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(ざつ旅に影響されて)ざつに旅行する:2024冬の浜松

『ざつ旅』という漫画がある。2025年にはアニメ化もされる。

主人公、新人漫画家の鈴ヶ森ちかが創作の行き詰まりから半ば自棄で旅行に出て、旅先で色々な刺激を貰ってきて成長していく漫画である。ちゃんと各地にロケハンに行っているようで、宿泊先に色紙があったこともある。

ホテル黒部にて

何がいいかというと、タイトルにあるように旅行が雑なのだ。

宿の予約も取らずにふらっと新幹線に乗り、現地を回って帰ってくる。ハプニングを含めて旅行での刺激を楽しむ。それは旅の最もプリミティブな楽しみ方だ。

働き始めると、どうしても旅行に予定を詰め込んで効率化したくなってしまう。無計画に寄り道をする贅沢をついつい避けてしまう。その結果旅程を組むのが億劫になり、旅行の頻度が下がってしまっていた。

『ざつ旅』を読んで、はっきりと自覚した。

もっと軽率に旅行しなければ。人生は短い。

そう思ったものの、思い立っての旅行は難しい。最近はインバウンド需要のせいかホテルの値上がりが激しいので尚更だ。しかし、急に「どこか行きたいな…」という気持ちが高まってきたので、浜松に行くことにした。

なぜ浜松かというと、週末の予定に縛られていたのである。土曜の昼に美容院の予約を入れていたので、昼から行ける旅行先がメインとなる。そこでまずは神戸/大阪に行きフェリーで四国/九州に渡るプランを考えたが、そういう旅行をするならもうちょっと前からじっくり計画し、何なら2泊3日くらいでゆっくり回りたい。

自然と、もっと雑に行ける場所を探すことになる。要するに、東京から新幹線や特急一本で行ける場所だ。いろいろと候補を考えるなかで、温暖で、行ったことがなく、できる限りゆっくりできる場所を考えた結果、浜松となった。

ちなみに、昨今は直前に宿を取るとエラいことになりかねないため、宿泊先だけは最初に確保した。あとは完全ノープラン。果たしてどうなるか。

Day1: 掛川途中下車

11:00に美容院の予約を取っていた。カットだけだったので11:45くらいに元町で行動開始。ここから最速で新横浜に向かうと6分乗換が発生する。12:15に横浜線で新横浜着、12:21のひかりに乗るギリギリの乗り換えだ。一応は可能であるものの、昼食を確保するのがギリギリになりそうなので大人しく新横浜のCoCo壱でカレーを掻き込み、12:45のこだまに乗り込んだ。

そのままだと14:19に浜松に着くのだが、ここで敢えて掛川で途中下車。掛川花鳥園に行ってみたかったからである。将棋ファン的には「渡辺明九段がインコまみれになっている場所」として有名な鳥と触れ合えるテーマパークだ。ついでに鳥を望遠で撮ってレンズの性能テストもできる。

今回はGooPassでタムロン28-200を借りている。果たしてタムロンが誇る便利ズームは旅行で満足いくパフォーマンスを出してくれるのか。

f/5.6 1/100 200 mm ISO 1600

テレ端・開放でアメリカワシミミズクを一枚。中央部は良いのだが、周辺部にいくにつれて描写が甘くなるのが見て取れる。レンズは基本的に軽さ、明るさ、綺麗さを全て兼ね揃えられないのだから、軽い機材で綺麗さを出そうと思ったらだいたい明るさが犠牲になる。軽くて明るかったら綺麗でないことが多い。

じゅうぶん明るいところで一段絞ってやるとだいぶキリっとしてくる。逆光気味なところでモモイロペリカンを捉えたが、喉の皺も、嘴の質感も開放比ではいい感じに撮れている。開放からこれなら大満足ではあるが、f8でこれという現実を見るとタムロン35-150なり70-180で良くない? みたいな気持ちにはなる。仕方ない。便利ズームなのだから。

f/8 1/800 139 mm ISO 1600

花鳥園の感想としては鳥の餌付けや撮影の都合を考えると午前中に行った方が良いなという感じ。あと、一人で行くと餌付けしてもな……という気持ちになるので人と行くのがオススメだ。動物好きなので一人で眺めていても楽しいが、それはそれ、これはこれ。

14:30ごろから15:45まで花鳥園を満喫した後は東海道線で浜松へ。せっかくなので、アクトシティの展望台で夜景撮影に挑んでみた。テレ端の後はワイド端。徹底的に便利ズームで難しそうなことをやらせていく。

