世間知らずの転職活動・フリー編 その30
プロジェクト内の試験も佳境に迫ったところ、請求サブシステムの帳票の出力先が間違っていることが発覚した。今日、試験を終わらすためにJCL修正に取り掛かったのだった。
前回はこちら
緊急対応!?
請求サブシステムのJCL修正するにしても・・・。
JCLチームリーダーの水原さんに報告する必要がある。
私:『水原さん、請求サブシステムでJCLの修正が必要みたいです。』
水原:「え?なんで?」
まぁ、そりゃぁ驚くだろう。大事な試験の真っ最中である。
私は川島さん、香川さんとのやりとりを説明した。
水原:「あぁ・・・。じゃぁしょうがないか・・・。林田さんに言わないとな・・・。」
私:『あ、じゃぁ、私から林田さんに伝えておきますよ。』
水原:「あ!そうしてくれる?JCLは広田と手分けして対応してね。」
私:『了解です!』
白髪混じりの水原さんの顔も明るくなったようだった。
今回、修正対象となるJCLは全部で12本。広田さんと半々か、私が少し多めに対応すれば1時間でなんとか終わるだろう。
そう思いながら、林田さんに状況を報告しつつ、対応の許可を得た。
請求サブシステムのJCLの修正と、修正時間、そして、先に次のサブシステムを動かして帳票だけ後で確認することだ。
「きっと、社員同士だと言いづらいこともあるんだろうなぁ」と心の中で思いつつ、余計な詮索はせずに水原さんに少し恩を売ったつもりでいたw
経験のチカラ
JCLチームはリーダーの水原さん、メンバーの広田さんと私の3人だ。私がJCLのことを広田さんに引き継いでいるような感じで日々作業を進めていた。
広田さんも私より年上で、水原さんともそれほど経験は変わらないようだった。
その割に・・・というか、水原さんら他のリーダーたちと比較しても、手が動く(プログラムやJCLを作れる)方であったので、引き継ぐ役割には適任であったと思う。
私:『広田さん、じゃぁ、とりあえず、この6本対応していただけますか?私はこれを修正しますので。』
広田:「りょーかい!そんな難しくないもんね。最後確認して、試験環境まで持っていって、1時間くらいでできるかな?」
私:『そうですね!1時間目標で対応してしまいましょう!』
対応時間を適切に見積もれるってことは、しっかりと内容を理解しているということ。F社とH社で違いのある汎用機ではあるけど、実際に手を動かしてきた人だから、慣れるのも早かった。
私:『大川さん、ちょっとコンペアだけ手伝ってくれない?』
大川:「あいよー」
時間がないから大川さんにも手伝ってもらおうとお願いをした。
こういうときは、やはり慣れている大川さんは頼れる存在だ。
もちろんリーダーはもう帰った。。。
再実行
約1時間経ち、ほぼ予定通りに修正が終わった。
大川さんの手伝いがなければ、もう少し時間はかかったかもしれない。
作り終わったJCLは大川さんが本番のJCLと比較することで、今回の修正箇所が明確になっていたので、広田さんと私でチェックするだけで確認は終えられた。そして、最終的に水原さんにもチェックしてもらった。
水原:「川島くんさ、請求サブシステムは帳票以外は終わってるんだよね?」
川島:「そうですね。もう実行も終わって、データの確認まで完了しています。」
水原:「じゃぁ、JCLの修正は問題ないから、林田さんに報告して実行しようか。川島くん、実行は香川さんで良いよね?」
川島:「はい。それで問題ないです。」
私:『帳票は、用紙のセットは大丈夫なんでしたっけ?』
川島:「あ、それも準備してるね。大丈夫。」
再実行のための準備は万端でった。
水原さんと川島さんが、林田さんのところへ、JCLの再実行のために了承をもらいに行った。
帳票の出力
その横で、支払サブシステムでは実行結果のデータの確認をしていた。
請求サブシステムはデータの確認が終わっているので、支払サブシステムのデータに問題がなければ、外部の連携先へデータを送信できる。
