太っている人、痩せている人の腸内細菌とは?の計その2
我が君よ、腹の具合はどうですか?
今朝は腹が下ってしまっていると、聞きましたぞ。
え?もう大丈夫。腸(ちょう)元気と?・・・な、なるほど。それは良いコトです。
さて我が君、覚えていらっしゃるか。
以前に腸内のカロリー吸収率が、バク門の細菌とフィル門の細菌の存在量の違いによって変わるというお話しをしました。
一度、軽くおさらいをします。これはここだけでの略称ですぞ。
バクテロイデーデス門 → バク門
フィルミクテス門 → フィル門
でしたな。
今日の2回目の軍議では、アッカーマンシア・ムシニフィラという細菌についてお話したいと思います。
今回も名前が長くてややこしいですな。
そこで、こうします。ええい!
アッカーマンシア・ムシニフィラ → アッカーマン
今回は重要な言葉は、この「アッカーマン」です。
さてこのアッカーマンは、腸壁を覆う厚い粘液層の表面に住んでいる細菌の一種です。腸壁の粘膜を分泌し粘液層を厚くすることによって、脂肪細胞を炎症させるなど、太る原因となる「リポ多糖」が血液に入り込むのを防いでいます。
つまり、アッカーマンは太る原因であるリポ多糖が、腸壁から血液へ入り込むのを防ごうとするワケです。
そうです。想像してみて下さい。
アッカーマンが必死に守っているのです、腸壁の際で。
縦横無尽に駆け巡りながら、リポ多糖という、我々を太らせる奇行をする存在を寄せ付けまいと、その使命を果たしているのです。
これは値千金、一騎当千。何か褒美を取らせるべきかと存じます。
そして、このアッカーマンは痩せた人の腸内には多く、太った人にはほとんどおらぬのです。
鼠を使った実験では、高脂肪な餌を食べた時の鼠の腸内ではこのアッカーマンが減ったそうです。しかしその後、食物繊維を与えたマウスはアッカーマンがまた増えて、健全な量に戻ったそうです。
つまり食物繊維を食べる事で、腸の中ではアッカーマン達が無双してくれる。
戦わなければ、勝てない。
そう考えると、なんと心強いコトだと思いませぬか。やはり、彼らにも十分な褒美を渡すのが妥当だと言えるでしょう。
もし、我が君が腸飛(ちょうひ)殿のように、太りやすい体質なのであれば、その褒美が足らぬのかもしれません。何人も、食べずには働けぬのです。
どのような褒美が必要か。ですと?・・・我が君よ、それは前回もやりましたぞ。
そうです、環羽(かんう)殿、食物繊維です。良質な食物繊維は、アッカーマン達をも奮い立たせるに十分な恩賞であると言えるでしょう。
最後に、今回の「リポ多糖」と前回の「フィル門」。太る、痩せる、という視点で見ると、太る原因だし、自分の体からいなくなってほしい!駆逐したい!と思ってしまうのが人間の常というもの。
しかし、彼らもいて良いのです。
「リポ多糖」は免疫細胞を活性化させてくれるという効果があります。
そして「フィル門」は脂肪を体内に溜めて飢餓を防ぐという働きをしています。
我らはよく、善玉菌や悪玉菌という言葉を耳にし、実際に口に出して言いますが、文字通り単純に善と悪に分かれているわけではないのです。この乱世においても、それぞれにそれぞれの正義があるのと一緒なのです。
悪玉菌の中にも体に良い菌がいたり、善玉菌の中にも悪さをする菌がいたり。
味方だと思っていた人が、実は黒幕だったり、悪い人だと思っていたら、本当は人の為に戦っていたり。獅子身中に虫在りといったところです。
これも立派な計略の一つと言えるでしょう。
ですから肝要なのは「平衡性」と「多様性」という事になるのです。これがいかなる状況に置いても、対応できる腸内環境を作るのです。
バランスの良い腸内細菌、そのためのバランスの良い食事。
わかっているけどなかなか難しいというのも真実。日々が戦いである我らの兵糧に、バランスと多様性を望むのはいささか酷という物です。
ですが我が君も何とかしたいと思っているから、今日ここに集まってこのように軍議を開いているのですよね。
では、まず一歩。
意識的に食物繊維を普段の食事に足す。
この一歩が、いずれ大きなうねりとなりましょうぞ。
そんなものがどこにあるのか?ですと。
ふふふ、心配無用!この、腸活良孔明におまかせあれ。
では、今日の軍議はここまで。
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