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まだまだいける!伊東の湯

年内最後のnoteは、今となってはやや地味な温泉、伊豆は伊東の湯です。かつては、「伊東に行くならハトヤ!電話は4126(ヨイフロ)」のCMが象徴するように、関東では、熱海に並ぶ、一大温泉地でした。しかし、今の若い人にとっては、関東近辺で温泉行こか!となったら、「箱根!熱海!」は声あがるけど、伊東ってどこ?みたいになっているのではなかろうか。しかし、伊東市は国際観光温泉文化都市とまで銘打っているので、温泉から、そのポテンシャルを探ります!(とは言え、今回は師走の即席レポですが…)

まだまだいけるの根拠

温泉地が栄えるには、まず温泉がなくては話になりません。都道府県別の総湧出量は1位:大分県、2位:福島県、3位:北海道、このTOP3は大規模な火山活動とか何かしらの天変地異が起こらない限り、100年、1000年単位で変わらないことでしょう。
 続いて、源泉数というのを見ると少し変わってきます。1位:大分県、2位:鹿児島県、3位:静岡県、4位:北海道と3,4位は僅差。ようやく静岡が顔を出します。ここには、長野や岩手は入ってきませんが、自噴湧出量だけを見ると、岩手、長野、秋田、群馬あたりが上位に入ってきます。この辺り、やはり温泉県ですね。

源泉数、湧出量は静岡県でNo.1、全国でも3位!

伊東のある静岡県の湧出量は全国で7位ですが、伊東観光協会の公式HPによれば、以下の通り。

豊かな湧出量26,836リットル/分(2024年1月現在)は静岡県では1番と全国有数を誇っています。泉質は単純泉・弱食塩泉が中心で、無色無臭。肌に優しく低刺激の温泉になります。

(観光協会HP)

かつては毎分3万リットル/分を越えていて、これは、温泉地別で見ても、別府、湯布院、に続く堂々の3位。2024年のものが最新だとしてもそれでも、3位はほぼキープしているという全国屈指の湧出量!
さらに源泉数は2011年の日本温泉協会『温泉』によれば、
1位:別府温泉郷2,511
2位:由布院863
3位:伊東629
4位:熱海温泉郷533
とこれまた、全国3位。伊東市の旅館組合のHPによれば、源泉数自体は今より増えており、750となっています。市の中心地以外にも掘っているのではないかと推測できます。

歴史~徳川家に献上した湯、文人にも愛され…

伊東温泉の発見は平安時代と言われていますが、正確な文献はないようです。ただ、掘ればすぐに温泉が出る伊東、湯川という地名があったり、熱海は奈良時代から知られていることから、それに近しい頃には知られていたのではないか。特筆すべきは、江戸時代に3代将軍・徳川家光にいで湯を湯治湯として献上しています。伊豆石は江戸城の石垣に多用されたので、船で運んだと推測できます。
文人にも愛され、有名どころでは、与謝野鉄幹&晶子は年に1,2回伊東を訪れ、金色夜叉の尾崎士郎は疎開先が伊東、変わったところでは、坂口安吾も、療養も兼ねてか家族で、伊東市内に住んでいた時期がありました。

今の家へは、温泉がぬるいというのを承知の上で越してきた。
伊東は市ではあるが、熱海とは比較にならないほど、ひなびている。けれども温泉場であるから、道路には広告塔があって休むことなく喋りまくり唄いまくっているし、旅館からは絶え間なくラジオががなりたてて、ヘタクソなピアノも聞こえてくる。先方も商売であるから、静かにしろ、と云うわけにはいかない。
よそは住宅難だが、伊東には売家も貸家も多い。伊東は海山の幸に恵まれて食糧事情がよかったが、東京も食糧事情がよくなったので、不便を忍んで通勤していた人たちが東京へ戻り始めたのである。

「温浴」坂口安吾 昭和25年

戦後間もない頃は熱海と伊東もだいぶ差があったのか、当時の様子が描かれています。さらには安吾は「湯の町エレジー」なる作品も残しています。
また、「伊東音頭」は北原白秋が作詞をし、伊東駅やお隣の宇佐美駅で流れる発車メロディー「みかんの花咲く丘」が初めて、ラジオで、歌われたのも伊東です!

今年最後の大発見!?~伊東の外湯!