今回は外部の連携先ではデータの確認をするだけで、受けたデータを入力として、向こう側のプログラムは実行しない。
受信したデータの確認の連絡を待って、問題がなければ今日は終わることができるはずだ。
請求サブシステムでは、香川さんが修正したJCLを1本ずつ処理をしていた。
川島さんは、JCLの実行に合わせ、プリンターのところで本来の帳票の用紙をセットしている。
本当だったら、オペレーターの方が帳票をセットするのだが・・・川島さんの手配ミスで川島さん自身で対応するしかなかったのだ。
少し手間ではあるが、出力には問題ない。
あとは、この帳票確認、最後の連携データ確認が終わるまで待つだけだ。
大川:「いやー、やっぱ何かあるよね。」
私:『うん。そうだよね。でも、データ自体に問題がなかったから課金サブシステムは大丈夫でしょう?』
大川:「いや、まだ、連携データの確認終わらないとね。なんとも・・・。」
大川さんは、その丸みをおびた身体に似合わず、慎重な性格である。
赤井さんなんて、もう早く帰りたくてウズウズしてあちこち歩いて、みんなに話しかけて邪魔ばかりしてるのに・・・と、どっちがSEなのか分からない感じもしていた。
あれは・・・?
大川:「ちょっと、タバコ行こうよ。」
大川さんに促されてタバコを吸いに部屋を出た。
もう、夜遅く、処理も終盤なので人も少なく喫煙場所には誰もいなかった。
大川:「あの件、大丈夫?」
タバコに火をつけながら大川さんが私に尋ねた。
「あの件」・・・契約の件だ。
私:『そうだね。来週、月曜日に会うことにしたよ。木本さんに』
大川:「そうなんだ。飯田専務も心配してたから、どうしたかと思って。」
私:『ありがとう。心配してくれて。ちょっとね、木本さんのところは・・・。』
今までのやりとりも含め、Z社自体には信頼できるところを感じることができなかった。だから、契約はしないように進めたかったのだ。ただ、そうすると1月以降の契約はZ社以外とする必要がある。
時期的にどこか契約をしてくれるところがあるのか・・・。
それだけが心配だった。
私:『とりあえず、木本さんのところは断るよ。』
大川:「うん。それがいいと思うよ。」
大川さんと出会ったのはプロジェクトに入るときだった。
こんな心配をしてくれて、まだ出会ってから2ヶ月しか経ってないが、何度も一緒に徹夜し、大きなプレッシャーを一緒に乗り越えてきた仲間だった。
連携データの確認
部屋に戻ると、支払サブシステムのデータ確認が完了して、外部の連携先にデータを送信したところだった。
先方のデータ受信は問題なかったようだ。
これから、受け取ったデータの確認を行う。
請求サブシステムの帳票確認とどっちが終わるのが早いだろうか?
JCLの修正もあったせいで、時間が押しており、何か問題があれば、再度、やり直す必要がありそうだった。
少しの緊張感が部屋の中にはあった。
私:『香川さん、どんな感じですか?』
香川:「あぁ、あとね2本実行したら、処理は終わるよ。あとは確認だけだね。」
私:『確認は川島さんがプリンターのところでしてるんですよね?』
香川:「あ、そうかな〜?でもしてるよね。帳票セットして待ってるだけだもんね。」
香川さんのおっとりした感は相変わらずだが・・・。
そんなやりとりをしていると、石山さんのところに電話がかかってきた。
石山:「はい。はい。そうですか。よかったです。次回は実処置もあるので。よろしくお願いします。」
電話を切った。
石山:「データ連携、問題ないそうです!」
全員:「おお!よかった」
部屋に拍手が起こった。
ここまでの道のりを考えると拍手をしたい気持ちは当然かもしれない。
あとは、帳票の出力を待つだけだ。
川島さん、確認してるといいけれど・・・。
つづく
※この物語は経験をベースにしたセミフィクションです。
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