5.「最終兵器、カノジョ」
私は、条件面では一歩も譲らない覚悟だった。
元夫は終わってみればこどもたちのことは考えていた、のだと思う。
ただ、すんなりとはいかず、もめにもめて、結局家庭裁判所で調停を申し立てた。
それと同時に向こうは家を出た。
調停はどちらが悪いのかを決める場ではなく、争う二人の間に第三者として入って両者の言い分を聞く。
そしてお互い譲歩できることはないのか一緒に探っていく、そんな感じ。
こちらの気持ちとしては100%向こうが悪いんだからこちらの条件を飲ませろ!と思うが、そういう場ではない。
30分自分が話して、今度は向こうの番で30分。それを2ターンで1回目が終了。
「奥さんはこんなこと言ってますよ、どう思いますか、どうしますか」
「旦那さんはこう考えていまよ、譲れるところはないですか」
を2回したら終わり。
・・・これいつ決まるの・・・
もう絶対的に向こうが悪い(と思っている)この状況で、このひとり親が生きていくのが厳しい世の中でなぜ調停員は私を諭そうとしてくるのか。
「かなりの好条件まできてますよ、あなたも譲歩しないと決まりませんよ」
「もっと話がわからない方がいます、冷静に話されているのはいいことです」
どこぞのくそ旦那と比較すんな。
そもそも風俗を止めていれば性病をうつすこともなかったからここまでいかなかった。
仮面夫婦だったかもしれないが、財産を取り合う事態にはならなかったのだ。
なぜ!私が!やつの今後の生活を気にしてやらねばならないんだ!!!!!
そんな気持ちでいっぱいだった。
実際条件面は普通に考えれば、よかった。
養育費は算定通りになってしまったが、
本来は半分にしなければならない財産分与は預貯金だけに関しては7割こちらになったし(結婚前の資産は含まず)、
婚姻費用も算定通り支払われていた。
ここまでは条件を飲もう。
後は、家。
これだけは絶対死守する。
半分になんて絶対させない。
ここで半分にしてしまったら預貯金で7割をのませた意味が無くなってしまう。
私は最終兵器を繰り出した。