【読書】 慰安婦性奴隷説を ラムザイヤー教授が完全論破 その2
出版情報
タイトル:慰安婦性奴隷説をラムザイヤー教授が完全論破
出版社 : ハート出版 (2023/12/13)
単行本 : 416ページ
前回まで
本書は著者 マーク・ラムザイヤーによる4つの論文と、突如キャンセル・カルチャーの渦に巻き込まれた著者の体験記とその背景を<プロローグ>ととして掲載した5部構成となっている。
一つ前の記事ではプロローグ部分と第1論文について扱った。本記事では主に第3論文を中心に扱い、第2論文については簡単な概要と挺対協について述べる。痛快な『論破』を行っている第4論文については本記事では扱わない。どうぞ、本書をお読みください。学者の論破って本来こんなふうに緻密であって、イデオロギーありきの論争相手たちのように数に任せて圧力をかけるなんて、論外なんだな〜、と改めてよくわかる。
例によって目次でご関心のあるところまで飛んでくださいね。そしてご興味のある方はぜひ本書を直接当たってみてください。日本人として一度は読んでおいて損はないと思っています。
戦前の朝鮮における売春の実態
第2論文の概要
第2論文は2019年に書かれている。慰安婦問題がすでに国際問題化し、日本政府のお粗末な対応に、国民が呆れ出している時期だった。
著者ラムザイヤーは、そうした問題を概観しつつ、1991年の自身の論文の概要に加えて、日本統治下にあった朝鮮半島(当時は日本国内)での売春の実態と慰安婦(日本帝国外で軍と行動を共にしている売春)の実態をデータに基づいて描き出している(そうしたデータなどについては、本記事では第3論文の項目で述べる)。
そして、下記のように結論づけている。長いが引用しよう。
要約すれば、「慰安婦=性奴隷説」は「男性優位主義、人種差別主義、国家主義が最悪の形で」結合されたものであるとしたい欧米の学者が生半可に首を突っ込んで、事実をありのままに見て率直に述べるラムザイヤー教授のような人々を「否定論者」という不可触賎民のような立場に仕立て上げた。「性奴隷説」は文書による証拠がない、でっちあげであり、結局「性奴隷説」は左翼組織により攻撃的に推し進められ、利益によって自分たちの話を変える人々の不確かな説明のみを根拠にしただけのものだったのだ。
第2論文で特に重要な点
第2論文で特に重要な点だと思われるのは、元慰安婦の人々から穏やかに過去を思い出す機会=権利が奪われている、と記述されていることである。
そして「別の人たちによる別の話」を再録し、挺対協ら熱狂的に日本人に反対する愛国者たちによって、「多くの慰安婦たちから、平穏裡に彼女たちの思い出に生きる機会を奪った」と述べる韓国人学者 朴裕河の言葉を紹介しているp173。
そして、挺対協を、「多くの慰安婦たちから、平穏裡に彼女たちの思い出に生きる機会を奪った」組織である、と断罪している。
挺対協という組織
では挺対協という組織はどういう組織なのだろうか?もちろんみなさんにはぼんやりとした印象、「あ〜なんか集会している人たち」とか「内輪揉めしているお婆さんたち」とか「なんか銅像??」とか「代表がお金を横領したんだっけ??」とかがあるのでは、と思う。ここではラムザイヤーがどのように挺対協を描写しているか見てみよう。
そして挺対協は自分たち組織のためにお婆さんたちから言論の自由を奪っているようなのだ。
つまり、誰と誰が会い、どんな話をするかを挺対協がコントロールしているのだと。朴裕河は自身の論文で次のように述べていると、ラムザイヤーは引用している。
ひゃー、とんだ人権侵害だ!おい、挺対協、どっちが奴隷扱いしとるんじゃ!!そして、挺対協は1995年に日本からの賠償金を受け取った女性たちの名前を住所を新聞に晒した、とp178。こんな名誉毀損、個人情報漏洩があるだろうか??
日本、朝鮮、帝国外での売春
第3論文の概要
第3論文は、2020年に書かれた。誰の関心も惹かないだろうと思っていたが、違った。産経新聞の日本語版から韓国のマスメディアへ、そして米国内韓国人学者や韓国人留学生へ、と広がり、収拾がつかないほどの騒ぎになった。ラムザイヤーは生命の危機を含む脅迫を受けた。論文撤回も求められた。適切で徹底的な反論=第4論文と掲載雑誌側の撤回せず、という対応で事態は終息した。では、第3論文にはどれほどのことが書かれていたのだろうか?