ということで、上記のような土台は、名実ともに揺ぎなき温泉ポテンシャルを持った伊東温泉。
今回はこれを確認するがごとく、外湯を巡ってみます。
伊東の湯は、泉質は弱アルカリ性の単純泉か塩化物泉がメインなので、ちょうど痛めた肩のリハビリにもよく、外湯をいくつか浸かる予定。前日に調べたら、やや古めのサイトの情報だと中心街付近だけで、10も外湯があるとされています。知っている限りでは、いわゆる共同浴場は箱根は5つ、熱海は2つしかありません。
ということで、駅から歩いて行けるところを攻めてみます。

花と海といで湯の街 昔と変わらない南国チック駅舎

繁華街を左手に見て、しばらく山手の方に歩きます。

小川布袋の湯 小さな水車が回る
15時現在、案内では16時から営業となってますが、地元のおじさんは入っていく
少し歩くと、大東館、陽気館 大きな松とソテツ(こんなでかいの初めて)が歴史を物語る

岡布袋の湯

小川布袋の湯を通過し、岡布袋の湯にまず浸かります。岡地区の共同浴場ということで、かなり年季の入った温泉会館のような建物。

布袋さんの脇には車が満車
扉を開けたら、自販機は最新ですが、他は全て昭和でストップしている
脱衣所も昔のまま 昭和感が写真で伝わらないのが残念なほど!

湯舟が撮れなくて残念ですが、7,8人の方が既に浸かっていて、出る人、入る人後を絶ちません。明らかに地元の方、車で来ている方、観光客もわずかにいる。湯舟にはかなりの湯量で、人が入る度に溢れています。

なんとかなりの大きさの湯舟が二つ(izu.linkのHPより)
PH:8.3、お湯は岡地区の5つの源泉のブレンド

平日の15時、伊東の外湯はこんな盛況なの?と目を疑う光景です。お風呂から上がって、着替えていると。リリリン、リリリリンと電話の音。えっ、黒電話?と思い、番台をみれば、この電話。思わず番台のおばさんに写真撮らせてもらいました。

このピンク電話現役!

しかも、銭湯温泉なのに、「家族風呂あります」の案内。こちらも気になり、番台のおばさんに鍵を借りて、中を見せてもらいました。

入り口は玄関の脇にある小さな扉
開けてビックリ、家族風呂が複数!

なんと、アパート?独房?(すみません…)のような扉があり、いくつもお風呂があるのです。親子で入って2,3人が限界か。しかし、驚きの家族風呂。

ココも湯船からお湯溢れる

改めて番台のおばさん、いや姉さんに、こんな外湯が伊東にあるとは知らなかったと驚きを伝えれば、「そうでしょう~、いい湯でしょう~」と自慢気。参りましたmm

松原大黒天神の湯

岡の温泉の次は、「東海館」というかつての伊東を象徴する旅館(今は廃業で木造建築を見学できる施設&日帰り温泉)の日帰り温泉行こうかと思ってましたが、これは外湯巡るだけで充分と判断。海の方の外湯に向かいます。

松原浴場 マンションのような温泉会館
松原温泉とも言うのか 外の暖簾はなし(強風で出さなかったと番台のお姉さん談)
富士に鶴亀松とめでたい暖簾
こちらも、常時7,8人の入浴者 撮影は出来ず 混合泉 PHは9.0で完全にアルカリ泉
脱衣所はかなり広々、ソファーもあり、湯上りはゆっくりくつろげる
海岸ではこんなお祭りもある

さて一体、伊東にはどのくらい外湯があるのか、番台のお姉さんに聞けば、正確に分からないとのこと…。閉まっているところもあるし、今は七福神湯めぐりとか出しているけどそこに無いお風呂もあると。
地図を広げて見せてくれましたが、以前に海岸沿いを車で走っていて目に留まった外湯を思い出し、そちらに行ってみることに。

松原の湯から海はすぐ

湯川第三浴場(汐留の湯)

海岸に出れば目の前に初島 島の白い部分はエクシブ初島 伊東の外湯とはまた別世界笑
真冬とは思えない気持ちの良い海岸 国道沿いを歩けば、
国道に面した湯川第3浴場(汐留の湯)
料金は350円 今日の3軒とも料金がバラバラ 維持費メインで実費運営しているのでしょう
海は見えませんが、海岸に面した明るい湯舟 こちらは湯川と岡の2つの混合泉

