世間知らずの転職活動 その2
配属先のお客様の移転に伴い退職を決めた私だったが、石川課長からの「退職が難しい」との言葉。「3ヶ月以上前に伝えていたにもかかわらず何故だ?」と不安な気持ちで石川課長の言葉に耳を傾けるしかなかった。
退職はいいんだが
石川課長:「3月の退職は難しいんだ」
私:『どうしてでしょうか?石川課長も大丈夫だとおっしゃっていたと思うのですが。』
石川課長:「うちの会社としては問題ないんだ。さっき、北沢常務と原部長がいらっしゃって、お客様に事情を話して説明をしたんだが、来期の予算がある程度決まっていて、その中のメンバーとして既に入っているということなんだ。」
私:『それは3月から私の代わりのメンバーを入れて、引き継いでいけば問題ないと思うのですが、今までも同じだと思うのですが、今回は難しいのでしょうか?』
石川課長:「今までもそうだし、これからもそうなんだが、タイミングもあってな。お客様も部署として来期の予算を組んでしまっていて、かつ、君はサブシステム2つ主担当者になってるからな。代替のメンバーが来ても・・・そう簡単には主担当レベルとしては戦力にならない、というのがお客様の判断なんだ。」
確かにこの3年半で、2つのサブシステムの主担当を先輩から引き継いだ。だから、業務的にもシステム的にも私がプロジェクトの中では一番よく知っている。
石川課長:「あと、田原課長と三崎さんが当初の計画で3月末で終わりの予定だったのもあって、君がいなくなると困ると、お客様が言っってるので、なんとか半年くらい伸ばしてもらえないか?退職を。」
お客様が言っているから
そうか、田原課長も三崎さんは3月末で別のプロジェクトに異動する予定だったんだ。だったら。
私:『私はもともと3月末に退職する予定ですので、田原課長か三崎さんのどちらかに、プロジェクトに残ってもらう。というのは難しいのでしょうか?そうすれば、私が退職するにも大きな影響はないと思うのですが。』
石川課長:「それができればいいんだけどな。お客様の意向もあるから。」
あとから聞いた話で、田原課長は既に12年このプロジェクトに携わっており、三崎さんと一緒にお客様から3月末で終わりにしたい、と言われていたらしい。だから、2人を残す、というのが難しかったということなのだ。
私:『ちょっと、考えさせてもらってもよいでしょうか?』
石川課長:「頼むよ!」
まだ経験の浅かった私は、お客様と自社の意向など、どのようなやりとりがあって、どのようにしたいのか?なんて、よく分かっていなかった。今ならそれぞれの意向、思惑はなんとなく想像つくのだが、当時の私は自分が退職できない、ということに対しての不満と不安で一杯になるだけだった。
同期はよいものだ
その週末、会社、というよりも、石川課長とうまく行っていないことを気にした同期が、飲み会に誘ってくれた。新卒で入社した同期は8人。1年目は毎週のように飲みに行くほど仲が良かったが、3年も経つとそれぞれのプロジェクトで忙しく、飲みに行く機会も減っていた。
しかし、何かあれば集まって飲んで、話を聞いて悩みを打ち明け、そんな仲間だった。
私:『半年退職を伸ばすのはいいんだけどさ…』
木内:「じゃあ、残ればいいじゃん!」
私:『うん。会社も嫌いではないし結果的に退職伸ばすことになると思うんだけど。石川課長にさ、お客様が言ってるから残ってくれって言われてもさ、なんか、すっきりしないんだよね。』
木内:「あぁ。たしかに」
お客様が残ってくれないと困ると言ったから、と言うのはそうなんだと思うが、石川課長はどう思ってるのだろうか?
私が辞めること、ホントはやめて欲しくない、と思ってるのだろうか?
私の力が必要で…ということはないのだろうか?
一緒に働いてきて残ってほしいけど、本人の希望を叶えるならば、やめた方が早い、ということもある。
一緒に働いてきても、そうでなくても、引き止めるのであれば、周りの状況のせいではなく、その人、その人と一緒に働きたいとういうことがなければ、果たして、その引き止めの言葉を受け止めてくれるだろうか?
この件は、私自身がこの後、後輩がつき、部下がつき、管理職となり、辞めたいと言われる立場になったときに忘れないようにしている経験の一つである。
最終的に退職時期の延長を受け入れ、2000年の9月末の退職として、転職活動を進めるのだが、この話はまたこの次の記事で。。。
つづく
※この物語は経験をベースにしたセミフィクションです。
次回はこちら!
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