本論文は、基本的には第1論文に基づいており、それに加えて当時日本統治下にあった朝鮮半島(当時は日本国内)での売春の実態と慰安婦(日本帝国外で軍と行動を共にしている売春)の実態をデータに基づいて描き出している。売春に応募した女性は決して無知でだまされやすい人々ではなかったこと、自分の評判が落ちたりなどのリスクも考慮した上で応募したくなる条件の提示、また働いてもらうために売春業者はインセンティブも考慮した仕組みが必要だったこと。この両者の要求を叶えるものが多額な前払金を含む年季奉公という契約形態だった。それをゲームの理論(信頼できるコミットメント)で説明している。
日本での売春の実態、年季奉公の説明、ゲームの理論そのものの簡単な説明、ゲームの理論(ナッシュ均衡と信頼できるコミットメント)を使った年季奉公の合理性の説明に関しては、一つ前の記事を参照してください。
本記事では、朝鮮半島(当時は日本国内)での売春の実態と慰安婦(日本帝国外で軍と行動を共にしている売春婦)の実態をデータに基づいて説明する。
朝鮮半島における売春
朝鮮併合は1910年からであり、朝鮮総督府は1916年には売春のための統一認可システムを設定したp218。売春を許される年齢は17歳からで、日本本土では18歳からだった。定期的な医療検診を受けなければならないp218。
1929年までに、娼婦の認可を受け、朝鮮で働いていた女性は日本人は1789人、朝鮮人は1262人。日本人女性が接客したのは約45万人、朝鮮人女性は11万人。一人当たりに換算すると日本人は252人、朝鮮人は88人。1935年までに、だが無認可の娼婦(バーやキャバレーの従業員)は朝鮮人の方が多い。日本人の従業員はふたつの業態をあわせて4734人、一方の朝鮮人は7843人であったp219。
朝鮮での公娼の募集は主に朝鮮の業者が行ったp225。契約は日本と同様に年季奉公だったp219。年季奉公の前払金は、日本人が1000〜3000円に対して、朝鮮人は250〜300円だった。日本人が日本で働く場合より、日本人が朝鮮で働く時の前払金は高額だった。1回の花代は日本人6円に対して朝鮮人は3円だった。金払いのいいのは日本人であり、日本人娼婦が好まれたからだったp220。期間は日本人が日本国内で働く場合は6年が最長だったが、朝鮮人が朝鮮で働く場合は3年契約が多かったようだp220。
朝鮮には売春に限らず、労働者募集のプロがいた。募集業者は「昔から詐欺まがいの汚い手を使うことで有名だった」p225。当時の新聞には、チンピラが女性を売り飛ばす、とか、いかがわしい夫婦が女性たちの親を騙して、100人以上の女性を海外の売春宿に送ったとかの記事がある。
だが、これは朝鮮総督府が行ったことでも日本政府が行ったことでもない。ましてや軍当局でもない。募集業者が軍の慰安所にねらいを定めたわけでもない。朝鮮国内の募集業者が何十年にもわたって若い女性を罠にかけていた、ということだったp225-p226。
日本帝国外の軍周辺での売春宿=慰安所
なぜ慰安所が作られたのか?
