境の試験用のJCLを、試験環境に持って行って。』

大川:「はいよー」

今後は確実に試験環境で実行できるJCLを使わなければならない。

大川:「移したよ!」

私:『サンキュー。じゃぁ、リーダー実行してみて』

小森:「う、うん。」

小森リーダーがそのJCLを動かした。

小森:「動いたよ。」

大川・私:「お、よかった。」

まぁ、当たり前と言ったら当たり前な話だが・・・。

私:「じゃぁ、リーダー、最後まで実行してよ。」

試験環境のJCLが全て正しいものに変更されているから、これで正常に実行されるはずである。

不確実な周知

小森リーダーの経費サブシステムのJCL実行が終わるまで、大川さんと私の2人は待つことにした。

また、何かあって呼び出されてもたまったもんじゃない。

角川:「2人とも、ありがとうございます!すみませんね。あんなんで」

大川:「いえいえ。でもすぐ原因が分かって良かったですよ。」

田中:「でも、あれだね。前回のときと同じミスならば、そうならないように対処しないといけないね。」

私:『そうですね。』

前回はそれぞれのサブシステムでJCLを作っていたから、JCLチームでまとめて作ることになった。正しいJCLは出来上がっていた。

しかし、それが環境にちゃんと反映されていなかった。

「各環境への反映までJCLチームでやればよかったな。」

と後悔しつつ、周知しても伝わらない現実があることを痛感させられた。

そして、あれくらいならJCLをパッと見てわかるべきだったと、大袈裟な対応をしてしまった自分が少し恥ずかしかった。

人の気持ち

1時間ほどして、経費サブシステムのJCLの実行が完了した。

小森:「終わりました・・・。」

田中:「お、お疲れ様。じゃぁ角川さん。データの検証しましょう。」

角川:「そうっすね。確認しましょう。」

田中さんと角川さんが実行結果を確認し、問題がなければ今日は終わりだ。
22時を少し過ぎたところ。今日は帰れるな、よかった。と胸を撫で下ろした。

大川さんと一服し、戻ってきたところで、リーダーの様子が少しおかしい。

私:『リーダー、動いてよかったね。』

小森:「・・・」

大川:「JCL違いで良かったよ。すぐ終わったし。」

小森:「・・・」

私:『なに、リーダー黙っちゃって。良かったじゃん。終わって。』

小森:「あのさぁ!」

大川・私:「はい!?」

小森:「人の気持ち、分かってんのかな?」

大川・私:「え!?」

小森:「いいとこもってってさ。」

大川・私:「いや・・・」

そんなやりとりをしている中、検証が終わった角川さんが我々のところにやってきた。

角川:「小森さん。また・・・そんなこと言って。ダメでしょ!どんだけ2人に助けてもらってんですか!」

小森:「そんなこと言わなくったって・・・」

角川さんに怒られた小森リーダーは小さくなって部屋を出て行った。

こんなところまで繰り返さなくたっていいのに・・・。

検証の結果

角川:「検証オッケーだったです。2人ともありがとうございます!」

大川・私:「あぁ、良かったです。とりあえず今日はこれで終わりですね。」

角川:「そうっすね。すみませんね。小森さんあんなんで(苦笑)」

大川・私:「いえいえ、分かってますから、大丈夫です(笑)」

私:「でも、よかったです。これで、経費サブシステム終わったので、2日目進めますね。」

2ヶ月前のデジャヴを感じながら、相変わらずのリーダーに苦笑いするしかなかった。

そして、経費サブシステムの実行を終え、出力データの検証まで終わった。

明日は残りのサブシステムの総試験となる。

つづく

※この物語は経験をベースにしたセミフィクションです。

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