この味をずっと忘れない。
どれほどの手間と時間をかけたのだろう。
牛テールへの確かな火入れとコクのある赤ワインソースが絶妙だ。
本当においしいものをつくろうという強い気持ちがグンと伝わってくる印象的な料理だ。
文・撮影/長尾謙一
クリスマス島の塩(素材のちから第45号より)
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正統派フレンチを支える塩
奇をてらった料理はつくらない、食べられない素材は皿の上に置かない。
「綺麗」より「おいしい」を優先し、常に料理は変化球なしの直球勝負。
流行に惑わされない本格派フランス料理のかげに「クリスマス島の塩」が寄り添う。
私のつくる正統派のフランス料理に「クリスマス島の塩」は不可欠です。
オーナーシェフ 小山 英勝 さん
小山シェフは、塩を「クリスマス島の塩」に変えた。塩は料理人にとっては命、変えるのには勇気がいる。頑固に料理をつくり続けるシェフが塩を変えたのはどうしてだろう。たくさんの手間と時間をかけてつくり上げる自分の味を、イメージ通りにまとめてくれるこの塩の表現力に小山シェフは心を動かされたからだ。
これからも自分のフランス料理をつくり続ける
フランス料理は、長い時間をかけて考えに考え抜かれて生まれた試行錯誤の歴史であり奥の深い料理です。そして何十年も前に私たちの先輩が海を渡り本場で修業して技術を持ち帰り、フランス料理を日本に芽生えさせました。
私の料理は、この時の料理を継承する正統派のフレンチです。もちろんオリジナリティーを発揮することや料理を進化させることも大切に考えていますが、基本からあまりにかけ離れている料理はつくりません。
私どもの店は新規のお客様もいらっしゃいますが、圧倒的にリピーターのお客様が多く、全部がリピーターの日もあります。店をはじめて20年近くになりますが、最初の頃からのお客様の中には数十回以上お見え頂いている方がいらっしゃいます。
誕生日や結婚記念日など大切な人生の節目にご利用いただき、「おいしかった!」と喜んでいただけることが私の料理へのレスポンスだと思っています。そうしたお客様の大切なシーンに、「必ずもう一度食べてみたい。」と印象に残る味を提供することが私の目標です。
「クリスマス島の塩」がソースの味をイメージ通りに決めてくれる
手前味噌ですけれども、私どものお店ではソースの評判がとてもよく、パンのおかわりが凄く多くて、ほとんどのお客様がソースを残さず綺麗に召し上がります。なぜソースの評判がいいかは、時間も原価もかかっているということもありますが、味が私のイメージ通りブレずに決まっているからでしょう。
この〝オックステールの赤ワイン煮込み〟は4時間以上煮込んでつくります。昔はこうした煮込み料理を出すお店も多かったのですが、この頃は減りました。
鍋にミルポワ、オックステール、赤ワインを入れて、ある程度煮てからそこにフォン・ド・ヴォーを入れますが、ちょっと煮詰まったらもうそこに塩を入れます。その方が塩の旨みが肉にもソースにもしっかりと入る気がするからです。
私は「クリスマス島の塩」を使っていますが、さすがに料理を40年以上やっていると塩それぞれに旨みの点で違いがあるのが分かります。
でき上がりをイメージして早めに「クリスマス島の塩」を入れてしまいますが、塩味のバランスの点では今までに一度もこの塩に裏切られたことはありません。とても使いやすく味が決まります。
肉を取り出して、残ったソースを濾しますが、1回濾しただけではこれだけの艶は出ませんので3回濾します。素材の味は十分に出ていますから、後は濃度、そして塩味でソースのおいしさを表現します。
ソース全体に深みがありさらに厚みのある味わいに変わった
次は〝蝦夷アワビのシャンパン蒸し〟ですが、下に敷く大根は二番のコンソメで大根を含め煮させます。コンソメが濃いと味が染み込みすぎるからです。掃除した蝦夷アワビにシャンパンと大根の煮汁を入れて真空パックにして65℃で2時間半蒸します。蒸し上がったらこれを二つに切って、硬い目玉の部分は取り除き、網焼きしてバターを絡めて仕上げます。
ペリグーソースはポルト酒、マデラ酒、コニャックを合わせて火にかけ、そこにフォン・ド・ヴォーを加えて煮詰めます。ここで加えるフォン・ド・ヴォーは「クリスマス島の塩」を入れて別に沸かしておきます。
もともと塩は味を決めるために最後に入れていたのですが、ふとしたきっかけで早めに入れてみたら、仕込むごとに結構まろやかになりました。自分の観念かもしれませんけれども、味の浸透性とかそういった部分が左右していると思います。
「クリスマス島の塩」には、ほのかな甘みを感じて、この甘みがソース全体に深みを与え、さらに厚みのある味わいに変わりました。間違いありません。
食べ進めれば進めるほど、旨みの期待感が湧いてくる味わい
最後の料理は〝アマダイと海の幸のムース〟です。
この緑のボール状の中には皮面だけさっとリソレした甘鯛と、ホタテ貝、エビ、ソデイカ、真鯛のムースが入っていて、これをほうれん草で包んでいます。赤と黄色のパプリカのコンフィを添えて豚の網脂を巻き、ラップで包んで80℃で13分間蒸します。「クリスマス島の塩」は4種類の魚介をフードプロセッサーにかけているところに、卵白と一緒に加えます。これをボウルに移して生クリームを泡立てないように木杓子で合わせムースに仕上げるのです。
アメリケーヌソースは味が強くなりがちなので、オマールと渡り蟹を1対1でつくり、渡り蟹の旨みと甘みを加えました。味は煮詰まるごとに濃厚になっていきますので、煮詰まったものはお湯を足したからといって味は戻りません。だから、塩味に対しては真剣です。
「クリスマス島の塩」の塩味は、ソースから塩味を感じるというよりも、塩味が厚い旨みとなって表現されます。ソースと絡まったムースの味と食感がたまりません。
食べ進めれば進めるほど旨みの期待感が湧いてくる味わいで、こうした私のつくる正統派のフランス料理に「クリスマス島の塩」は不可欠だと思います。
(2022年6月30日発行「素材のちから」第45号掲載記事)