♪湯気が天井からぽたりと背中に、冷てぇな、アハハンと、湯気に満ちた浴室内に、湯舟の中央からかなりの湯量のお湯が入っています、もはや自噴のように。

湯川地区には3つの共同浴場 それぞれ言い伝えのような名称が付けられている

他の二つも歩いて数分のところにありました。

弁天の湯 似たような作りが多い 二階は一体どう使われているのか
駅に最も近い子持ち湯 なんとこちらは地下 本日定休日

伊東の湯、楽しみ方の転換

ということで、湯量豊富の伊東の温泉の底力を垣間見て、改めて、伊東温泉は、歓楽街とか、豪華なホテルとか、海の幸・海産物とかで推すより、やはり「温泉」主軸で推すのが良いのではないか。原点回帰?温泉原理主義!?湧出量を武器にPRすべきです。
知り合いの温泉好きに、東工大出身(生物系)の仲良しがいるのですが、ある時、彼が「アルカリ泉ってさ、肌すべすべになるけど、角質溶けるから、循環とかダメじゃない?」と。確かに…、(さすが東工大!)。伊東の外湯は何処に行っても、当然かけ流し、どんどん湯舟から溢れるので、全く贅沢かつ、清い湯なのです。湯あたりお湯なので、何度でも入れますし、リハビリには最適、たくさん入れば、お肌の効果も期待できる!?はず。
少なくとも温泉好き、マニアなら、伊東の外湯は、絶対めぐって欲しいですね~。伊東のイメージは確実に変わります!

投宿は、「梅屋旅館」

さて、明日の朝は早いので、投宿は駅から徒歩5分の梅屋旅館。こちらは温泉ファンの間では結構知れているようですが、電話で予約、今日は私一人だけ宿泊でした。

旅館は今年で創業83年! 建物は大正のものとか
なるほど、中に入るとこんな感じなので、大正かも
トイレはコロナ禍で改装でピカピカ
謎のホラー文字がやや不気味

お風呂は小浴場と大浴場二つあります。大浴場は、当然かけ流し、どばどばと源泉が注がれているので、熱め。源泉は52℃あり、少し水を入れなければ、入れませんでした。それにしてもいい湯、肌はつるつるです。

見た目よりずっと広い大浴場 熱め!
PH8.2 弱アルカリ性 泉質はナトリウム・カルシウム−硫酸塩・塩化物泉
天井には析出物のつらら

こちら、以前は源泉が二つあり、「塩の湯」と「山の湯」。塩の湯は旅館の下から湧いていたそうです。しかし、ある時に突然出なくなり、調べてみたら、源泉が枯れたのではなくて、湯が出過ぎて、ポンプ室に水が溢れ、止まってしまったと。それで今は塩の湯は使えないということでした。残念ですが、屈指の湧出量を誇る伊東らしいエピソードでした。
塩の湯時代のレポは以下。静岡では有名な、スルガ銀行の温泉部長、いや、井伊部長の「井伊湯種ゆだね」より。(井伊部長も常連らしいですよ)

小浴場は湯量を絞ってぬるめ 長い蛇口がかつての「塩の湯」

現在は日帰り温泉と素泊まりのみですが、品の良い女将さんが一人で切り盛りしてくれていて、古き良き伊東のお湯を満喫できます!温泉好きの方には、「伊東に行くなら、梅屋!」で推しておきます!

東海館付近とおまけ

さて、食事は繁華街を歩けば、平日でも食べる所はいくつかあります。

古き良きネーミング「湯の花通り」
キネマ通りは17時過ぎなのに誰もいない… これは寂しすぎた
そのまま東海館の見える松川の橋の上へ  遠方には「山のハトヤ」
左が東海館 この川で毎年「たらい乗り競争」が繰り広げられる
日帰り浴場は土日だけでした 東海館に続く隣の旅館は外国人観光客の宿に変身
散々歩いて、食べたのは梅屋旅館目の前のラーメン屋 味は確か!

ということで、普段はあまり推しの土産は紹介しませんが、生まれ故郷でもあるので少しだけ。海産物では、えぼ鯛(シズ) の干物、鯖のみりん干しは伊東が全国眺めても一番でしょう。銘菓もいくつかありますが、紹介したい一品は「柏屋の栗蒸羊羹」。竹に包まれ風味も良し、甘さも程よく、しっと~りした食感が普通の羊羹とは異なり、最高ですよ!

是非ご賞味あれ

そして、最近、本物の昭和レトロを堪能できる温泉街5選とか記事も見ましたが、伊香保、四万、熱海とか並んでました。しかし、「本物の昭和」は伊東ですよ、間違いない!昭和レトロというか、昭和で止まってますから。

2025年は…?

ということで、生まれ故郷で外湯の発見をしまして、2024年駆け込み最後の記事は終わりです。また来年もリハビリ兼ねて、実家から少し足を伸ばして、浸かりに来ようと思います。
毎年同じこと言っているようですが、今年も激動の2024年でした。来年はどんな年になるか、一年の計、年末年始にゆっくりと練りたいところです。

こちらは、一つだけ決めていることは、回心の機会もあったので、来年は、Bible入門でもnoteで始めて見ようかなと画策中!春からスタートできれば良いかな!
年末年始、極寒の予報も出ているようなので、どうぞ、健康管理、体調にはお気をつけて過ごしてください~、来年もよろしくお願いします!

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