当日の日の入りは16:38。展望台入りしたのは16:33なのでちょうど日の入りのタイミング。

f/2.8 1/320 28 mm ISO 800

マジックアワーではあるが、夕日の感じを出すのは難しい。ハーフNDフィルターを買った方がいい気がしてきた。

f/2.8 1/5 28 mm ISO 800

対して完全に日没後。パッと見は良いのだが細かい部分を見ていくと粗を感じる。左下の遠鉄百貨店のあたりとか、拡大すると微妙な感じ。とはいえこれ以上を求めようとするとレンズ性能以上にPLフィルターと三脚が欲しくなってくるので、手持ちなら便利ズームで足りるのかもしれないと思った。

その後はホテルにチェックイン。浜松で学生時代を過ごした同僚から「遠鉄百貨店にさわやかがある」と聞いていたので待ち時間を見てみた。

そうだね。混んでるね。宿の近くに餃子むつぎくがあったのでそちらも眺めてみたが異常な混雑。諦めて千歳町の錦華楼で餃子とラーメンを食べて夕食はおしまい。今度からは宿と夕飯だけは事前にきちんとリサーチしていこうと思った。

ビジネスホテルで飲むビールには格別の美味さがある

Day2: スズキはすごい

二日目は前々から行ってみたかったスズキ歴史館へ。最寄りの高塚駅に降り立つと、すでに遠くにスズキの本社が見える。

左奥に燦然と輝くスズキのマーク

車・バイク好きにはたまらない場所で、なかでも一番楽しかったのはVストローム800/1100のカットモデルだった。断面図には男児の心をくすぐる効果がある。めちゃくちゃ凝視した。800CCと1100CCのエンジンの差を見比べられる至福の時間である。

Vストローム1100のカットモデル

他にも組み立ての様子を模した展示があり、けっこう楽しい。できれば二輪の工場も模してほしかったが、難しいのは分かるので仕方ない。

三階部分ではスズキの歴史を作った旧車をこれでもかと眺められる。四輪、二輪、祖業である自動織機も置いてある。

初代アルト
DR600(パリダカを走ってたやつ)

好きな人ならここだけで何時間もいられるやつだが、90分ほどで退館。航空自衛隊の浜松広報館でも行こうかと思ったが、地味に遠かったのと、スタンスミスを履いてきたことで足がけっこう疲れていたのでそのまま帰ることにした。次回はもっと余裕をもって浜松に行きたい。

レンズ総評: よく言えば惜しい、悪く言えば中途半端

さて、借りてきた28-200であるが、よく言えば惜しい、悪く言えば中途半端なレンズだった。一段絞れば満足いく描写になるが、そうなるとテレ端で200mm f8となり運用が難しくなる。広角側は明るいが周辺部の描写はかなり物足りない。軽くてレンズ交換が要らないのは長所だが、仕上がりを見ると首を傾げるものが多い。やはり多少重く・高くなってもタムロン35-150とか、純正24-105のほうが満足度は高くなると思う。撮り物次第ではあるが、風景メインで旅行に持っていくなら純正24-105で良いのではないかと思った。暗いのが欠点ではあるが、レンズ側手ぶれ補正が付いているし描写の良さでは明らかに軍配が上がる。広角側も24mmまであるのが良い。35-150は1kg超えで流石に重いが、24-105は663gでかなり軽いのも長所だ。対して、人を撮ることが多いならポートレートズームを謳う35-150のほうが良いだろう。

では、28-200の良いところは何だろう。一番良いところを挙げるなら、現像していると「なんか違うな……」となって撮影に出かけたくなることかもしれない。帰宅後に現像していたら、もっと綺麗な画を撮りたくなったので東京駅の夜景を撮りに出かけた。こっちはタムロン20-40で撮っている。

f/2.8 1/10 20 mm ISO 800
f/4 1/4 20 mm ISO 80f0
f/2.8 1/100 26 mm ISO 800

気になるといえば気になるが、28-200ほどは周辺部の描写は気にならない。ズームレンズなら充分だ。得られた教訓としては、便利ズームは便利だが、私は画質に満足できない、ということだろうか。あとはレンズは買う前にレンタルしたほうがいい。選択肢が他にない場合はノールックで買うけど。

今回は突発で旅行したが、昼から一泊二日の旅行は時間に追われる感じがありなかなか雑にやるのは難しい。やはり金曜の夜移動が最強。あとは疲れにくい靴を買うべきだと思った。

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