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#159 腸脳相関とリーキーガット。腸管透過性がうつ病につながる?

毎日夜19:30に更新中!腸内細菌相談室。
現役の研究者である鈴木大輔が、腸内細菌にまつわるエピソードをお届けしております🦠

今回のエピソードでは、リーキーガットにより生じる腸内環境と中枢神経系=脳の関係についてお話します。リーキーガットの状態になると、腸管上皮細胞の密着結合が損なわれることで、腸内細菌や腸内細菌の代謝産物が血流に侵入し、他臓器における炎症が惹起されてきます。ここでの臓器とは、中枢神経系である脳も含まれていて、腸内細菌叢とうつ病と関連することが考えられるようになってきました。今週のテーマであるリーキーガットのお話の締めくくりとして、腸内細菌と疾患をリーキーガットが媒介する可能性についてお話します。

このお話は、聴いて楽しむポッドキャストでも公開しております!ぜひ遊びに来てください!

腸内環境と脳

現在、腸内環境と脳の活動は密接に関係することが考えられています。臓器の位置で考えるとかなり離れていますが、それでも相互作用が生じる経路が存在します。

1つ目の経路が、迷走神経です。迷走神経は、副交感神経の一種です。迷走神経で重要なのは、遠心性と求心性です。これらの性質は、神経伝達の方向に関係しており、脳から末梢への神経伝達は遠心性、末梢から脳への神経伝達は求心性と呼ばれます。迷走神経には、遠心性と求心性の2つの性質が備わっていることから、腸と脳は神経伝達を介したコミュニケーションを取ることができるとされています。

2つ目の経路が、内分泌系です。血流を介した物質循環により、脳から腸、腸から脳へのシグナル伝達が行われています。今回のリーキーガットについては、こちらの経路に該当します。つまり、腸管透過性が増加することで、腸内の細菌を含めた物質が血流に乗り、やがて脳に到達します。ここで重要なのは、細菌という異物=非自己が血流に侵入することです。ヒトを含めた生物は、免疫系を備えることで体内への非自己の侵入を検知し、炎症応答を起こすことで排除しようとします。炎症が長期間に渡ることで、私達の体にもダメージが蓄積することで、疾患につながるのです。

うつ病とリーキーガット

リーキーガットの結果、悪性度は低いものの持続的な炎症反応が脳内で起ることが考えられています。また持続的な炎症反応は、うつ病患者の脳内において確認されています。さらに、うつ病患者において腸内細菌の抗原であるリポ多糖に対する免疫応答のレベルが高いこと、血中から細菌のDNAが検出されることなどが明らかとなっています。

以上の研究成果を踏まえると、腸内細菌の腸管壁滲漏を通じて、血中に細菌や細菌の代謝産物が広がることで、脳における持続的な炎症が起こる可能性は十分に考えられます。

アルコール依存症の方においてうつ病の合併症が多く見られるのも、アルコールによる腸管透過性の増加という観点で説明できることが指摘されています。実際に、2014年Leclercqらの研究によると、アルコール依存症の方を対象にした観察では、高いうつ病と不安スコア、腸内細菌叢の変化が確認されたヒトについて腸管透過性も増大することが確認されています。

体は1つ。

ここまでに、腸内環境と脳の関係について、腸管透過性、リーキーガットの観点からお話してきました。今後も、腸と他の臓器のコミュニケーションは、次々に明らかとなってくると考えられます。そもそも、体全体の臓器は血管で結ばれているので、1つの臓器の不調は全身に波及することが考えられます。健康診断においても、1つの臓器の不調を体全体の不調の前触れとして捉えられると、理想的であると考えています。

以上、腸脳相関とリーキーガット、腸管透過性がうつ病につながるというお話でした!

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本日も一日、お疲れさまでした。

参考文献

Kelly, John R et al. “Breaking down the barriers: the gut microbiome, intestinal permeability and stress-related psychiatric disorders.” Frontiers in cellular neuroscience vol. 9 392. 14 Oct. 2015, doi:10.3389/fncel.2015.00392

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