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フランス料理には塩しかない。
味付けのために日本料理には醤油がある、味噌もある。醤油も味噌も発酵食品で、加えるだけで旨みが加わる。しかし、フランス料理には塩しかない。塩を使って素材の旨みを引き出して組み立てて行くのだ。「クリスマス島の塩」はもちろん発酵食品ではないが旨みと甘みを持つ。素材の旨みを素直に出せるようにそのちからを発揮する。「クリスマス島の塩」を使いこなし正面から素材と向かい合いたい。
文/長尾謙一
撮影/加藤麻希
クリスマス島の塩(素材のちから第14号より)
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シンプルの中にある魅力
わざと違ったことをして、人の気を引こうとする料理はつくらない。何の代わり映えのしない料理に見えても、食べてみると焼き加減は絶妙で、火の入れ方に熟練を感じる。野菜からは青い香りや、フレッシュな苦みが。旬を感じ素材の魅力を存分に引き出す料理には「クリスマス島の塩」が必要だ。
シンプルな料理を極めれば極めるほど、美味しい塩が必要だ。
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オーナーシェフ 飯塚 隆太 さん
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「Restaurant Ryuzu」東京都港区六本木
第一ホテル東京ベイ、幕張マンハッタンホテル、青山のロアラブッシュ 横浜ロイヤルパークホテルを経て、タイユバン・ロブションのオープンから参加し、その後渡仏、ラトリエ・ドゥ ジョエル・ロブションのシェフを5年した後、2011年2月「Restaurant Ryuzu」をオープン。
「Restaurant Ryuzu」の料理は、素材感をいかした〝シンプルな料理〟。まさに、素材のちからを感じる料理と言える。〝シンプルな料理〟の中には、熟練されたテクニックが詰まっている。そして、生き生きとした新鮮な香りや、旨みや甘さがぎゅっと詰まっている。奇をてらうことなく、シンプルな中にも、食べてみると、しみじみうまかったと思える料理だ。
ミシュラン二つ星を獲得した飯塚シェフは「クリスマス島の塩」を使う。素材の旨みを引き出すこの塩は、飯塚シェフの味づくりの相棒だ。料理をご紹介いただきながら、この塩の魅力をうかがった。
良い素材には、最後の細かなところまで旨さを引き出す良い塩を使う
「クリスマス島の塩」は、もう1年前から使っています。他の塩とくらべて美味しいから使っているのですが、ミネラルが豊富ということもあって塩自体に甘みがあります。
私どもでは塩は2種類使っていたのですが、くらべてみても「クリスマス島の塩」の方が甘みを感じて美味しい。塩を舐めて、塩味以外に甘みや旨みを感じるのだから、素材に使ったらさらに効果を発揮するだろうなと思い使うようになりました。素材の旨みが前に出てきますね。
塩も素材の一つだとすれば、自分の愛着ある素材だったり、自分の田舎で採れたものだったり、漁師さんが一生懸命獲ったものだったり、動物の命をいただいているものだったり、やはり良いものをちゃんと調理して、素材をリスペクトして、良い素材だからちゃんと使ってあげようとすれば、塩も良いものをちゃんと使わなくてはなりません。そうすれば美味しい素材はさらに引き立ち美味しくなります。それが私たちの仕事です。
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良い素材を見つけても、良い塩がなくては美味しくならない。細かなところまで、最後まで旨さを引き出す塩、ですから高価でも美味しい塩を使います。
普通の辛いだけの塩をするよりも旨みはもっと増す
私はあまり低温調理とか好きではないので、仔羊は焼く前に「クリスマス島の塩」をして、本当にシンプルにローストしました。
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普通に、昔ながらの、焼き色をつけてから、オーブンで2、3度休ませながら、しっとりと火を入れて、「ロゼの美味しいローストだな。」と思わせるような的確な調理で素材をいかすことを心掛けます。
仔羊はニュージーランド産のラムが好きで使っています。その中でも小さいものを使います。「クリスマス島の塩」に旨みがあるので、普通の辛いだけの塩をするよりも旨みはずっと増すと思いますし、もっといろいろなものを引き出してくれると思います。
ソースには、骨10キロからエッセンスは800ccしかできないくらい煮詰めてからクリアにした〝ジュ〟を使います。旨みが凝縮していて、フォン・ド・ヴォーよりもコストがかかります。仔羊の最高の焼き上がりに旨みを詰めたソース、シンプルですが柔らかくクセのない仔羊を一番美味しく召し上がっていただけると思います。
塩をするだけで、旨み、甘みがしっかりとした輪郭を持っている
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アオリイカには、日本料理の技法をいかした飾り包丁をします。そして、すぐに「クリスマス島の塩」をふってアオリイカに下味を付けます。水分が出て来ますから、すぐに、さっと炙るように鉄板の上で焼いてから切り分け、もう一度さっと火を入れて半生の状態に仕上げます。
アオリイカに塩をふるだけのシンプルなものですが、それだけで十分です。飾り包丁を入れることによって、口の中に入れた時に身の断面が広がりますから、アオリイカ独特の甘みと旨みを感じて、なおかつ、少し炒めているのでねっとり感と弾力ある食感も楽しめます。これを心地良い歯ごたえを持つ、旬のアスパラガスにのせて、アクセントにソースを添えます。
ソースは、まず鍋でチョリソーの辛みと旨みをオリーブオイルに移します。トマトをミキサーにかけてガーゼで漉すと、透明な汁が溜まりますがこれを煮詰めて、酸味と甘みの旨みを凝縮させたものをチョリソーの辛みと旨みを移したオイルに入れて、酸味のケッパーとパセリ、そして少し味をしめるためにレモン汁を入れて仕上げます。
素材に対して目に見えない、数値的には測れない大きな効果がある
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真カジキに「クリスマス島の塩」1キロに対して砂糖500グラムを合わせたものをまぶし10時間ほど漬け込みます。その後、一度洗って水分を取り、1時間ほど冷燻にかけます。
それを真空にして3日間保存しました。真空にすることにより身の中に燻製の香りと塩が入っていきます。全体に塩が行き渡りちょうどいい塩加減になります。
真カジキは薄切りにしたものにオリーブオイルをかけ、ロメインレタスやトレビス、白ウドを酢漬けにしたものをはさみます。ホースラディッシュを削ってふって、わさびがわりに使います。「クリスマス島の塩」は真カジキの旨みを引き出し味が生き生きしています。
塩は根本的に素材の旨みを引き出すものだと思います。だからこそ、良い塩をちゃんとした技術とタイミングで使うことで、料理が大きく変わってきます。
「クリスマス島の塩」を舐めてみて感じる旨みと甘みには、素材に対して目に見えない、数値的には測れない大きな効果があるのだと思います。これからも「クリスマス島の塩」といっしょにシンプルな料理スタイルを極めていきたいと思います。
(2014年6月30日発行「素材のちから」第14号掲載記事)