日露戦争の昔から、日本軍は性病に悩まされていた。1918年のシベリア出兵の時には性病に罹患したために将兵が十分な働きができない事態に陥っていたp227。そこで、「どうせ売春宿に行くのであれば、より安全なところへ」ということでp227、
性病予防のための認可を受けた売春宿が慰安所であり、そこで働く女性が慰安婦だった。
慰安婦の契約
慰安所は必然的に海外にある。海外で働く売春婦は募集に際して「すでに売春婦として働いているもの」でなければ旅券がおりなかった。つまり仕事内容を正確に把握しているもの、が条件だったp223。
また慰安所は軍の側にあるため、危険がいっぱい、だった。紛争地隊かもしれないし、爆撃があるかもしれない。そもそも感染症もいろいろ蔓延していたようだ。そこで契約期間は2年が最長であった(日本国内であれば6年)。日本国内であれば前払金は6年で1000円〜1200円だったが、上海の慰安所に行くのであれば2年で600円〜700円となった。短期間で高収入というわけだ。
契約期間を満了すれば
契約期間が終わるか、前払金を返し終われば、慰安婦たちは故郷に帰ったp231。朝鮮人慰安婦たちも大金を稼ぎ、預金通帳に貯金をした。また故郷に送金し、家族に家を建てた。自分用に宝石を買ったりするものや、貯めたお金で自分で売春宿を経営するものもいたp232-p233。
第3論文の結論
慰安所は日本軍が性病防止のために、コンドーム使用などを条件に認可した売春宿だった。将兵にも慰安所以外の売春宿には行かないように求めた。
慰安婦は慰安所で働く売春婦で、その契約は基本的には日本国内の売春婦の年季奉公に準じていたが、その前払金は高額で、契約期間も国内の6年に対して2年という短いものだった。
朝鮮人慰安婦たちも大金を稼ぎ、成功した人々は故郷に送金し、自分用に宝石などを買ったりした。もちろん、そういう人ばかりではなかっただろう。が経済的な統計という観点で見ると、だまされてばかりの可哀想な人たち、というわけではなかったのだ。
甘言でだまされないように、慰安婦たちはリスクに応じた前払金を支払ってもらい、慰安所のオーナーは働くインセンティブとして働きに応じて契約期間が短くなるような賃金形態をとっていたのだったp235-p236。
終わりに
本記事はここで終わるが、本書には論破の部分=第4論文が残っている。ご興味のある方はぜひ、本書をお手に取って欲しい。学者の論破とはどういうものか、無駄がない、緻密な論理立ての醍醐味が味わえるのでは、と思う。
本書を読んで、時代の要請で無くなってしまった年季奉公という契約も、それが確実に守られるのであれば、悪い契約ではなかったのでは、と感じられた。特に昨今の人身売買ビジネスや技能実習生たちのことなどを聞くにつけ、そう思ってしまう。
また挺対協という組織の人権侵害ぶりも、改めて認識することができた。こんな組織が世界中に慰安婦像を立てるなど、おこがましいにも程がある。
改めて本書を執筆する労を取ってくださったラムザイヤー教授、それから本書を翻訳してくださったみなさまにも感謝を述べたいと思う。ありがとうございました。
引用内、引用外に関わらず、太字、並字の区別は、本稿作者がつけました。
文中数字については、引用内、引用外に関わらず、漢数字、ローマ数字は、その時々で読みやすいと判断した方を本稿作者の判断で使用しています。
おまけ:さらに見識を広げたり知識を深めたい方のために
ちょっと検索して気持ちに引っかかったものを載せてみます。
私もまだ読んでいない本もありますが、もしお役に立つようであればご参考までに。
ラムザイヤー博士は同和事業についても論文を書いていた!
同和問題の闇について告発し続けている宮部龍彦氏が、ラムザイヤー博士の同和事業についての論文を紹介している。これももっと知られてよいことなのではないだろうか?
宮部氏:「筆者が注目した論文は2つある。1つは2017年9月に発表された“Outcaste Politics and Organized Crime in Japan: The Effect of Terminating Ethnic Subsides.(日本における同和対策と組織犯罪:同和事業終了の効果)”であり、もう1つは2019年4月に発表された“On the Invention of Identity Politics: The Buraku Outcastes in Japan. (作られた身分政策:日本の部落民)”である。原文は、リンク先から読むことができる。表題の日本語訳は、なるべく分かりやすいように意訳したものだが、すでにこの時点で、まず日本の研究者ではやれなさそうなものであることを感じるだろう」。
ラムザイヤー教授の著作
たくさん本を出版しておられる!知らなかった…。
海外技能実習生たち…
米国における不法移民
米国における人身売買
海外技能実習生たち…
滝田ゆうの漫画
墨東奇譚
玉ノ井の文学といえば…
右?左?評価は分かれるが…
著者ラムザイヤーが信頼のおける『慰安婦』の生の声として採用していたので。
下記本は復刻版?別の出版社から出されたものもあるが、改変されている可能性もあり、オリジナル版を紹介しておく。買うのは難しいかも。